不遇な転生聖子は冷酷皇帝に「君のご飯が一番」と胃袋から愛し抜かれる 〜自炊スキルで無自覚に無双して最強の番に指名されました〜

たら昆布

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「――エリアン・ド・ラ・ヴァリエール。お前をこの離宮へ追放する」

厳格な父王の声が、冷たい玉座の間に響いた。
二十歳になったばかりの僕、エリアンに下されたのは、国を捨てるに等しい宣告。理由は「魔力測定の結果が平民以下だったから」という、なんとも世知辛いものだ。

でも、僕は俯いた顔の下で、必死に口角が上がるのを堪えていた。

(やった……! ついに、あの地獄の『王族としての公務』から解放されるんだ!)

僕の前世は、日本のIT企業で馬車馬のように働かされていたシステムエンジニアだ。
過労で倒れた先に待っていたこの異世界で、僕は心に決めていた。今世こそは、誰にも邪魔されず、美味しいものを食べて、たくさん寝るんだ、と。

馬車に揺られること三日。
案内役の御者、ハンネスが申し訳なさそうに口を開いた。

「エリアン様、こちらが離宮でございます。……その、かなり荒れ果てておりますが」
「ううん、大丈夫だよ。ありがとう、ハンネス」

目の前に広がるのは、埃を被った古い古城。
けれど、周囲には豊かな森が広がり、澄んだ空気と鳥のさえずりがある。

(最高だ。これこそ僕が求めていた自由だ!)

僕はさっそく、一番大切な「キッチン」へと向かった。
扉を開けると、積もった埃と錆びついた調理器具。
僕は前世で培った「効率重視の掃除術」を駆使し、数時間かけてそこをピカピカに磨き上げた。

「さて、初日の献立は……」

荷物の中から取り出したのは、移動中に買った卵と、少し硬くなったパン。
じっくりとパンをバターで炒め、半熟のスクランブルエッグを乗せる。
仕上げに庭で摘んだ野生のパセリを散らして。

「いただきます」

サクッ、とした小気味いい音。
卵の濃厚な甘みと、バターの香りが口いっぱいに広がる。

幸せを噛みしめた、その時だった。

ガシャーーーン!!

背後の裏口から、凄まじい音が響いた。
驚いて振り向くと、そこには真っ黒な軍服を着た、背の高い男が倒れ込んでいた。

「……う、……あ……」

苦しげな呻き声。
漆黒の髪の間から見えるのは、冷徹な美しさを湛えた、けれど今はひどく青ざめた横顔だった。
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