不遇な転生聖子は冷酷皇帝に「君のご飯が一番」と胃袋から愛し抜かれる 〜自炊スキルで無自覚に無双して最強の番に指名されました〜

たら昆布

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2話

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「ちょっと、大丈夫ですか!?」

僕は食べかけのトーストを皿に置き、慌てて男に駆け寄った。
近くで見ると、その男は驚くほど体格が良い。大理石のように整った顔打ちは、彫刻のようだった。
けれど、その体からは、まるで熱を奪うような冷たい魔力が溢れ出している。

「……っ、触るな。……汚染される、ぞ」

男が、氷のような瞳で僕を射抜いた。
その凄まじい威圧感に、普通の人間なら腰を抜かすところだろう。
でも、社畜時代に理不尽な上司やクライアントと戦い抜いた僕にとって、これくらいの睨みは「お疲れ様です」程度のものでしかない。

「汚染って……そんなことより、あなた顔色が最悪ですよ。唇もガサガサだし」
「……何?」
「とりあえず、これ。食べてください」

僕はさっきまで自分が食べていたエッグトーストを、男の口元に突き出した。
男は一瞬、呆然としたように僕とトーストを交互に見た。

「毒なんて入ってません。僕の食べかけでよければですけど」
「…………」

男は、抵抗する気力も失っていたのか、力なく口を開いた。
僕がちぎったパンを口に入れてやると、彼はゆっくりと咀嚼を始めた。

その瞬間。
男の金の瞳が、大きく見開かれた。

「……味が、する……」
「え?」
「……数年、ぶりだ。食べ物の味が……これほど、鮮明に……」

男は僕の手首を掴むと、必死な様子で次のパンを求めた。
僕は戸惑いながらも、残りのトーストをすべて食べさせてあげた。
最後の一口を飲み込んだ時、男の体から溢れていた刺すような魔力が、嘘のように静まった。

「落ち着きました?」
「…………君は、何者だ」

男の声は、まだ掠れていたけれど、先ほどよりずっと落ち着いていた。
僕は首を傾げて笑う。

「ただの追放された元王子ですよ。あなたは?」
「……ヴァレリウスだ。……散歩中に、少し、道に迷った」

(この格好で散歩? しかも道に迷って瀕死?)
突っ込みどころは満載だったけれど、僕は深追いしないことにした。
深入りしないのが、平和なスローライフの鉄則だからだ。
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