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17話
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平和な午後のひとときを切り裂くように、離宮の門がけたたましく叩かれた。
現れたのは、埃にまみれた銀の鎧を纏う、一人の青年騎士だった。
「……陛下! ヴァレリウス陛下! やっと……やっと見つけましたぞ!」
彼は馬から転げ落ちるようにして、庭にいた僕たちの元へ駆け寄ってきた。
ヴァルさんは、先ほどまでの穏やかな表情を一瞬で消し、氷のような冷徹な瞳でその青年を射抜いた。
「……レオナルトか。騒々しいぞ」
「騒々しいどころではありません! 行方不明になられてから半月、帝国中がひっくり返るような騒ぎなのです! それなのに、陛下は……えっ、その格好は……?」
レオナルトと呼ばれた騎士は、ヴァルさんの「生活感溢れるラフなシャツ姿」と、その隣で花冠を抱えている僕を交互に見て、石のように固まった。
「陛下……? まさか、この離宮で……新婚生活でも送られていたのですか?」
「…………黙れ、レオナルト。斬るぞ」
ヴァルさんの低い声に、レオナルトはヒッと短く悲鳴を上げた。
どうやら、彼はヴァルさんの直属の部下であり、最も信頼の厚い騎士の一人らしい。
「エリアン、すまない。……こいつはレオナルト。口は軽いが、腕だけは確かな男だ」
「あ、初めまして。エリアンと申します」
僕が挨拶をすると、レオナルトは信じられないものを見るような目で僕を見つめた。
「陛下が……女性以外……いや、人間相手に、これほど……っ」
「……レオナルト。要件は何だ。手短に済ませろ」
ヴァルさんの魔圧が少しだけ高まる。
レオナルトは慌てて姿勢を正し、真剣な表情で告げた。
「……北方の国境付近で、魔獣の活動が活発化しております。さらに、王国内部の派閥争いも限界に達しており……。陛下、そろそろお戻りいただかないと、帝国が持ちません」
その言葉に、僕は心臓が冷たくなるのを感じた。
ヴァルさんは、ただの行き倒れの男じゃない。一国を背負う皇帝なのだ。
いつかは帰る時が来ると分かっていたけれど、それがこんなに早く来るなんて。
僕は握りしめたエプロンの裾を、悟られないように強く、強く握り込んだ。
現れたのは、埃にまみれた銀の鎧を纏う、一人の青年騎士だった。
「……陛下! ヴァレリウス陛下! やっと……やっと見つけましたぞ!」
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ヴァルさんは、先ほどまでの穏やかな表情を一瞬で消し、氷のような冷徹な瞳でその青年を射抜いた。
「……レオナルトか。騒々しいぞ」
「騒々しいどころではありません! 行方不明になられてから半月、帝国中がひっくり返るような騒ぎなのです! それなのに、陛下は……えっ、その格好は……?」
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「陛下……? まさか、この離宮で……新婚生活でも送られていたのですか?」
「…………黙れ、レオナルト。斬るぞ」
ヴァルさんの低い声に、レオナルトはヒッと短く悲鳴を上げた。
どうやら、彼はヴァルさんの直属の部下であり、最も信頼の厚い騎士の一人らしい。
「エリアン、すまない。……こいつはレオナルト。口は軽いが、腕だけは確かな男だ」
「あ、初めまして。エリアンと申します」
僕が挨拶をすると、レオナルトは信じられないものを見るような目で僕を見つめた。
「陛下が……女性以外……いや、人間相手に、これほど……っ」
「……レオナルト。要件は何だ。手短に済ませろ」
ヴァルさんの魔圧が少しだけ高まる。
レオナルトは慌てて姿勢を正し、真剣な表情で告げた。
「……北方の国境付近で、魔獣の活動が活発化しております。さらに、王国内部の派閥争いも限界に達しており……。陛下、そろそろお戻りいただかないと、帝国が持ちません」
その言葉に、僕は心臓が冷たくなるのを感じた。
ヴァルさんは、ただの行き倒れの男じゃない。一国を背負う皇帝なのだ。
いつかは帰る時が来ると分かっていたけれど、それがこんなに早く来るなんて。
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