身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布

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17話

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 翌朝、昴(スバル)が目を覚ますと、部屋の中がいつもよりずっと静かだった。
 羽織を重ねて窓際へ向かうと、そこには驚くべき光景が広がっていた。昨日までの見慣れた庭園が、一晩のうちに真っ白な雪に覆われ、静謐な銀世界へと変貌していたのだ。

「うわ……すごい、初雪だ!」

 昴は思わず声を上げたが、すぐに職業病が顔を出した。窓ガラスの四隅が、結露した水分によって白く凍りつき、びっしりと霜の花を咲かせている。

「綺麗だけど……これ、放っておくとサッシが傷むし、溶けた時にカビの原因になるんだよな」

 昴はさっそく、ぬるま湯を浸した布と、水分を完璧に拭き取るための乾いたリネンを持って動き出した。
 
 離宮のリビングへ行くと、既にアルフレートとシオンが集まっていた。アルフレートは窓の外の雪を厳しい目で見つめ、シオンは温かいお茶を淹れている。

「スバル、おはよう。素晴らしい雪だね。でも、廊下の窓が凍りついて開かなくなっているみたいだよ」

「おはようございます、シオン様。今からそれ、なんとかします」

 昴が凍りついた窓枠に温かい布を当て、慎重に氷を溶かしていく。
 その時、昴が無意識に放つ「浄化の魔力」が、雪の結晶に触れて共鳴した。スバルの髪が、冬の朝日を浴びて透き通るような黒い輝きを放ち、周囲の空気がキリリと引き締まっていく。

「……? 何か、視線を感じるような……」

 昴がふと窓の外へ目を向けると、雪が降り積もった庭の木陰に、透き通るような青い瞳を持つ、小さな白い子鹿のような生き物が立っていた。

「わっ、何あれ。ウル、あの子知ってるか?」

 足元でフカフカの冬毛になったウルが、尻尾を振って「キュッ!」と短く鳴いた。すると、その不思議な生き物は、警戒することなくトコトコと窓際まで歩み寄ってきた。

「スバル、それは『冬の使者』と呼ばれる精霊の幼体だ」
 背後からヴィンセントが、興味深げに片眼鏡を光らせながら現れた。
「非常に警戒心が強く、純度の高い魔力のある場所にしか現れない。……どうやら、君が毎朝行っているこの場所の『清浄さ』に惹かれてやってきたようだね」

「へぇ、精霊……。でも、寒そうだな。中に入れますか?」

 昴が窓を開けると、外の冷気と共に、その小さな精霊がふわりと部屋へ飛び込んできた。精霊は昴の周りをくるくると回り、彼の黒髪に鼻先を寄せると、満足そうに喉を鳴らした。

「気に入られたみたいだね、スバル君。君が窓を磨いて、この離宮を清潔に保っているからこそ、彼らは安心して姿を見せられるんだ」

 精霊の訪問により、離宮はさらに神聖で穏やかな空気に包まれた。
 アルフレートもその光景を見て、柔和に目を細める。

「スバル。雪は美しいが、我々の生活を停滞させることもある。だが、君がこうして整えてくれる場所では、冬すらも暖かな祝福のように感じるな」

「そうですよ。雪は汚れを隠してくれますけど、解けた後は泥だらけになりますからね。今のうちにしっかり対策しておかないと」

 ロマンチックな雰囲気を台無しにするような昴の現実的な台詞に、支配者たちは思わず吹き出した。

「ガハハ! さすがスバルだ、情緒より実用だな!」
 朝の訓練を終えたレオンが、髪についた雪を払いながら入ってくる。

「レオンさん! 玄関で雪を払ってくださいって言ったでしょ! 絨毯が濡れる!」

「うおっ、すまねえ!」

 いつもの賑やかなやり取りが始まり、小さな精霊は驚くこともなく、ウルやフウと一緒に暖炉の前で丸くなった。
 窓の外には、静かに降り続く雪。
 だが、昴が磨き上げた窓ガラス越しに見るその世界は、どんな宝石よりも澄み渡り、彼らの心に静かな安らぎをもたらしていた。

 昴は改めて思う。
 どんなに寒い冬が来ても、この場所を磨き続け、彼らと一緒にこの温かな火を囲めるのなら、異世界での生活も悪くないな、と。

 清らかな雪の朝。
 離宮には、変わらない笑顔が満ち溢れていた。
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