身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布

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19話

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 王都全体が、新しい年を告げる祝祭の光に包まれていた。
 大掃除を完璧に終えた離宮は、暖炉の火が爆ぜる音だけが響く、静かで清らかな空気に満ちている。

 昴(スバル)はキッチンに立ち、慣れない手つきで「麺」を打っていた。
「……よし、コシは足りないかもしれないけど、見た目はそれっぽくなったな」

 元の世界の文化である「年越しそば」を再現しようとしたが、この世界に蕎麦粉はない。代わりに昴は、ヴィンセントに頼んで「細長く加工しても風味が損なわれない穀物粉」を練り上げ、レオンの筋力で驚くほど細く切り揃えてもらった。出汁はアルフレートが差し入れた最高級の乾燥魚と、シオンが持ってきた秘伝の香草で取った特製だ。

「さあ、皆さん。これが俺の故郷の習慣、『年越しそば』です。細く長く、健康でいられるようにって願いが込められてるんですよ」

 リビングの大きなテーブルに、湯気の上がる鉢が並ぶ。
 アルフレート、ヴィンセント、レオン、シオン、そして足元にはウルとフウ、冬の精霊。全員が揃って、未知の料理を前に椅子を引いた。

「細く長く……。我々の絆も、そのようでありたいものだな」
 アルフレートが真剣な面持ちで麺を啜り、目を細めた。「……優しい味だ。一年の疲れが、喉を通るたびに溶けていくようだ」

「本当だね。この出汁の深みは、魔法では再現できない。スバルの心の温かさが味に出ているよ」
 シオンが幸せそうに微笑み、ヴィンセントも眼鏡を曇らせながら頷く。

「おう! これを食えば、来年も元気に掃除に付き合えそうだぜ!」
 レオンが豪快に完食し、おかわりを要求する。

 穏やかな食事が終わる頃、外からは王宮の大きな鐘が鳴り響き始めた。古い年を送り、新しい年を迎える「浄化の鐘」だ。

「……さて。スバル君、僕たちからも君に、一年の感謝を込めた『お返し』があるんだ」
 ヴィンセントが切り出すと、四人が顔を見合わせた。

 アルフレートが重厚な木箱をテーブルの上に置く。
「君はこの数ヶ月、私たちの家だけでなく、心までも磨いてくれた。これは、四翼全員で用意した贈り物だ」

 昴が不思議そうに箱を開けると、中には一本の「箒(ほうき)」が入っていた。
 だが、それはただの掃除用具ではなかった。柄はしなやかで強靭な聖樹の木でできており、穂先には精霊の加護を受けた特殊な繊維が編み込まれている。さらに、持ち手の部分には、四翼それぞれの家紋が小さく、しかし誇らしげに刻まれていた。

「これは……」

「『四翼の守護箒』。ヴィンセントが魔力を練り、レオンが加工し、シオンが素材を集め、私が加護を授けた」
 アルフレートが昴の目を見て静かに告げる。
「これがあれば、どんな汚れも、どんな厄災も君を傷つけることはできない。君がこれからも、この場所で笑って過ごせるようにという、私たちの誓いだ」

 昴はその箒を手に取った。驚くほど手に馴染み、まるで自分の体の一部であるかのように、清らかな魔力が流れ込んでくる。

「……ありがとうございます。これ、最高です。明日からの掃除が楽しみで仕方ありません!」

 昴の屈託のない笑顔に、四人は安堵したように微笑んだ。
 本当は、彼を一生離したくない、自分たちだけの聖域に閉じ込めておきたいという独占欲がなかったわけではない。だが、昴が「掃除」を通じて外の世界を、そして自分たちを救っていく姿こそが、彼らが愛した光そのものだった。

「スバル。来年は僕の部屋を綺麗にしてくれるかい?」
 シオンが囁くように問いかける。

「もちろんです。シオン様はいつもすぐ散らかすから、やりがいがありそうですね」

「はは、一本取られたな」
 ヴィンセントが笑い、賑やかな声が夜の離宮を揺らす。

 窓の外では、新しい年を祝う魔法の打ち上げ花火が夜空を彩り始めていた。
 磨き上げられた窓ガラスに反射する七色の光。
 
 膝の上で眠るウルとフウの温もりを感じながら、昴は思う。
 召喚されたばかりのあの日、ゴミ溜めのような離宮で絶望していた自分は、もういない。
 ここには愛すべき仲間がいて、守るべき日常があり、そして明日もまた、磨くべき輝きが待っている。

「……よし、来年も気合を入れて掃除しますよ!」

 昴の決意と共に、異世界での最初の一年が、最高に清らかな状態で幕を閉じた。
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