身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布

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20話

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 新しい年の、最初の太陽が地平線から顔を出した。
 王宮全体が黄金色の光に包まれる中、昴(スバル)は離宮の広い庭の中央に立ち、澄み渡った空を見上げていた。

 その手には、昨日贈られたばかりの「四翼の守護箒」が握られている。だが、昴はそれを振るうことはなかった。

「スバル? 掃除は始めないのかい? 君のことだから、日の出と共に箒を振り回すと思っていたけれど」
 不思議そうに声をかけたのは、厚手のマントを羽織って現れたシオンだ。その後ろには、アルフレート、ヴィンセント、レオンも揃っている。彼らは「元旦早々、スバルにこき使われる覚悟」をして集まっていたのだ。

 昴は静かに首を振って、誇らしげに答えた。
「今日は掃除はしません。元旦に掃き掃除をするのは、せっかく来てくれた福の神様を追い払うようなもんですから。実家じゃ、三日までは箒を持たないのが鉄則なんです」

「……。そうか。あの掃除狂いのスバルがそこまで言うとはな」
 アルフレートが意外そうに、しかしどこか安堵したように口角を上げた。

「掃除をしないスバル君なんて、雪の降らない冬のようなものだけど……たまには、そういう休息も必要だね」
 ヴィンセントが魔法で温かい茶器を取り出し、全員に配る。

「ガハハ! じゃあ今日は一日、ただのんびり過ごすってわけか。最高じゃねえか!」
 レオンが焚き火を囲むように座り、ウルとフウを膝に乗せた。

 昨年末の大掃除で徹底的に磨き上げられた離宮は、何もしなくても神聖な輝きを保っている。窓ガラスは朝日を反射し、石畳は一点の曇りもない。
 掃除を休んでもこの美しさが保たれていることこそが、昴がこの数ヶ月積み上げてきた努力の証だった。

「俺、この世界に来て良かったです」
 温かいお茶を啜りながら、昴はぽつりと呟いた。
「最初は、実家の店を継げないのが悔しくてたまらなかった。でも、ここで皆さんに出会って、この場所を磨いていくうちに……掃除っていうのは、ただ綺麗にするだけじゃなくて、誰かの居場所を作るってことなんだって、改めて気づけました」

 昴の隣で、アルフレートが静かにその手を取った。
「君が作ってくれたこの『居場所』に、私たちは救われたのだ。……スバル。君はもう、この国の掃除屋ではない。我々にとって、欠かすことのできない光そのものだ」

「……。アルフレート様、正月からそんな真面目な話、照れますよ」

 昴は顔を赤くしながらも、その手を振り払うことはなかった。
 かつては不遇の象徴だったこの離宮が、今は四人の支配者たちが地位も名誉も忘れて集う、王国で最も温かな場所になっている。

 太陽が高く昇り、王都の鐘が祝福のように鳴り響く。
 
「さて……。明日からは、また忙しくなりますよ! 溜まった埃を一つも見逃しませんからね」

「分かっている。君に叱られないよう、私たちも精進しよう」
 シオンが笑い、ヴィンセントが頷く。

 膝の上で丸くなるウル、肩で羽を休めるフウ。
 そして、自分を心から必要としてくれる仲間たち。
 
 昴の異世界生活は、まだ始まったばかりだ。
 明日になれば、彼は再び新しい箒を手に取り、この世界を磨き始めるだろう。
 
 一拭きごとに愛を込め、一掃きごとに未来を拓く。
 掃除から始まった彼の物語は、どこまでも澄み渡る青空の下、最高に清らかな状態で続いていくのである。
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