限界社畜の僕がお隣の偏食な天才建築家に「美味しい」を教えることになった件~週末ごはんで育むじれったい恋の味~

たら昆布

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番外編2

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 海を望む邸宅に、静かな夜が訪れていた。
 ダイニングで祝杯を挙げた後、一条さんはいつも以上に僕を求めるような眼差しを向けていた。
 三年の空白を埋めるには、言葉も、日々の食事も、まだ足りないと言わんばかりの熱が、彼の長い指先から伝わってくる。

「……凪。もう、逃がさないと言ったら、君は怖がるだろうか」

 寝室の柔らかな照明の下、一条さんは僕をベッドに押し込み、その大きな体で覆いかぶさった。
 眼鏡を外した彼の瞳は、獲物を狙う獣のような鋭さと、泣き出しそうなほどの切なさが混ざり合っている。

「……怖くなんてありません。……僕だって、一条さんの温度を、ずっと欲しかったんですから」

 僕が彼の首に腕を回すと、一条さんは低く喉を鳴らし、深く、深く唇を重ねた。
 シンガポールでの三年間、ビデオ通話越しに触れたくても触れられなかったもどかしさが、熱い舌の動きとなって僕の理性を溶かしていく。

「……んっ、一条、さ……っ」

 一条さんの手が、僕のシャツのボタンを一つずつ、丁寧かつ強引に解いていく。
 露わになった僕の肌に、彼の熱い呼気が吹きかかる。
 
「……三年前よりも、身体つきがしっかりしたな。……この肩も、この腰も、俺がいない場所で君を支えてきた筋肉かと思うと……誇らしい反面、焼き付くような嫉妬を感じる」

 一条さんは僕の鎖骨を甘噛みし、そのまま胸元へと吸い付いた。
 彼の独占欲が、言葉ではなく直接的な刺激として身体に刻まれていく。
 かつての執着とは違う、対等な男として僕を屈服させたいという、雄としての本能。

「……ぁっ、そこ、は……一条、さんっ、好き……っ」

 僕が悶えると、一条さんは僕の両手を頭の上で片手で抑え込み、空いた手で僕の熱くなった部分を直接包み込んだ。

「……凪。君の身体は、俺のどんな設計図よりも緻密で、美しい。……どこを触れば君がどう鳴くか、一晩中かけて再構築してやる」

 一条さんの指が、僕の奥深くまで侵入してくる。
 異物感はやがて心地よい圧迫感へと変わり、僕は彼の名前を呼ぶことしかできなくなる。
 三年の飢えは、僕の身体も同じだった。彼の指が触れるたび、内側から熱い蜜が溢れ出し、もっと強く、もっと深く、と本能が叫んでいる。

「……入れ、てください……一条さんの、全部……っ」

 僕の懇願に、一条さんは理性の糸が切れたような顔をした。
 
 彼が僕の中に突き刺さった瞬間、視界が真っ白に弾けた。
 内側を無理やり広げられるような痛み、それを上回る圧倒的な充足感。
 一万キロの距離を越え、今、僕たちは物理的に「一つ」になったのだ。

「……凪……! 凪……っ!」

 一条さんは僕の腰を掴み、狂ったように腰を叩きつけた。
 ベッドが軋む音と、二人の混ざり合った激しい喘ぎ声が、夜の静寂を塗り替えていく。
 一条さんの背中に爪を立て、僕は彼の全てを受け止める。
 溢れ出す熱い愛の証が、僕の奥深くに注ぎ込まれるまで、僕たちは何度も、何度も果てを越えていった。

 ◇

 スコールの後のような、静かな余韻。
 汗に濡れた身体を重ね合い、一条さんは僕の髪を愛おしそうに撫でた。

「……凪。やはり、君の代わりは世界のどこにもいない。……俺の人生という建築物は、君という柱がなければ、一秒だって保てないんだ」

「……ふふ、一条さん。……そんな情熱的な台詞、誰かに聞かれたら大変ですよ」

「君だけに聞こえればいい。……明日の朝、君が腰を痛めて動けなくても、俺がすべてを甲斐甲斐しく世話してやる。……それが、俺の今の最高の贅沢だからな」

 一条さんは僕を抱きしめたまま、満足げに目を閉じた。
 愛と、食と、生の営み。
 そのすべてが満たされたこの家で、僕たちの夜は、どこまでも深く、甘く、続いていく。
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