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12話
翌朝、僕が目を覚ますと、視界を埋め尽くしていたのは銀色の髪だった。
……そうだった。
騎士団長様が、看病のついでに僕のベッドを占拠して爆睡していたんだった。
「……う、団長。重いです」
「ん……ナギか……。熱は、下がったのか?」
ガイスト様がむくりと起き上がる。
寝起きでぼうっとした表情の彼は、いつもの威圧感がどこかへ消え、ただの「顔が良すぎる美青年」だ。
僕の額に手を当て、平熱なのを確認すると、彼は安堵したように深く息を吐いた。
「よかった……。貴様がこのまま目を覚まさなかったら、私は国中の医師を処刑するところだった」
「物騒なこと言わないでください! ほら、団長も早く起きてください。お礼に何か作りますから」
「……何!? 復活の呪文(メシ)か!」
食い気に関しては相変わらずの反応速度だ。
僕はまだ少しふらつく足を叱咤して、地下食堂へと向かった。
今日のメニューは、看病してくれた団長と、病み上がりの僕の体に優しい『特製・鶏出汁のスタミナ中華粥』だ。
丸鶏をじっくり煮出した黄金色のスープに、たっぷりの生姜とネギ。
そこにご飯を投入してとろとろになるまで煮込み、仕上げにゴマ油を一垂らし。
「……っ!! 鼻をくすぐるこの芳醇な香り! 胃袋が、歓喜の産声を上げているぞ!」
ガイスト様は、カウンター越しに僕の手元を凝視している。
お粥を差し出すと、彼は猫舌であることも忘れて熱々の一口を運び――。
「…………至福。五臓六腑に染み渡るとは、まさにこのことだ。生姜の刺激が体中を巡り、魔力が活性化していく……!」
「お口に合ってよかったです。団長、僕の看病で寝不足でしょうから、しっかり食べてくださいね」
僕が笑って言うと、ガイスト様は急にスプーンを止め、真剣な眼差しで僕を見つめた。
「ナギ。……やはり、貴様をこのまま騎士団の地下に置いておくのは、あまりにも惜しい」
「え、またその話ですか?」
「いや、今度は本気だ。私の公爵邸に、貴様専用の厨房……いや、『城』を建てよう。そこで好きなだけ料理をし、私だけを養うがいい」
「養うって……。団長、僕を引き抜くつもりですか?」
「引き抜くのではない。……囲うのだ。貴様を私の戸籍に入れ、永久不滅の専属料理人(兼、私の最愛)として、国中の手出しを封じる」
ガイスト様は、食べかけのお粥を置くと、僕の手をそっと握りしめた。
その瞳には、冗談ではない、どろりとした「独占欲」の光が宿っている。
(この人、看病してる間に、どんどん思考が過激な方向に進んでない!?)
「団長、その話はまた今度……。今は、お粥を完食してください」
「逃げるな。私は本気だぞ。……レオに、公爵邸の改装図面を引かせているからな」
「レオさん、本当にかわいそう……」
僕が遠い目をしていると、食堂の入り口で、真っ白な顔をしたレオが立っていた。
「……団長。改装図面の前に、隣国のセドリック王子から『ナギ君を親善大使として我が国へ招待したい』って親書が届いてるんですけど、どうします?」
「…………燃やせ」
「団長、それは国際問題になりますって!!」
ナギの平穏な日常(と、ガイスト様の囲い込み計画)に、再び波乱の予感が漂い始めるのだった。
……そうだった。
騎士団長様が、看病のついでに僕のベッドを占拠して爆睡していたんだった。
「……う、団長。重いです」
「ん……ナギか……。熱は、下がったのか?」
ガイスト様がむくりと起き上がる。
寝起きでぼうっとした表情の彼は、いつもの威圧感がどこかへ消え、ただの「顔が良すぎる美青年」だ。
僕の額に手を当て、平熱なのを確認すると、彼は安堵したように深く息を吐いた。
「よかった……。貴様がこのまま目を覚まさなかったら、私は国中の医師を処刑するところだった」
「物騒なこと言わないでください! ほら、団長も早く起きてください。お礼に何か作りますから」
「……何!? 復活の呪文(メシ)か!」
食い気に関しては相変わらずの反応速度だ。
僕はまだ少しふらつく足を叱咤して、地下食堂へと向かった。
今日のメニューは、看病してくれた団長と、病み上がりの僕の体に優しい『特製・鶏出汁のスタミナ中華粥』だ。
丸鶏をじっくり煮出した黄金色のスープに、たっぷりの生姜とネギ。
そこにご飯を投入してとろとろになるまで煮込み、仕上げにゴマ油を一垂らし。
「……っ!! 鼻をくすぐるこの芳醇な香り! 胃袋が、歓喜の産声を上げているぞ!」
ガイスト様は、カウンター越しに僕の手元を凝視している。
お粥を差し出すと、彼は猫舌であることも忘れて熱々の一口を運び――。
「…………至福。五臓六腑に染み渡るとは、まさにこのことだ。生姜の刺激が体中を巡り、魔力が活性化していく……!」
「お口に合ってよかったです。団長、僕の看病で寝不足でしょうから、しっかり食べてくださいね」
僕が笑って言うと、ガイスト様は急にスプーンを止め、真剣な眼差しで僕を見つめた。
「ナギ。……やはり、貴様をこのまま騎士団の地下に置いておくのは、あまりにも惜しい」
「え、またその話ですか?」
「いや、今度は本気だ。私の公爵邸に、貴様専用の厨房……いや、『城』を建てよう。そこで好きなだけ料理をし、私だけを養うがいい」
「養うって……。団長、僕を引き抜くつもりですか?」
「引き抜くのではない。……囲うのだ。貴様を私の戸籍に入れ、永久不滅の専属料理人(兼、私の最愛)として、国中の手出しを封じる」
ガイスト様は、食べかけのお粥を置くと、僕の手をそっと握りしめた。
その瞳には、冗談ではない、どろりとした「独占欲」の光が宿っている。
(この人、看病してる間に、どんどん思考が過激な方向に進んでない!?)
「団長、その話はまた今度……。今は、お粥を完食してください」
「逃げるな。私は本気だぞ。……レオに、公爵邸の改装図面を引かせているからな」
「レオさん、本当にかわいそう……」
僕が遠い目をしていると、食堂の入り口で、真っ白な顔をしたレオが立っていた。
「……団長。改装図面の前に、隣国のセドリック王子から『ナギ君を親善大使として我が国へ招待したい』って親書が届いてるんですけど、どうします?」
「…………燃やせ」
「団長、それは国際問題になりますって!!」
ナギの平穏な日常(と、ガイスト様の囲い込み計画)に、再び波乱の予感が漂い始めるのだった。
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