「お前を愛することはない」と言い放った冷徹騎士様が、僕の作った飯が旨すぎて毎日「結婚してくれ(おかわり)」と泣きついてくる件について

たら昆布

文字の大きさ
13 / 35

13話

「……というわけで、ナギ君。僕の国で開かれる『美食の祭典』に、特別ゲストとして来てほしいんだ」

騎士団の地下食堂に、またしても黄金の輝きを放つ男が現れた。
セドリック王子だ。彼は護衛の騎士をかき分け、当然のように僕の手を取る。

「君のあの『回鍋肉』に魅了されたサザランドの重鎮たちが、どうしても君に会いたいと言っていてね。もちろん、報酬は金貨百枚。……どうだい?」

「金貨百枚!? ……え、それはちょっと魅力的かも……」

「却下だ。一億万回却下だ!!」

背後から、食堂の壁が崩れるほどの咆哮が響いた。
ガイスト様だ。彼は書類を握りつぶし、魔王のような形相で王子の間に割って入る。

「セドリック! 貴様、我が国の国宝(ナギ)を、そんな安金で釣ろうとするな! そもそも、彼を国外に出す許可など出していない!」

「おや、ガイスト。これは国王陛下同士ですでに合意された『国家間の文化交流』だよ? 君に拒否権はない」

王子が不敵に笑い、一枚の書状を突きつけた。そこには確かに王家の印章がある。

「くっ……!! ……いいだろう。ならば私も行く」

「え? 団長、お仕事は?」

「『親善大使付き、最強の護衛』として私の休暇を全てぶち込む。ナギ、安心しろ。貴様が隣国の男に指一本触れられぬよう、私が二十四時間体制で密着してやる」

(……それ、僕のプライバシーがゼロになるってことですよね?)

こうして、僕は豪華な馬車に揺られ、隣国サザランドへと向かうことになった。
当然、馬車の中は最悪の空気だ。
右隣には「ナギ君、我が国のスイーツも絶品だよ」と囁く王子。
左隣には、僕の腰をがっちり抱きしめて「……殺す、絶対に殺す」と王子に呪詛を吐き続けるガイスト様。

「……あ、あの。二人とも、少し離れてもらえませんか? 狭いです」

「ダメだ。隣国は治安が悪い(嘘)。私の体温を感じていないと、不安で倒れるだろう?」

「ガイスト、君の独占欲はもう病気だね。ナギ君、僕の膝の上に避難してくるかい?」

「断る!!」

馬車が揺れるたびに、ガイスト様の腕に力がこもる。
やがてサザランドの王宮に到着した僕たちは、豪華な晩餐会に招かれた。
だが、そこで待っていたのは、僕を試そうとする隣国の宮廷料理人たちの冷ややかな視線だった。

「ふん。エルドリアの小僧が、どんな料理を作るというのだ。……おい、お前。明日の祭典では、我が国の特産『幻の魔鳥』を使って料理をしろ。できなければ、そのまま強制送還だ」

「……魔鳥? 扱ったことないけど……」

僕が不安げに立ち尽くしていると、ガイスト様が僕の肩を抱き寄せ、耳元で低く囁いた。

「案ずるな、ナギ。貴様の腕は私が一番知っている。……今夜は、その『魔鳥』とやらを私が狩ってきてやる。貴様は私の腕の中で、献立のことだけを考えていろ」

「……団長」

「……そして、成功したら、ご褒美に『あの味』を独占させろよ。……いいな?」

ガイスト様の指先が、僕の唇をそっとなぞる。
その熱い視線に、僕の心臓が不規則なリズムを刻み始めた。
異国の地で、僕とガイスト様の絆(と胃袋の主従関係)が、さらに熱く燃え上がろうとしていた。
感想 1

あなたにおすすめの小説

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

【完結】王弟殿下の欲しいもの

325号室の住人
BL
王弟殿下には、欲しいものがある。 それは…… ☆全3話 完結しました

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

悪役令息はもう待たない

月岡夜宵
BL
突然の婚約破棄を言い渡されたエル。そこから彼の扱いは変化し――? ※かつて別名で公開していた作品になります。旧題「婚約破棄から始まるラブストーリー」

愛人少年は王に寵愛される

時枝蓮夜
BL
女性なら、三年夫婦の生活がなければ白い結婚として離縁ができる。 僕には三年待っても、白い結婚は訪れない。この国では、王の愛人は男と定められており、白い結婚であっても離婚は認められていないためだ。 初めから要らぬ子供を増やさないために、男を愛人にと定められているのだ。子ができなくて当然なのだから、離婚を論じるられる事もなかった。 そして若い間に抱き潰されたあと、修道院に幽閉されて一生を終える。 僕はもうすぐ王の愛人に召し出され、2年になる。夜のお召もあるが、ただ抱きしめられて眠るだけのお召だ。 そんな生活に変化があったのは、僕に遅い精通があってからだった。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。