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19話
「……今夜は、その言葉への『お礼』を、たっぷりとさせてもらうからな。……もちろん、胃袋以外でもだ」
ガイスト様の甘く危険な言葉が、夕暮れの庭園に響き渡る。
僕の頬は熱く、心臓は早鐘のように鳴っていた。
(い、胃袋以外って……一体何を!?)
騎士団長の執着がここまで来るとは思っていなかった。
その夜、公爵邸の晩餐は、いつもより豪華なフルコースだった。
だが、僕の目の前には、なぜかガイスト様が作ったと思しき、不格好な肉料理が置かれていた。
「……ナギ。これは私が貴様のために作った、秘伝のローストビーフだ。貴様も、私の料理を食べるがいい」
「え、団長が作ったんですか!? あの、騎士団の食堂で食材を焦がしていた団長が?」
「失礼な。貴様から教わったことを思い出しながら、心を込めて作ったのだ。……ほら、あーんだ」
ガイスト様がナイフで切り分けた肉をフォークに乗せ、僕の口元へ運んでくる。
その手つきは、どこかぎこちないけれど、愛情がこもっているのが伝わってきた。
僕は一口食べると、驚くほど柔らかい肉の旨味と、ほんのりとした塩味が口の中に広がった。
「……美味しいです、団長! 上手になりましたね!」
「そうか……! 貴様が喜んでくれるなら、私は何でも作れる気がする!」
ガイスト様は満面の笑みを浮かべ、僕の頭を優しく撫でた。
その瞳は、まるで僕だけを映すように、熱い光を湛えている。
晩餐の後、僕は自室に戻ろうとした。
だが、ガイスト様が僕の腕を掴み、そのまま自室へと引きずり込んだ。
「だ、団長!? 何をするんですか!?」
「怪我人がいないか、念のために確認する。……そして、今夜は私の部屋で寝ろ」
「ええっ!? そんな、いくら何でも無理です!」
「何が無理だ。貴様が狙われている今、私の監視下に置くのが最も安全だ。それに……」
ガイスト様は、部屋の重厚な扉を魔法で施錠した。
そして、ゆっくりと僕に近づいてくる。
「……貴様が『誰にも譲らない』と言ったからな。その言葉の責任を、今夜、私に取らせてもらおう」
部屋の明かりが落とされ、暖炉の炎だけが、ゆらゆらと僕たちの影を揺らす。
ガイスト様は僕の顎をそっと持ち上げ、その瞳を覗き込んだ。
「……ナギ。私の胃袋は、もう貴様の飯でしか満たされない。そして、私の心は……貴様でしか満たされないのだ」
「……団長」
「だから、この部屋から一歩も出すな。誰にも見せず、誰にも触れさせず……永遠に、私のものになってしまえ」
熱い吐息が僕の耳元にかかる。
そして、彼の唇が、ゆっくりと僕の唇に重なった。
それは、ハニーレモンティーよりも甘く、カツ丼よりも濃厚で、僕の全てを溶かし尽くすようなキスだった。
(……あぁ、もう。これは、僕の負けだ)
僕の抵抗は、ガイスト様の情熱的なキスによって完全に掻き消されていった。
冷徹騎士様の「過保護」という名の監禁は、想像よりも遥かに甘く、僕の心を骨抜きにするには十分すぎた。
僕の夜は、ガイスト様の腕の中で、どこまでも深く、熱く、甘く、溶けていくのだった。
ガイスト様の甘く危険な言葉が、夕暮れの庭園に響き渡る。
僕の頬は熱く、心臓は早鐘のように鳴っていた。
(い、胃袋以外って……一体何を!?)
騎士団長の執着がここまで来るとは思っていなかった。
その夜、公爵邸の晩餐は、いつもより豪華なフルコースだった。
だが、僕の目の前には、なぜかガイスト様が作ったと思しき、不格好な肉料理が置かれていた。
「……ナギ。これは私が貴様のために作った、秘伝のローストビーフだ。貴様も、私の料理を食べるがいい」
「え、団長が作ったんですか!? あの、騎士団の食堂で食材を焦がしていた団長が?」
「失礼な。貴様から教わったことを思い出しながら、心を込めて作ったのだ。……ほら、あーんだ」
ガイスト様がナイフで切り分けた肉をフォークに乗せ、僕の口元へ運んでくる。
その手つきは、どこかぎこちないけれど、愛情がこもっているのが伝わってきた。
僕は一口食べると、驚くほど柔らかい肉の旨味と、ほんのりとした塩味が口の中に広がった。
「……美味しいです、団長! 上手になりましたね!」
「そうか……! 貴様が喜んでくれるなら、私は何でも作れる気がする!」
ガイスト様は満面の笑みを浮かべ、僕の頭を優しく撫でた。
その瞳は、まるで僕だけを映すように、熱い光を湛えている。
晩餐の後、僕は自室に戻ろうとした。
だが、ガイスト様が僕の腕を掴み、そのまま自室へと引きずり込んだ。
「だ、団長!? 何をするんですか!?」
「怪我人がいないか、念のために確認する。……そして、今夜は私の部屋で寝ろ」
「ええっ!? そんな、いくら何でも無理です!」
「何が無理だ。貴様が狙われている今、私の監視下に置くのが最も安全だ。それに……」
ガイスト様は、部屋の重厚な扉を魔法で施錠した。
そして、ゆっくりと僕に近づいてくる。
「……貴様が『誰にも譲らない』と言ったからな。その言葉の責任を、今夜、私に取らせてもらおう」
部屋の明かりが落とされ、暖炉の炎だけが、ゆらゆらと僕たちの影を揺らす。
ガイスト様は僕の顎をそっと持ち上げ、その瞳を覗き込んだ。
「……ナギ。私の胃袋は、もう貴様の飯でしか満たされない。そして、私の心は……貴様でしか満たされないのだ」
「……団長」
「だから、この部屋から一歩も出すな。誰にも見せず、誰にも触れさせず……永遠に、私のものになってしまえ」
熱い吐息が僕の耳元にかかる。
そして、彼の唇が、ゆっくりと僕の唇に重なった。
それは、ハニーレモンティーよりも甘く、カツ丼よりも濃厚で、僕の全てを溶かし尽くすようなキスだった。
(……あぁ、もう。これは、僕の負けだ)
僕の抵抗は、ガイスト様の情熱的なキスによって完全に掻き消されていった。
冷徹騎士様の「過保護」という名の監禁は、想像よりも遥かに甘く、僕の心を骨抜きにするには十分すぎた。
僕の夜は、ガイスト様の腕の中で、どこまでも深く、熱く、甘く、溶けていくのだった。
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