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20話
カーテンの隙間から差し込む朝陽が、豪華な寝室のシーツを白く染めていた。
僕は、見慣れない天井を見上げながら、昨夜の出来事を思い出して顔が火が出るほど熱くなる。
「……あ、団長。起きてたんですか」
隣を見ると、既に目を覚ましていたガイスト様が、肘をついてじっと僕を見つめていた。
乱れた銀髪が額にかかり、いつもは鋭い瞳が、今はとろけるような熱を帯びている。
「……おはよう、ナギ。貴様の寝顔があまりに愛おしくて、一時間前からこうしていた」
「一時間も!? 怖いですって……」
僕が布団に潜り込もうとすると、ガイスト様の逞しい腕が伸びてきて、僕をシーツごと抱き寄せた。
肌越しに伝わる彼の体温。昨夜、僕を何度も求めたその熱が、まだ消えずに残っている。
「……離さない。今日という日は、国が滅びようとも私はこの部屋から出ん。貴様を一日中、こうして抱きしめて過ごす」
「だめですよ、仕事してください! ……それに、お腹空きませんか?」
僕がそう言うと、ガイスト様は「くっ」と喉を鳴らして笑った。
「ふむ、確かに。愛だけでは腹は膨らまぬか。だが、今朝は私が作ろう。ナギ、貴様はそこで私の『妻』として、ゆっくりと休んでいろ」
「……まだ妻じゃないです! ……でも、団長が作るなら、手伝いますよ」
結局、僕たちは二人でキッチンへ向かった。
広い公爵邸の厨房に、朝日が差し込む。
今朝のメニューは、シンプルだが贅沢な『厚切りベーコンのエッグベネディクト』だ。
ガイスト様は、僕の指導を受けながら真剣な顔でポーチドエッグを作っている。
「ナギ、この『白身の包み込み』は、剣筋の微調整に通じるものがあるな……」と、相変わらず料理を軍事的に解釈しているのがおかしい。
やがて完成した朝食を、バルコニーのテーブルへ運ぶ。
王都を一望できる絶景の中、僕たちは並んで座った。
「……あーん」
「えっ、またですか?」
「当たり前だ。昨夜の体力を回復させるためにも、私が貴様に食べさせねばならん」
ガイスト様は、オランデーズソースがたっぷりかかった卵を、丁寧に僕の口へ運ぶ。
とろりとした黄身のコクと、カリカリに焼いたベーコンの塩気。
そして、彼の手から与えられるという、何よりも甘いスパイス。
「……美味しい。団長、本当に料理上手になりましたね」
「貴様という最高の師がいるからな。……ナギ、一つ聞かせてくれ」
ガイスト様は、僕の手をそっと取り、自分の唇に寄せた。
「……私と、正式に婚約してくれないか。飯炊き係としてではなく、ローゼンブルク公爵夫人として。貴様のその魔法の指先に、私の家紋を刻んだ指輪を贈らせてほしい」
「……団長」
僕は、彼の真っ直ぐな瞳を見つめ返した。
最初は、ただ胃袋を掴んだだけの関係だったかもしれない。
でも、今はもう、この人の隣が僕にとって一番落ち着く場所だ。
「……はい。僕でよければ、一生、団長の隣でご飯を作らせてください」
「……っ! ナギ!!」
ガイスト様は椅子を蹴り飛ばさんばかりの勢いで立ち上がると、僕を抱き上げ、何度も、何度も、誓いのキスを落とした。
バルコニーに広がる青空の下。
冷徹騎士様と、異世界から来た飯炊き係の物語は、ここから「夫婦」という名の新しい章へと進み始める。
もちろん、その食卓には、これからも溢れんばかりの『おかわり』と、甘すぎる『愛』が並び続けることだろう。
僕は、見慣れない天井を見上げながら、昨夜の出来事を思い出して顔が火が出るほど熱くなる。
「……あ、団長。起きてたんですか」
隣を見ると、既に目を覚ましていたガイスト様が、肘をついてじっと僕を見つめていた。
乱れた銀髪が額にかかり、いつもは鋭い瞳が、今はとろけるような熱を帯びている。
「……おはよう、ナギ。貴様の寝顔があまりに愛おしくて、一時間前からこうしていた」
「一時間も!? 怖いですって……」
僕が布団に潜り込もうとすると、ガイスト様の逞しい腕が伸びてきて、僕をシーツごと抱き寄せた。
肌越しに伝わる彼の体温。昨夜、僕を何度も求めたその熱が、まだ消えずに残っている。
「……離さない。今日という日は、国が滅びようとも私はこの部屋から出ん。貴様を一日中、こうして抱きしめて過ごす」
「だめですよ、仕事してください! ……それに、お腹空きませんか?」
僕がそう言うと、ガイスト様は「くっ」と喉を鳴らして笑った。
「ふむ、確かに。愛だけでは腹は膨らまぬか。だが、今朝は私が作ろう。ナギ、貴様はそこで私の『妻』として、ゆっくりと休んでいろ」
「……まだ妻じゃないです! ……でも、団長が作るなら、手伝いますよ」
結局、僕たちは二人でキッチンへ向かった。
広い公爵邸の厨房に、朝日が差し込む。
今朝のメニューは、シンプルだが贅沢な『厚切りベーコンのエッグベネディクト』だ。
ガイスト様は、僕の指導を受けながら真剣な顔でポーチドエッグを作っている。
「ナギ、この『白身の包み込み』は、剣筋の微調整に通じるものがあるな……」と、相変わらず料理を軍事的に解釈しているのがおかしい。
やがて完成した朝食を、バルコニーのテーブルへ運ぶ。
王都を一望できる絶景の中、僕たちは並んで座った。
「……あーん」
「えっ、またですか?」
「当たり前だ。昨夜の体力を回復させるためにも、私が貴様に食べさせねばならん」
ガイスト様は、オランデーズソースがたっぷりかかった卵を、丁寧に僕の口へ運ぶ。
とろりとした黄身のコクと、カリカリに焼いたベーコンの塩気。
そして、彼の手から与えられるという、何よりも甘いスパイス。
「……美味しい。団長、本当に料理上手になりましたね」
「貴様という最高の師がいるからな。……ナギ、一つ聞かせてくれ」
ガイスト様は、僕の手をそっと取り、自分の唇に寄せた。
「……私と、正式に婚約してくれないか。飯炊き係としてではなく、ローゼンブルク公爵夫人として。貴様のその魔法の指先に、私の家紋を刻んだ指輪を贈らせてほしい」
「……団長」
僕は、彼の真っ直ぐな瞳を見つめ返した。
最初は、ただ胃袋を掴んだだけの関係だったかもしれない。
でも、今はもう、この人の隣が僕にとって一番落ち着く場所だ。
「……はい。僕でよければ、一生、団長の隣でご飯を作らせてください」
「……っ! ナギ!!」
ガイスト様は椅子を蹴り飛ばさんばかりの勢いで立ち上がると、僕を抱き上げ、何度も、何度も、誓いのキスを落とした。
バルコニーに広がる青空の下。
冷徹騎士様と、異世界から来た飯炊き係の物語は、ここから「夫婦」という名の新しい章へと進み始める。
もちろん、その食卓には、これからも溢れんばかりの『おかわり』と、甘すぎる『愛』が並び続けることだろう。
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