異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ

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お兄様の影から手紙が届けられた。

「ふたりで…。」

せっかくだから…。

「プルメリア様?」
「カルア、ロック料理長に明日のお弁当のことで相談したいの。」
「お弁当ですか?」
「ええ。自分で作らせてもらえないかと思って。」
「プルメリア様がですか?」
「そうよ。とりあえず、キッチンに行ってみましょう。今の時間忙しいかしら?」
「今なら空いていると思いますが…。」

私は席を立った。

「行く前に、お母様に許可を得るわね。」
「畏まりました。」

こちらに生まれてから、料理をした事はない。しかし、前世は主婦。材料と道具さえあればどうとでもなる。…たぶん。

「お母様。」
「リア、どうしたの?」
「私、お料理がしたいのです。許可をいただけますか?」
「え?……それは。」

目で語りかけられる。
たぶん、大丈夫なの?とか、前世の記憶?とかそんなあたりだろう。

「大丈夫だと思います。明日のジェイク様とのお出掛けに、手作りのお弁当を持っていきたいのです。」
「そう。料理長に聞いてみなさい。」
「はい。では、行ってきます。」

キッチンに着き声をかけると、ロック料理長が出て来た。

「プルメリア様。どうなさいましたか?」
「明日のお弁当、私に作らせてもらえないかと思って、相談に来たの。」
「無理です。今まで包丁も握ったことが無いのに、怪我でもしたら。」

ごもっとも!
でも、引き下がらないわよ。
前世では、結構料理が好きだったのだ。
良い機会だから、また料理をしたい。

「お願い。邪魔にならない様に時間や、材料を指定してもらってもいいから。初めてのふたりのお出かけなの。思い出にしたいのよ。」
「しかし…」

もうひと押し!

「危ないと思ったら、すぐに言って。止めるから。」
「…それなら。」
「ありがとう!」

やったぁ!

「明日のお弁当なら、ディナーの片付け後に仕込む事になりますが。」
「分かったわ。それでお願い。」
「畏まりました。」
「それとは別に、今、ロック料理長の時間が空いていたら、使える材料と道具だけでも見たいのだけれど、どうかしら?」
「……今なら大丈夫ですよ。どうぞ。」

本意では無いのだろうが、ドアを開け、中に促してくれた。
キッチンでは数人の料理人が、皮むきや掃除をしていた。
私の姿をみると、すぐに姿勢を正す。

「仕事を続けて下さい。私のせいで仕事が遅れたらロック料理長に、私が追い出されてしまうわ。」
「まさか、そんなこと。」
「キッチンは料理人の場所でしょ?あたしが部外者なのは、分かっているつもりよ。でも、ごめんなさい。キッチンの使わない端の方だけ貸してね。」
「プルメリア様…。」

ロック料理長に呼ばれたが、そこから言葉が出てこない。

「ん?…ロック料理長どうなさったの?」
「料理長、プルメリア様はこういう方です。」

カルアが理解したように、ロック料理長に話しかけた。

「そうか。…プルメリア様、材料も道具も好きに使ってください。危ない時には、きちんと注意させて頂きます。」
「良いの?ありがとう。」

私は、邪魔にならない様に注意しながら、材料や道具を見て回った。

「今日はビーフシチューなのね。」
「はい。」
「!…これは。」

もしかして、牛すじ!

「そこは固くて臭いので捨てます。」
「使わないのなら下さる?」
「え?ゴミにするものですよ?」
「勿体ないわ。ここ美味しいのよ。」
「食べたことがあるのですか?」
「うーん、でも煮るとなると時間が…。」
「…聞いてないですね。」
「プルメリア様!」
「あ、ごめんなさいカルア。何?」
「これを使うのですか?」
「使いたいのだけれど、煮込む時間が足りないと思うの。」
「何故分かるのですか?」
「そうね。…感?」
「感…ですか。」

カルアは不思議そうな顔をしている。

「プルメリア様。」
「何?ロック料理長。」
「今から、ひとコンロ開けます。お使いください。」
「え?ディナーの準備の邪魔になってしまうのではない?」
「それは、どうにかします。私は、その肉の切れ端が、どう変わるのか見てみたいのです。何故かは分かりませんが、プルメリア様なら作れるような気がしています。」
「えーと、そんなに期待されても…。まぁ、時間をくれるなら、作らせてもらおうかしら。」

私は、必要な材料をロック料理長に伝えると、野菜くずを使うことに驚いていた。

「ネギの青いところと生姜の皮ですが、本当に使うのですか?公爵のご子息とプルメリア様が食べるのですよね?」
「そうよ。さて始めましょう!」

私は、鍋に材料を入れ、数回ゆでこぼした。

「これは、なんの為にするのですか?」
「臭みやアクを取るのよ。これが終わったら味付け。そして、煮込む!」

久しぶりのこの感じ。楽しいわ!

自然に鼻歌も出てしまう。
その様子をカルアもロック料理長も、ジッと見ている。
そして、いつの間にかディナーの時間になっていた。

「もう少し煮込みたいのだけれど、仕方ないわね。一度火を止めましょう。」
「いえ、私が続きを。」
「良いの?忙しいのではない?」
「大丈夫です。」
「それでは、焦げないように混ぜてね。水分が少なくなったら、火を止めて下さい。」
「畏まりました。」

続きをお願いして、私は食堂に向かった。





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