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この日も、朝一番に手紙は届けられた。

「サリアティア様、ノアヴェルト殿下よりお手紙が届いております。」
「ありがとう。……なぜかしら、以前が嘘のようにノアヴェルト殿下から手紙が届くわ。」
「ふふっ、やり取りが続いておりますね。」

侍女は微笑みながら身支度の手伝いをする。

「そうなのよね。…不思議。学園では、変わりがないのに。本当に本人からなのかしら?」
「…え?」
「ん?」
「学園での交流はお変わりないのですか?」
「ええ。会えば挨拶をして、婚約の話をされて、断ると去っていくわ。」
「え~と、サリアティア様。」
「何?」
「お手紙のお話などはされないのですか?」
「しないわね。」
「お礼などは…?」
「話す雰囲気もタイミングもないもの。」
「そんなこと…。」
「ねえ?そろそろ準備を進めなくては学園に遅刻してしまうわ。」
「し、失礼いたしました!急ぎます!」



「おはよう。サリアティア、婚約の決心はついたか?」
「おはようございます、殿下。婚約は…」
「分かった。また来る。」

サリアティアは去っていくノアヴェルトの背中を見ていた。

「ちょっと!」

後ろから声をかけられ振り向くと、ミスティ侯爵令嬢がいた。

「少しよろしいかしら?」
「ええ。」

サリアティアは促され、ミスティ侯爵令嬢の後ろをついていくと、人気のないところでミスティ侯爵令嬢はサリアティアへ向き直った。

「貴方!いい加減になさいまし!」
「?」
「本当に婚約したくないのであればそのようにお伝えしなさい!」
「していますが。」
「貴方ではなく、ご両親を通しなさいよ!正式に!」
「え?」
「『え?』ではないですわ!これ以上不敬を続けるのなら私にも考えがありますわ!」
「…そうですよね。なぜ私はそうしなかったのでしょうか?」
「私に聞かれても、そんなの知りませんわよ!」

そうなのよ。お父様は『まかせる』と言ってくれているのだし、上手く言ってもらえば…。でも王家からの命令は逆らえないし。

……ん?命令?逆らえない?
でも私、殿下に断り続けているわ。
………命令、なのよね?
でも……。

ん?ん?あれ?

「どういうことでしょうか?」
「だから!私に聞かないで!」





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