ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ

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54 寝付けない夜

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その日の夜

眠れない…。
魔法を使いすぎたせいかしら。

サリーナは初めて、多くの魔法を使った事で興奮が冷めず、眠れないでいた。

向かいの席を見るとメルが気持ち良さそうに寝ている。

「起こさない様に、そっと…。」

サリーナは馬車の外に出た。

「リーナ、どうした?」

扉の近くには、ルーフがいた。

「ちょっと寝れなくて…。」
「散歩に行くか?」
「そうね…。心配させちゃうから、それはやめておくわ。」
「分かった。」
「今の火の番は誰?」

サリーナが火のある方を見ると、そこにはアイザックとパールの姿があった。

「ザック様?」
「リーナ?どうしたの?」
「眠れなくて…。ザック様こそ。」
「僕も眠れなくて。公爵と変わったんだ。パールもいてくれるしね。」

ザック様はパールを優しく撫でた。

「そうですか。可愛がっていただいているようで、良かったです。」
「本当に良くしてもらっているわよ。リーナの契約獣だもの、当たり前だけれどね。」
「パール、貴方は本当に…。」
「ん?」
「…なんでもないわ。ザック様、隣よろしいですか?」
「もちろん。あ、ちょっと待った。」

ザック様は、ポケットからハンカチを出し大きめの石の上に敷いてくれた。

「どうぞ。」
「ありがとうございます。」

火に向かって左から、パール、ザック様、私、ルーフの順だ。パールとルーフは、伏せて目を閉じた。アルは、私が出てきた馬車の上にいる。メルを守ってくれているようだ。

「今日は楽しかったよ。こんなに魔法が楽しいと思ったことはない。」
「そうなのですか?」
「魔力はあるのに、力を入れても発動するのは小さな物ばかりだったからね。…兄上は少数派と言われるくらいなのに。」

やっぱり、気にしていたのね…。

「それが、今は力を入れなくてもスムーズにできるんだ。これからは剣の他に魔法も頑張るよ。」
「…それでは、私の仕事がなくなってしまいますね。」
「仕事?」
「魔法でザック様を守る、というやつです。」
「あぁ、前に言っていた…。リーナ、僕は魔法ができるようになっても、君に勝てる気は全くしないよ。それでも、僕は強くなりたい。そして、リーナの傍に居たい。」
「ザック様…。」
「リーナ…。」

ふたりは見つめ合い、顔が近づく。

え?え?これって!?

サリーナは、ギュッと目を閉じた。

チュッ。

アイザックは、サリーナのおでこに軽くキスをする。

「…おでこ。」
「あ…うん。少しずつということで…。」
「そ、そうですよね!」

ザック様の顔が赤い。
きっと、私も…。
…と言うか、デコチューってこんなに恥ずかしいものだったっけ!?

「…」
「…」

か、会話…。

お互いに顔が赤いまま俯き、話が再開しない。すると、それに焦れたように、パールが伏せていた顔をあげた。

「全く…。せっかく寝たふりしたのに、それだけ?」
「「パール!?」」
「おい!」

ルーフも顔をあげる。

「ルーフも!?」
「…」

ルーフは、何も言わずそっぽを向いた。
バツが悪そうだ。

アイザックはパールを撫でながら、声をかけた。

「気を使わせたね。」
「そりゃそうよ。あんだけリーナ、リーナ言っているのに、この旅で二人で話すことがほとんど無いんだもの。」
「ちょ!パール!」

ザック様は、焦ったようにパールの顔を両手で挟む。

「ちょっと、何をするのよ。」
「いや、あの…」
「格好つけてないで、素のほうがリーナも喜ぶわよ。」
「格好つける?」

ザック様は、また顔を真っ赤に染めた。

「…ザック様、可愛いですね。」
「!?」
「私、そんなザック様も好きです。」
「リ、リーナ!?」
「ふふっ。」
「からかわないでくれるかな…。」
「本当の事です。」
「ほらね!」
「パール…。僕だって好きな子の前で格好つけたいんだよ…。」
「ふぅ~ん。」
「でも、今のザック様の方が身近に感じます。」
「ほらね!」
「パール。」

サリーナが、パールを見るとパールは肩をすくめた。

「いや。パールのおかげで、リーナの気持ちが聞けたし、……キスもできたし。」
「ザック様!?」
「そうそう!素直が一番よ~。」

パールが横で頷いている。

「もう…。」
「ははは。あ、そろそろ、交代の時間かな。ロンドさんを起こさなきゃ。」

ザック様は内ポケットから懐中時計を出した。それは、婚約の印として私が贈ったものだった。

「使ってくださっているのですね。」
「もちろん。…リーナもつけてくれているんだね。」

私の指には、ザック様が約束通り贈ってくれたダイヤの婚約指輪が光っている。

「昼間は無かったから、ちょっと気にしていた。」
「料理もしましたし、魔法が初めてでしたので、指輪に傷をつけるのは嫌ですし、念の為外しておりました。」
「そっか。石が邪魔になってしまうか…。あ、だから結婚指輪もあって、シンプルな物なのか!聞いてはいたけど、今実感したよ。」
「ふふふっ。そうですか。」
「結婚指輪はふたりでつける物だったよね?えーと、結婚前に一緒に見に行こう。」
「まだ先ですね。」
「そうだけど、約束。」
「はい。約束ですね。」

私達は微笑み合い、穏やかな空気が流れた。

ゴホン。

咳払いが聞こえて振り返ると、そこにはロンドがいた。

「おふたりで過ごされている所申し訳ございませんが、私の時間になりましたので、声をかけさせて頂きました。もし、まだお話があるようでしたら、ここは私が見ておりますので、夜の散歩でも行かれますか?」

私達は顔を見合わせる。

「「少しだけ…。」」

私達は、護衛としてパールとルーフに付いてきてもらい、散歩にでかけた。




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