64 / 142
62 6年後
しおりを挟む
私は、13歳になった。
あの日、大騒ぎする人間を余所にルーフとパールは落ち着いており、私について話したのは『そのうち起きる』の一言だったそうだ。
それを信じ、お父様達は起きない私をそのままに、自宅への帰路についた。
私は馬車が揺れても、家についてベッドへ運ばれても、身体を清拭されても起きなかった。
しかし、何をしても起きなかった事が嘘のように、その次の日の朝には目を覚ました。
結局の所、魔力を使いすぎて回復するための睡眠だったのだ。
あの時はびっくりしたわよ。起きたら、お父様と兄様達の顔があるのだもの。
ザック様も心配して、泊まっていてくれたのよね。
懐かしいわ。
私は現在、普通科コースの7年生だ。
魔法の練習も順調で、あの日以降長い眠りにつくこともない。そして、ある程度の魔力を使っても問題ないまでになっている。
要するに、身体を慣らしながら少しずつ使う量を増やしていけば良かったのだ。
分かっていたことなのに…。
ちなみに、リック兄様は文官として働いており、ザック様とリオン兄様は騎士コースを卒業し、見習い期間を経て成人した。
今日は成人の儀とは別にザック様の成人祝の舞踏会が開かれる。
婚約者である私の契約獣、ルーフとアルの参加も認められた。もちろん、パールもザック様と参加する。
「サリーナ様、終わりました。」
「ありがとう。」
私は、メル達侍女の手で磨かれ、いつもよりツヤツヤキラキラになっている。
「お綺麗です。」
「貴方達のお陰ね。」
「何をおっしゃいますか!サリーナ様の美貌があってこそです!」
サリーナは、前にも増して美しく成長していた。
「そう言ってくれるのは、うちの皆だけよ。」
面と向かって言わないだけで、サリーナと会う者は皆見惚れるのだが、本人は自覚していない。
「リーナ、綺麗だ。」
「リック兄様まで…。」
「可愛い妹を褒めて何が悪い?」
「悪くはありませんが…。ありがとうございます。」
「それでは、行こうか。」
「はい。リック兄様。」
父ジャックは宰相の為、朝から王城へ行っている。ダリオンは騎士寮で生活している為家にはいない。
サリーナは、仕事が休みのパトリックと王城に向かった。
王城につき、広間に通されると、すでに多くの人がいた。
「アイザック殿下が入場したら、そこまで送る。」
「いいえ。ルーフとアルがいますし、一人で大丈夫ですわ。」
「そうか?」
「リック兄様は、サラ様の元にいてあげてください。」
サラ様とはリック兄様の婚約者だ。いつもは迎えに行くのだが、今日は私の為に現地集合にしたらしい。
「サラは気にしないと思うが…。」
「そういう事ではありませんわ。」
「?」
「あんなに愛らしいのです。サラ様に変な虫が近づいてきたらどうするのですか。」
そう!サラ様は可愛い!小動物の様に可愛い!
「それは困るな…。」
「ほら!サラ様がいらっしゃいました。」
「あ、ああ。」
サラ様の姿を見つけて、私達は近づく。
今日も可愛らしい!
年上とは思えない。
「サラ。」
「リック様。」
ふたりは、私やサラ様の家族に目をくれず
手を取り合う。
仲が良くて何より!
サリーナは微笑んだ。
その時、王族が入場する音楽が流れた。
あの日、大騒ぎする人間を余所にルーフとパールは落ち着いており、私について話したのは『そのうち起きる』の一言だったそうだ。
それを信じ、お父様達は起きない私をそのままに、自宅への帰路についた。
私は馬車が揺れても、家についてベッドへ運ばれても、身体を清拭されても起きなかった。
しかし、何をしても起きなかった事が嘘のように、その次の日の朝には目を覚ました。
結局の所、魔力を使いすぎて回復するための睡眠だったのだ。
あの時はびっくりしたわよ。起きたら、お父様と兄様達の顔があるのだもの。
ザック様も心配して、泊まっていてくれたのよね。
懐かしいわ。
私は現在、普通科コースの7年生だ。
魔法の練習も順調で、あの日以降長い眠りにつくこともない。そして、ある程度の魔力を使っても問題ないまでになっている。
要するに、身体を慣らしながら少しずつ使う量を増やしていけば良かったのだ。
分かっていたことなのに…。
ちなみに、リック兄様は文官として働いており、ザック様とリオン兄様は騎士コースを卒業し、見習い期間を経て成人した。
今日は成人の儀とは別にザック様の成人祝の舞踏会が開かれる。
婚約者である私の契約獣、ルーフとアルの参加も認められた。もちろん、パールもザック様と参加する。
「サリーナ様、終わりました。」
「ありがとう。」
私は、メル達侍女の手で磨かれ、いつもよりツヤツヤキラキラになっている。
「お綺麗です。」
「貴方達のお陰ね。」
「何をおっしゃいますか!サリーナ様の美貌があってこそです!」
サリーナは、前にも増して美しく成長していた。
「そう言ってくれるのは、うちの皆だけよ。」
面と向かって言わないだけで、サリーナと会う者は皆見惚れるのだが、本人は自覚していない。
「リーナ、綺麗だ。」
「リック兄様まで…。」
「可愛い妹を褒めて何が悪い?」
「悪くはありませんが…。ありがとうございます。」
「それでは、行こうか。」
「はい。リック兄様。」
父ジャックは宰相の為、朝から王城へ行っている。ダリオンは騎士寮で生活している為家にはいない。
サリーナは、仕事が休みのパトリックと王城に向かった。
王城につき、広間に通されると、すでに多くの人がいた。
「アイザック殿下が入場したら、そこまで送る。」
「いいえ。ルーフとアルがいますし、一人で大丈夫ですわ。」
「そうか?」
「リック兄様は、サラ様の元にいてあげてください。」
サラ様とはリック兄様の婚約者だ。いつもは迎えに行くのだが、今日は私の為に現地集合にしたらしい。
「サラは気にしないと思うが…。」
「そういう事ではありませんわ。」
「?」
「あんなに愛らしいのです。サラ様に変な虫が近づいてきたらどうするのですか。」
そう!サラ様は可愛い!小動物の様に可愛い!
「それは困るな…。」
「ほら!サラ様がいらっしゃいました。」
「あ、ああ。」
サラ様の姿を見つけて、私達は近づく。
今日も可愛らしい!
年上とは思えない。
「サラ。」
「リック様。」
ふたりは、私やサラ様の家族に目をくれず
手を取り合う。
仲が良くて何より!
サリーナは微笑んだ。
その時、王族が入場する音楽が流れた。
275
あなたにおすすめの小説
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~
いとうヒンジ
ファンタジー
ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。
理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。
パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。
友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。
その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。
カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。
キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。
最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。
勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる