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65 バルコニーでの休息

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私達は、バルコニーまで移動してきた。

「待たせて、ごめん。」

二人になった所でザック様は私に頭を下げた。

「今日の主役はザック様なのですから、仕方のない事ですよ。この人数の挨拶が早く終わるはずがございません。」
「リーナ…。」
「私はリック兄様やサラ様と楽しくお話していましたから大丈夫です。」
「それはそれで寂しい…。」

犬の耳と尻尾が見えるのは気のせいかしら?

私は思わず、ザック様の頭を撫でた。

「俺はパールでも、ルーフでもない。」
「知っています。」
「リーナ。俺も撫でてくれ。」
「私も~。」
「良いわよ。」

私は、ザック様の頭から手を離し、座って2匹を撫でる。
すると、ザック様もしゃがみこんだ。

「リーナ。今日も可愛い。」
「!?…ありがとうございます。」

ザック様に、面と向かって言われると照れる…。

「うん。…それにしても、ハンニー伯爵達は何をしたかったのか。」
「先程のですか。」
「そう、先程の。」

その問いに答えたのは、パールだった。

「あれ、精神に干渉する系だと思うわよ。変な匂いがしたもの。」
「匂い?」
「甘ったるいの。」
「確かにしたな。」

ルーフも頷いている。

「匂いは分からなかったわ。」
「人間には分からないかもね。」
「それほど微かということ?」
「私でも少し香る程度よ。」
「俺もだ。」
「……甘ったるくて精神系。まさかとは思うけど、魅了とか?」
「それは分からないけれど、可能性は大いにあるわね。」
「お父様へは…アルから伝えてもらいましょう。陛下と王妃様を守る為に、まだ一緒のはずよ。」
「ふたりは今日は早々に切り上げる予定になっているよ。」
「そうなのですか?」
「主役は俺だから、後半は任せるとか言っていた。…けれど、先程の事があるから、残る事にしたみたいだ。」

ザック様は話の途中で、会場内をちらりと見た。私もそちらを見る。陛下と王妃様がにこやかに専用の椅子に座っており、その近くにはお父様とアルの姿もある。

「ハンニー伯爵達をどうするつもりかしら?」
「このあと何も無ければ、見張りをつけて終わりだろうね。」

その時、バルコニーの手摺にカラスがとまった。脚にはシルバーの小さなリングがついている。

「ジャズ。」

そのカラスはお父様の契約獣だった。

6年前、お父様達にもザック様とパールと話した仮説を伝えた。お父様は契約獣を持ち、魔力操作練習後の体調不良が軽減された。さらに、魔力操作に関してはすぐに学校へ通達され授業内容が変えられた。今では、契約獣を持つ者も多くはないが、増えてきている。

ちなみに、リック兄様、リオン兄様の他に、話を聞いた陛下とアレックス様も魔力操作含め訓練を始め、契約獣も持っている。ザック様は、様々な理由により契約獣を持たず、魔力酔いは気合で乗り切ると決めたそうだ。その努力の成果か寝込む回数は徐々に減っている。

「主、頼マレマシタ。女、ミハル。」

ジャズは、片言で話す。

「見張る?」
「アイラン嬢か。」
「ソウ。」
「気をつけてね。」
「マカセテ。」

そして、隣のバルコニーへと移っていった。








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