97 / 142
93 騒ぎ
しおりを挟む
私達は訓練場を出て、シュルツ様と別れ、街に戻ってきた。
「何か欲しいものは?」
「用事は終わっているのです。アルと公園で遊ぼうと思っていたのですが、訓練場で飛んで満足したみたいですね。」
そう言ってアルを見ると、弾んだ声が返ってきた。
“楽しかったよ~。”
“良かったわね。私もリーナに構ってもらったから、今日は満足よ。”
パールも機嫌が良さそうだ。
「それなら、少し街なかを歩こうか?」
「はい。」
私達は目的なく、店を見ながら大通りを歩いた。
「こういうの久しぶりな気がします。」
「そうなのか?」
「ずっと忙しくて出来ていなかったので。」
この世界でほとんど経験はないが、言葉から何か察してくれたのだろう。深く聞かれることはなかった。
ウィンドウショッピング。
前は苦手だったけど、ザック様とならこうして街を回るのも楽しいわ。
その時、何やら騒がしくなった。
「どうしたのかしら?」
「行ってみよう。」
騒ぎが起こっているだろう所には、人集りが出来ていた。
人々の視線の先には剣を持ち、向かい合う男と騎士達。
「何をしてるんだ?」
ザック様が呟くと、野次馬のひとりが教えてくれた。
「破落戸が暴れて、騎士団が来たんだが、決着がつかないんだ。どうなってんだかな。」
アイザックは冷静に状況を見る。
破落戸三人に、騎士が二人。
周りを囲む野次馬は破落戸の近くにもいる。
「…囲んでいる市民に被害がいかないようにセーブして戦っているのか。」
市民を人質にされたら、手を出せなくなるものね。でも…
「破落戸達は、まだ人質をとっていないんですね。」
私はザック様だけに聞こえるように言った。
「そうだな。」
こう言っては何だけど、野次馬を傷つけて道を作り逃げる事も、人質を取って言うことを聞かせることもできるのに、何故それをせず向き合っているのかしら?
「とりあえず、行ってくる。」
「はい。いってらっしゃいませ。」
ザック様は、一歩出した足をそのままにこちらに振り向いた。
「…なんか良い。」
「はい?」
「リーナに『いってらっしゃい』と言われるのは。」
「………早く行ってあげてください。」
サリーナは、アイザックの背を押した。
「改めて…行ってくる。」
「はい。」
アイザックは後ろにいた騎士に、破落戸の様子を見ながら、小声で話しかけた。
「第2部隊のアイザックです。これはどんな状況ですか?」
「あ、アイザック殿下。私達は第3部隊です。斬り掛かって周りに被害が出たら…」
第3部隊ってリオン兄様の所?
「これだけ騎士がいるのに、何故あちら側に騎士がいないのです?」
「こちらから来たもので…」
「ふたりとも?」
「…はい。」
「はぁぁ。」
アイザックは、大きな溜息をついた。
そんな話をしていると、前にいた騎士が何を血迷ったか破落戸に斬りかかった。
「アイザック殿下!来てくださったなら、話してないで援護お願いします!」
「は?」
ガツン
騎士の剣と破落戸の中のひとりの剣がぶつかる。
その衝撃で破落戸の剣が折れた。
一発で折れる剣って何!?
そして、その折れた剣先はサリーナのいる方へ飛んできた。
「リーナ!」
ゴツン!
結構な勢いで当たり大きな音もしたが、サリーナは無傷だった。
「リーナ、大丈夫か?」
破落戸を魔法で確保しながら、アイザックはサリーナへ向かって叫んだ。
「びっくりはしましたが、大丈夫ですよ。バリアを張っておいてよかったです。」
サリーナは、微笑んだ。
ふぅ…訓練場に入る前に張って、解除してなくて良かった。
実は、あまりに楽しくて解除を忘れていたのよね…。
「何か欲しいものは?」
「用事は終わっているのです。アルと公園で遊ぼうと思っていたのですが、訓練場で飛んで満足したみたいですね。」
そう言ってアルを見ると、弾んだ声が返ってきた。
“楽しかったよ~。”
“良かったわね。私もリーナに構ってもらったから、今日は満足よ。”
パールも機嫌が良さそうだ。
「それなら、少し街なかを歩こうか?」
「はい。」
私達は目的なく、店を見ながら大通りを歩いた。
「こういうの久しぶりな気がします。」
「そうなのか?」
「ずっと忙しくて出来ていなかったので。」
この世界でほとんど経験はないが、言葉から何か察してくれたのだろう。深く聞かれることはなかった。
ウィンドウショッピング。
前は苦手だったけど、ザック様とならこうして街を回るのも楽しいわ。
その時、何やら騒がしくなった。
「どうしたのかしら?」
「行ってみよう。」
騒ぎが起こっているだろう所には、人集りが出来ていた。
人々の視線の先には剣を持ち、向かい合う男と騎士達。
「何をしてるんだ?」
ザック様が呟くと、野次馬のひとりが教えてくれた。
「破落戸が暴れて、騎士団が来たんだが、決着がつかないんだ。どうなってんだかな。」
アイザックは冷静に状況を見る。
破落戸三人に、騎士が二人。
周りを囲む野次馬は破落戸の近くにもいる。
「…囲んでいる市民に被害がいかないようにセーブして戦っているのか。」
市民を人質にされたら、手を出せなくなるものね。でも…
「破落戸達は、まだ人質をとっていないんですね。」
私はザック様だけに聞こえるように言った。
「そうだな。」
こう言っては何だけど、野次馬を傷つけて道を作り逃げる事も、人質を取って言うことを聞かせることもできるのに、何故それをせず向き合っているのかしら?
「とりあえず、行ってくる。」
「はい。いってらっしゃいませ。」
ザック様は、一歩出した足をそのままにこちらに振り向いた。
「…なんか良い。」
「はい?」
「リーナに『いってらっしゃい』と言われるのは。」
「………早く行ってあげてください。」
サリーナは、アイザックの背を押した。
「改めて…行ってくる。」
「はい。」
アイザックは後ろにいた騎士に、破落戸の様子を見ながら、小声で話しかけた。
「第2部隊のアイザックです。これはどんな状況ですか?」
「あ、アイザック殿下。私達は第3部隊です。斬り掛かって周りに被害が出たら…」
第3部隊ってリオン兄様の所?
「これだけ騎士がいるのに、何故あちら側に騎士がいないのです?」
「こちらから来たもので…」
「ふたりとも?」
「…はい。」
「はぁぁ。」
アイザックは、大きな溜息をついた。
そんな話をしていると、前にいた騎士が何を血迷ったか破落戸に斬りかかった。
「アイザック殿下!来てくださったなら、話してないで援護お願いします!」
「は?」
ガツン
騎士の剣と破落戸の中のひとりの剣がぶつかる。
その衝撃で破落戸の剣が折れた。
一発で折れる剣って何!?
そして、その折れた剣先はサリーナのいる方へ飛んできた。
「リーナ!」
ゴツン!
結構な勢いで当たり大きな音もしたが、サリーナは無傷だった。
「リーナ、大丈夫か?」
破落戸を魔法で確保しながら、アイザックはサリーナへ向かって叫んだ。
「びっくりはしましたが、大丈夫ですよ。バリアを張っておいてよかったです。」
サリーナは、微笑んだ。
ふぅ…訓練場に入る前に張って、解除してなくて良かった。
実は、あまりに楽しくて解除を忘れていたのよね…。
241
あなたにおすすめの小説
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~
いとうヒンジ
ファンタジー
ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。
理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。
パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。
友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。
その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。
カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。
キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。
最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。
拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。
とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。
…‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。
「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」
これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め)
小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。
勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる