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105 大会帰り

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大会帰りの馬車の中…

「隊長同士の戦いは迫力がありましたね。」
「前回はハンス隊長が勝ったそうよ。」
「それは、同等の力を持っているということですね?」
「そうね。」

私とメルが話していると、ルーフが口を開いた。

「俺もやりたい。」
「ん?何を?」
「力比べ。」
「力比べ?」
「時々森に行って魔獣と戦うが、弱すぎて俺の力が分かんねぇ。」
「ルーフ…弱い者いじめは駄目よ?」
「分かってる。こっちに向かってきたやつしか相手にしてない。」
「それなら良いけれど。」
「良いのですね…。」
「向かってきたなら、自己防衛よ。」
「そうなりますかね?」
「そういえば、魔獣については『森の奥にいて、たまにしか人の前には出てこない』としか分からないわ。学校の授業でもその辺はサラッと流されていたし、花嫁修業と言う名の妃教育でも詳しくは習わなかったのよ。」

ザック様は第2王子に位置しているため、その婚約者の私は妃になる専門の教育をしていたのだが、すでに『もう勉強の必要はない』と太鼓判を押され、今はそこに時間を取られることはない。

「旦那様なら何かご存知なのでは?」
「そうね。お父様に聞いてみるわ。」
「俺も聞きたい。」
「僕も~。」

ルーフとアルが声をあげる。

「ええ。一緒に聞きに行きましょうね。」

私達はお父様が帰ってきて、食事を摂った後に、話を切り出した。

因みにリック兄様は、サラ様とデートだそうだ。

「魔獣のことは、確かに勉強で触れられないな。」
「それは、何故ですか?」
「必要なくなったからとしか…」
「しかし、お父様や兄様達のように、また契約獣を持つ人が出てきましたよね?」
「そうだね。しかし、それでも多数派とは言えない。わざわざ学校では教えないよ。必要に思ったら、自分で調べるしかないんだ。」
「…私、調べようとは思いませんでした。そうですよね。自分で調べないとですよね。」
「リーナの場合、ルーフ達がいるし、他が気にならなかったから、その気が起きなかっただけではないかな。」
「確かに…。この子達以外、あまり興味はありませんしね。」
「フッ、そうだろう?ま、何でも経験することだ。今度、森の奥に行ってみるといい。」
「良いのですか?」
「リーナ達なら大丈夫だろう。行ったとしても、強い魔獣ほど相手の力量を見て行動するそうだから、出てこないかもしれないけどな。」
「俺が森に行っても出てこなかったのは、そういうことか!」
「警戒していたのだろう。」
「それなら、次も同じかも~。」
「ゔー…」

にこやかなお父様と、軽い感じのアルの言葉に、ルーフは呻きながらも思いついたように言った。

「いや、リーナと一緒なら変わるかもしれない!」
「そうだな。リーナは魔力が強いし、魔獣を惹き付けるかもしれないね。」
「お父様…さっき仰ったことと違いませんか?」
「違っていないよ。わたしは『相手の力量を見て、行動する』といったんだ。どんな行動をとるかは、分からないよ。」
「…そうですか。」
「色々想定して、準備していきなさい。」
「はい。」

一週間後、私達は森の奥に行くことにした。
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