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138 結婚式当日、そしてその後

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あの事件は、あれから…
アイラン達について、隣国は干渉せず我が国こちらで裁いて貰って構わない、とのやり取りがあった様だ。

「蜥蜴の尻尾切り…。」
「サリーナ様?」

現在、サリーナは結婚式の準備中で、ウエディングドレスに身を包み鏡の前に座っている。
メルが心配そうにサリーナの顔を覗き込んだ。

「結婚式当日で、緊張なさっているのですか?」

私の言葉は聞こえていなかったようね。

「緊張はしていないわ。少し考え事をしていただけよ。」
「なにかご心配でも?」
「そうではないの。」
「…それなら宜しいのですが。」
「それよりも、ザック様は、そろそろかしら?」
「はい。もう少しで予定時間になります。」

コンコンコン

ドアがノックされ、メルが対応する。

「アイザック殿下がいらっしゃいました。」

サリーナは、椅子から立ち上がりドアへ向かった。メルが脇に下がり、ドアが大きく開く。目の前には正装したアイザックが見える。

格好良いわ…。

ふたりは、しばし見つめ合い時が止まったようだった。

「ゴホン。」

アイザックの侍従の咳で、ふたりは我に返った。

「リーナ、綺麗だ。」
「ありがとうございます。ザック様も素敵です。」
「ありがとう。…行こう。」

アイザックが手を差し出すと、サリーナはそこへ自分の手を乗せた。

「やっとだな。」
「やっと、ですか?」
「ああ。どんなにこの日を待っていたことか。」

アイザックは、サリーナに向かって微笑んだ。サリーナは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になる。

「私は、こんなに思われて幸せですね。」
「もっと幸せにするつもりだ。覚悟しておいてくれ。」
「ふふふっ、はい。楽しみにしております。」





「母さ~ん!!ルリンが泣いてる~!」
「はいは~い。お昼寝から起きたのね。マルクス、教えてくれてありがとう。」
「どういたしまして!これから、外で遊んでくるね!ルーフ、行こう!」
「ああ。」
「気をつけてね~。」
「は~い!」

式の後、アレックス殿下の所に妊娠が判明。元気な男の子が生まれた。
アイザックとサリーナは、色々と問題や反対はあったが、王城を出て予定通り自分達だけの生活を楽しんだ。

そして今、男の子と女の子、二人の子供に恵まれ、日々を忙しなく過ごしている。

「ふわぁ~、ルーフも付き合いがいいわね。」

サリーナが、第二子ルリンの元へ行くと、パールがあくびをしながら、ルリンのベッドの横で伸びをした。

「パールもルリンを見ていてくれるじゃない。助かるわ。」
「…私は、寝ていただけよ。」
「そう?」
「パール。ベッド、何回も除いてたじゃん。」

パールの横にある窓から、アルが顔を出した。

「アル、黙りなさい。」
「は~い。」
「クスクスッ。」
「そうだ!リーナ、アイザックが帰ってきたよ~。」
「分かったわ。」

サリーナは、ルリンを抱き上げて玄関に向かう。
すると、時間を置かず玄関の扉が開いた。

「ただいま。」

アイザックと、その足元に黒豹の姿がある。

「おかえりなさい。早かったのね。」
「最近忙しかったから、シュルツに早く帰るよう言われた。」
「まぁ!シュルツさんに、今度お礼をしなくちゃ。」
「…そんな必要はない。」
「何だ、ザック。心が狭いな!」

面白くなさそうに答えるアイザックの横から、黒豹が口を挟む。

「ノアール…。」

アイザックが黒豹を睨む。

「お?図星だな!」

契約獣を持たないつもりだったアイザックだが、愛する者たちを守る為、黒豹ノアールと契約を交わす事を決めたのだった。ノアールもパールといる為、それを受け入れた。

「あなた、余計な事を言うと追い出されるわよ?」
「パール。大丈夫!大丈夫!こんなことくらいで追い出す程、ここの奴等はちっちゃい人間じゃない!」
「…それもそうね。」
「と言うことで、パールゆっくりしよう!」

ノアールは、パールに擦り寄った。

「全く…しょうがないわね。」

パールは呆れながら、ノアールとリビングの窓際へ移動し、日の当たる場所で寄り添った。

「はぁ…。」
「ふふっ。お疲れさまです。お茶を入れるわね。」
「ありがとう。ルリンは…寝ているんだな。」
「ベッドでお昼寝していたんだけど、今、少しグズったから抱っこした所だったの。また、寝ちゃったわね。」
「こちらへ。」
「お願い。」

サリーナは、アイザックへルリンを預け、鼻歌を歌いながら、お茶とケーキの準備をした。

「ふんふんふんふん♪」
「ご機嫌だな。」
「!」

リビングで待っていると思っていたアイザックに後ろから声をかけられ、サリーナは飛び上がった。

「びっくりした…。」
「そんなに驚くか?」
「だって…。」

魔力も気配も消しているのだもの…。

「ごめん、ごめん。リーナの姿を見ていたくてな。」
「…ザック。」
「ん?」
「何でもないわ。さぁ、用意ができたから戻りましょう。」
「ああ。美味しそうだな。」
「今日は塩羊羹を作ってみたの。甘さ控えめにしたけど、どうかしらね。」

家の外からは、第一子マルクスの笑い声が聞こえ、サリーナ達は、お茶とケーキを食べる。


色々ありましたが、私達は忙しないながらも、こうしてのんびりした時間を過ごしています。これからもこんな日々が続きますように…。








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