142 / 142
138 結婚式当日、そしてその後
しおりを挟む
あの事件は、あれから…
アイラン達について、隣国は干渉せず我が国で裁いて貰って構わない、とのやり取りがあった様だ。
「蜥蜴の尻尾切り…。」
「サリーナ様?」
現在、サリーナは結婚式の準備中で、ウエディングドレスに身を包み鏡の前に座っている。
メルが心配そうにサリーナの顔を覗き込んだ。
「結婚式当日で、緊張なさっているのですか?」
私の言葉は聞こえていなかったようね。
「緊張はしていないわ。少し考え事をしていただけよ。」
「なにかご心配でも?」
「そうではないの。」
「…それなら宜しいのですが。」
「それよりも、ザック様は、そろそろかしら?」
「はい。もう少しで予定時間になります。」
コンコンコン
ドアがノックされ、メルが対応する。
「アイザック殿下がいらっしゃいました。」
サリーナは、椅子から立ち上がりドアへ向かった。メルが脇に下がり、ドアが大きく開く。目の前には正装したアイザックが見える。
格好良いわ…。
ふたりは、しばし見つめ合い時が止まったようだった。
「ゴホン。」
アイザックの侍従の咳で、ふたりは我に返った。
「リーナ、綺麗だ。」
「ありがとうございます。ザック様も素敵です。」
「ありがとう。…行こう。」
アイザックが手を差し出すと、サリーナはそこへ自分の手を乗せた。
「やっとだな。」
「やっと、ですか?」
「ああ。どんなにこの日を待っていたことか。」
アイザックは、サリーナに向かって微笑んだ。サリーナは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になる。
「私は、こんなに思われて幸せですね。」
「もっと幸せにするつもりだ。覚悟しておいてくれ。」
「ふふふっ、はい。楽しみにしております。」
◇
「母さ~ん!!ルリンが泣いてる~!」
「はいは~い。お昼寝から起きたのね。マルクス、教えてくれてありがとう。」
「どういたしまして!これから、外で遊んでくるね!ルーフ、行こう!」
「ああ。」
「気をつけてね~。」
「は~い!」
式の後、アレックス殿下の所に妊娠が判明。元気な男の子が生まれた。
アイザックとサリーナは、色々と問題や反対はあったが、王城を出て予定通り自分達だけの生活を楽しんだ。
そして今、男の子と女の子、二人の子供に恵まれ、日々を忙しなく過ごしている。
「ふわぁ~、ルーフも付き合いがいいわね。」
サリーナが、第二子ルリンの元へ行くと、パールがあくびをしながら、ルリンのベッドの横で伸びをした。
「パールもルリンを見ていてくれるじゃない。助かるわ。」
「…私は、寝ていただけよ。」
「そう?」
「パール。ベッド、何回も除いてたじゃん。」
パールの横にある窓から、アルが顔を出した。
「アル、黙りなさい。」
「は~い。」
「クスクスッ。」
「そうだ!リーナ、アイザックが帰ってきたよ~。」
「分かったわ。」
サリーナは、ルリンを抱き上げて玄関に向かう。
すると、時間を置かず玄関の扉が開いた。
「ただいま。」
アイザックと、その足元に黒豹の姿がある。
「おかえりなさい。早かったのね。」
「最近忙しかったから、シュルツに早く帰るよう言われた。」
「まぁ!シュルツさんに、今度お礼をしなくちゃ。」
「…そんな必要はない。」
「何だ、ザック。心が狭いな!」
面白くなさそうに答えるアイザックの横から、黒豹が口を挟む。
「ノアール…。」
アイザックが黒豹を睨む。
「お?図星だな!」
契約獣を持たないつもりだったアイザックだが、愛する者たちを守る為、黒豹ノアールと契約を交わす事を決めたのだった。ノアールもパールといる為、それを受け入れた。
「あなた、余計な事を言うと追い出されるわよ?」
「パール。大丈夫!大丈夫!こんなことくらいで追い出す程、ここの奴等はちっちゃい人間じゃない!」
「…それもそうね。」
「と言うことで、パールゆっくりしよう!」
ノアールは、パールに擦り寄った。
「全く…しょうがないわね。」
パールは呆れながら、ノアールとリビングの窓際へ移動し、日の当たる場所で寄り添った。
「はぁ…。」
「ふふっ。お疲れさまです。お茶を入れるわね。」
「ありがとう。ルリンは…寝ているんだな。」
「ベッドでお昼寝していたんだけど、今、少しグズったから抱っこした所だったの。また、寝ちゃったわね。」
「こちらへ。」
「お願い。」
サリーナは、アイザックへルリンを預け、鼻歌を歌いながら、お茶とケーキの準備をした。
「ふんふんふんふん♪」
「ご機嫌だな。」
「!」
リビングで待っていると思っていたアイザックに後ろから声をかけられ、サリーナは飛び上がった。
「びっくりした…。」
「そんなに驚くか?」
「だって…。」
魔力も気配も消しているのだもの…。
「ごめん、ごめん。リーナの姿を見ていたくてな。」
「…ザック。」
「ん?」
「何でもないわ。さぁ、用意ができたから戻りましょう。」
「ああ。美味しそうだな。」
「今日は塩羊羹を作ってみたの。甘さ控えめにしたけど、どうかしらね。」
家の外からは、第一子マルクスの笑い声が聞こえ、サリーナ達は、お茶とケーキを食べる。
色々ありましたが、私達は忙しないながらも、こうしてのんびりした時間を過ごしています。これからもこんな日々が続きますように…。
アイラン達について、隣国は干渉せず我が国で裁いて貰って構わない、とのやり取りがあった様だ。
「蜥蜴の尻尾切り…。」
「サリーナ様?」
現在、サリーナは結婚式の準備中で、ウエディングドレスに身を包み鏡の前に座っている。
メルが心配そうにサリーナの顔を覗き込んだ。
「結婚式当日で、緊張なさっているのですか?」
私の言葉は聞こえていなかったようね。
「緊張はしていないわ。少し考え事をしていただけよ。」
「なにかご心配でも?」
「そうではないの。」
「…それなら宜しいのですが。」
「それよりも、ザック様は、そろそろかしら?」
「はい。もう少しで予定時間になります。」
コンコンコン
ドアがノックされ、メルが対応する。
「アイザック殿下がいらっしゃいました。」
サリーナは、椅子から立ち上がりドアへ向かった。メルが脇に下がり、ドアが大きく開く。目の前には正装したアイザックが見える。
格好良いわ…。
ふたりは、しばし見つめ合い時が止まったようだった。
「ゴホン。」
アイザックの侍従の咳で、ふたりは我に返った。
「リーナ、綺麗だ。」
「ありがとうございます。ザック様も素敵です。」
「ありがとう。…行こう。」
アイザックが手を差し出すと、サリーナはそこへ自分の手を乗せた。
「やっとだな。」
「やっと、ですか?」
「ああ。どんなにこの日を待っていたことか。」
アイザックは、サリーナに向かって微笑んだ。サリーナは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になる。
「私は、こんなに思われて幸せですね。」
「もっと幸せにするつもりだ。覚悟しておいてくれ。」
「ふふふっ、はい。楽しみにしております。」
◇
「母さ~ん!!ルリンが泣いてる~!」
「はいは~い。お昼寝から起きたのね。マルクス、教えてくれてありがとう。」
「どういたしまして!これから、外で遊んでくるね!ルーフ、行こう!」
「ああ。」
「気をつけてね~。」
「は~い!」
式の後、アレックス殿下の所に妊娠が判明。元気な男の子が生まれた。
アイザックとサリーナは、色々と問題や反対はあったが、王城を出て予定通り自分達だけの生活を楽しんだ。
そして今、男の子と女の子、二人の子供に恵まれ、日々を忙しなく過ごしている。
「ふわぁ~、ルーフも付き合いがいいわね。」
サリーナが、第二子ルリンの元へ行くと、パールがあくびをしながら、ルリンのベッドの横で伸びをした。
「パールもルリンを見ていてくれるじゃない。助かるわ。」
「…私は、寝ていただけよ。」
「そう?」
「パール。ベッド、何回も除いてたじゃん。」
パールの横にある窓から、アルが顔を出した。
「アル、黙りなさい。」
「は~い。」
「クスクスッ。」
「そうだ!リーナ、アイザックが帰ってきたよ~。」
「分かったわ。」
サリーナは、ルリンを抱き上げて玄関に向かう。
すると、時間を置かず玄関の扉が開いた。
「ただいま。」
アイザックと、その足元に黒豹の姿がある。
「おかえりなさい。早かったのね。」
「最近忙しかったから、シュルツに早く帰るよう言われた。」
「まぁ!シュルツさんに、今度お礼をしなくちゃ。」
「…そんな必要はない。」
「何だ、ザック。心が狭いな!」
面白くなさそうに答えるアイザックの横から、黒豹が口を挟む。
「ノアール…。」
アイザックが黒豹を睨む。
「お?図星だな!」
契約獣を持たないつもりだったアイザックだが、愛する者たちを守る為、黒豹ノアールと契約を交わす事を決めたのだった。ノアールもパールといる為、それを受け入れた。
「あなた、余計な事を言うと追い出されるわよ?」
「パール。大丈夫!大丈夫!こんなことくらいで追い出す程、ここの奴等はちっちゃい人間じゃない!」
「…それもそうね。」
「と言うことで、パールゆっくりしよう!」
ノアールは、パールに擦り寄った。
「全く…しょうがないわね。」
パールは呆れながら、ノアールとリビングの窓際へ移動し、日の当たる場所で寄り添った。
「はぁ…。」
「ふふっ。お疲れさまです。お茶を入れるわね。」
「ありがとう。ルリンは…寝ているんだな。」
「ベッドでお昼寝していたんだけど、今、少しグズったから抱っこした所だったの。また、寝ちゃったわね。」
「こちらへ。」
「お願い。」
サリーナは、アイザックへルリンを預け、鼻歌を歌いながら、お茶とケーキの準備をした。
「ふんふんふんふん♪」
「ご機嫌だな。」
「!」
リビングで待っていると思っていたアイザックに後ろから声をかけられ、サリーナは飛び上がった。
「びっくりした…。」
「そんなに驚くか?」
「だって…。」
魔力も気配も消しているのだもの…。
「ごめん、ごめん。リーナの姿を見ていたくてな。」
「…ザック。」
「ん?」
「何でもないわ。さぁ、用意ができたから戻りましょう。」
「ああ。美味しそうだな。」
「今日は塩羊羹を作ってみたの。甘さ控えめにしたけど、どうかしらね。」
家の外からは、第一子マルクスの笑い声が聞こえ、サリーナ達は、お茶とケーキを食べる。
色々ありましたが、私達は忙しないながらも、こうしてのんびりした時間を過ごしています。これからもこんな日々が続きますように…。
243
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~
いとうヒンジ
ファンタジー
ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。
理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。
パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。
友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。
その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。
カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。
キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。
最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。
勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる