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捨てた希望
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死のう死のうって思った。でも、あいつらの為に死ぬのもバカらしくて、せめて自由人になって死んでやるって、なにくそ奴隷根性で何とか精神を立て直した。
借金をどうにかしないと、どうにもならないのが今の現状。だったら体でも何でも使って、一日でも早く借金を返してやる。
そう意気込んだのに、仕事がない。
一カ月、仕事がない。
お金がないのに、仕事がない。
「何で? 一日一件は何かしら予約が入ってたじゃん。順調だったじゃん。人外界で何が起きてるの?」
公開ショーの翌日から客足がぱったり途切れ、今日までお客ゼロ。
でもヒト科の方は大繁盛。マスターに、「ヒト相手の仕事をください」と土下座して頼んだけど、「人外専門でしょう」と断られた。土下座したのに酷いやつだ。
寮の腐ったご飯も無料じゃない。寮費だってかかる。
無駄遣いしないように頑張って貯めたお金がどんどん減っていく。
これは恐怖だ。
「……どうしよう、……あと一万ジュエルしか残ってない」
農園にいた頃は一万ジュエルは大金で手にすることは夢のまた夢って感じだけど、状況が変わればお金の価値も変わる。
このままじゃ生活苦で死んでしまう。
「三日に一回、寮のご飯を頼んで、あとは草を食べよう。水はあるんだし死ぬことはないよね」
そう思っても、やっぱり恐怖だ。
人外専門娼婦としてここにいるけど、稼げなくなったら農園送り。
想像したくもない未来だ。
一思いに殺されて内臓を売られた方が幸せ。
「誰でもいいから、早くお客さんが来ますように!」
こんな状況でも良いことが一つあった。
お仕事用の個室をもらえたのだ。
いつもの2番の部屋。
私が待機室にいるのが気持ち悪いと嫌がるお嬢たちと、人外と私が使った部屋を使いたくないと苦情がきたからっていう理由だった。
おかげで【嫌な目】でみられることもないし、陰口や笑いでモヤモヤせずに済む。
苦情入れてくれて、ありがとう。
「ふんっふんっ!」
最近、暇な時間を有効活用して、筋トレをしている。カロリー消費は控えたいけど、今のうちに体力をつけなければ。人外さん相手は体力がいくらあっても足りない。
種馬さんも、三回目の種付けセックスで倒れた私を介抱しながら、「人外相手にするならもっと体力をつけろ。いつか死ぬぞ」とアドバイスしてくれたくらいだ。
あれはどう考えてもセックス疲れより精液の量の問題。三回もあんな量を出されたら誰でも倒れる。
「でも! 体力は! 必要! ふおおお!」
ありったけの体力を使って腹筋をしていたら、扉をノックされた。
「アキラちゃん、お仕事よ」
いきなりのことに驚いて、頭からベッドから落ちた。
逆さまの視界に写るのは見たことがある人外さん。
「よっ!」
「ウルフ!」
「何してんの?」
「アハハ、ちょっと筋トレを……」
いそいそと起き上がると、ウルフがベッドに押し倒してきた。抱きついて首にスリスリしながら尻尾を振る様は、まさに犬。
おお、かわいいワンコ。もっと私を癒しておくれ。
「アキラ、久しぶり!」
「久しぶり。元気にしてた?」
「おうっ、元気! アキラは?」
仕事がなくて死にかけましたって口が裂けても言えない。
「元気だよ」
「……うん、雄の匂いがしねーな」
「匂い?」
「んーん、こっちの話。 ほれ、キャンディあげる。あーんして」
「あっ、ああ、ありがとうございますぅ」
「キャンディくらいで泣くなって」
一カ月にしてようやくお給料が入る。しかもキャンディも!
やっとツキが回ってきたかも。
今日こそは寮のご飯を食べようか。
やっぱりあと二人のお客さんがつくまで草を食べよう。
まだ調子に乗るべからず。
口に入ってるキャンディを大切に舐めよう。
「ウルフがきてくれて嬉しいよう」
「アキラはかわいいな」
「ワンコには敵わないよう」
「俺はオオカミだっ!」
いつもの流れに二人で笑って、どちらともなくキスをした。
「もう発情してるの?」
「おう、おまえだけに発情中」
「なにそれ」
「アキラがほしい」
ウルフの手が私の頬をなでる。
その手に自分のを重ねてお互いの舌を絡め合う。
ウルフの感覚を思い出して、お腹がキュンッと疼いた。
奴隷になって、初めて一カ月何もしなかった。
だから敏感になってる?
それとも媚薬成分配合精液に毒された?
セックスに依存してる?
キモチイイことがもっとほしい、早くほしい、なんて思っている。
そんなこと思いたくないのに。
でも、もっとほしいのに唇が離れていく。名残惜しくてウルフの唇をなでた。
「キスするの好き?」
「うん」
「俺がほしくて堪らねえって、そんな目してる」
「そんなことないよ」
「じゃ、ここで止める」
「ダメ!」
思わず言ってしまった。それを聞いたウルフが笑った。
何も面白くないのに!
「そう怒るなって。今のはアキラがかわいいから笑ったんだ」
「そうやって」
「ほんとだから」
ウルフは、はむっと耳を噛んできた。
「みみっ」
耳元で喋るなって言いたいのに言葉が上手く紡げない。
耳を噛んで甘い痛みを与えてくる。
「俺がほしくて堪らないって、そう思ったんなら素直に言えって」
「やっ、ん」
「俺は、アキラに求められるとすげー興奮するし、めちゃくちゃ嬉しい」
ウルフの本音が私を動かした。
私なんかを求めてくれる。
それが嬉しくてウルフに手を伸ばした。
「んっ、どした?」
ウルフは私の手を握った。手の甲に何度もキスをしてくる。
そこじゃなくて唇に欲しいのに。
いっぱいほしいのに。
「ほしいよ、いっぱい……ほしくて、……お願い、止めないで……」
いったん出たら止まらない。
ポロポロと本音が溢れる。
恥ずかしくない、それよりもほしくて堪らない。
何だこれ。何で性欲一直線なんだ。
本当に、私の体、おかしくなったかも。
「ッッ! このっ」
「んんっ」
やっと唇にキスをしてくれた。
深く奥まで貪るようなキスだった。
唇の端からヨダレが溢れるほど、濃厚だ。
「っ」
「ふっ」
お互いが息継ぎを忘れてる。
それだけ求めてくれてると思ったら、何かが込み上げてくる。
「アキラっ」
「んぅ」
ワンピースをたくしあげた。
ウルフは急かすように片手で下着を脱がせて、太い指でアソコをなでた。
クチュッとした音が耳に届く。
キスで感じた証。
「きもちいい?」
「うっ、んぁ」
指が中に入ってくる。
慣らすようにゆっくり。
もどかしいくらいゆっくり。
ジンジンする疼きを生みながら、中へ。
もう堪らなかった。
耐えられそうにもなかった。
小刻みに震えだした体は、もうすぐイキそうだと叫んでいた。
「まだ、だめ」
「っ」
「待て、だぞ」
「やっ、だぁ」
「よしって言うまで、待て」
だったら触らないでほしいのに、中を掻き回してた指がとある場所に触れた。
イクことを促してくるトコロ。
耐えられなくて、止めてくれと首を振ったら、また耳に口を押し付けた。
「ちゃーんと、待てができたら、ゴムを付けるから。今日は、中出しに耐えらんねーだろ」
確かに今日の感度はおかしい。
こんな状態で媚薬成分配合精液を出されたら、狂ってしまう、かも。
でも、今を耐えられる自信がない。
「ふっ、ウルフ、やだっ、やめて」
「だーめ。まだ、待て」
もうダメ、そこまでキテる、ムリ、絶対にムリ。
首を振って訴えても、ナカの指は止まる気配がない。
でも、もうダメだと限界を感じた体も止まることはなくて。
すぐにキモチイイものが全身に駆け巡った。
「んん! やっ、ああっ!」
「ざーんねん」
ウルフは服を脱ぐとアレをアソコに押し付けてきた。
先っぽで入り口を確かめて、少しずつ入れてくる。
何もつけずに挿入するつもりだ。
それは無理、それ以上は止めてと意味を込めて睨んだ。
「おねだりして?」
「なん、で」
「トロ水あんの?」
「ないっ」
「んじゃ、俺の精子を代わりに使うしかねーよな?」
「っ」
「アキラ、早く」
ウルフは自分の手でしごきだした。
最初からゴムをつける気はなかった?って聞こうとしたけど、ここはそういう店だって思い出して、ようやく少しだけ頭が冷えた。
「……だして、ください」
「うんうん、じょーず」
「っうあ」
どんどんナニが中に入ってくる。
微妙に痛くてギュッとアソコがしまると、アレがビクビク震えた。
「うっ、あっ!」
まだ中に出されてる途中なのに、アソコがポッと熱くなる。
これは本当にマズイと理性が戻ったけど、すぐに飛んだ。
「アキラっ!」
「あああっ!」
奥まで入れられてチカチカする視界。
奥の当たってる場所がヤバイくらいに気持ちがいい。
もっとほしい。
もっと、もっと。
「なっ、んでぇ」
それなのにアレを抜いて、アソコの入り口をちょんと触れるだけ。
堪らずにウルフを見れば、ガンッと奥まで突き立てられた。
「俺がほしかった?」
「ああっ、うあっ! やだぁ!」
ほしかった場所にナニが届く。気持ちいい何かが押し寄せてくる。
「嫌ならそんな声出すなって。めっちゃ興奮すんだぞ、その声」
「……あっ、ダメ! イッちゃっ……んん!」
「もっとそれ、聞かせて。めちゃくちゃ興奮する」
「あああっ! あっ、やっ! イッたの!」
「っ……俺もイキそう。……出すぞ、中に、アキラの中に」
「やだっ、やだ! これ以上はやだっ!」
ビクンッとお互いのソコが震える。
その微かな動きですら気持ち良くて声が洩れた。
「んぅ」
息を整えてたらバチッと目が合った。
微笑みながら近づくウルフの顔。それに合わせて目を閉じた。
「俺の、アキラ」
ウルフはそう呟いて、口の中に舌を入れてきた。
ーーーーーー
そろそろダメかもしれない。
ウルフに何度も突かれながら、たまに戻る理性の狭間で、そう思った。
「ねっ、俺が一番?」
「うっ、あぅ」
「ちゃんと答えて? じゃないとやめてあげない」
「いちばんっ、だから! もうやだっ! やだ!」
「俺もアキラが一番っ、ずっといっしょにいよーなっ」
そうしてやっと終わった行為。
理性が戻ったのは行為から一時間後だった。
今回は長かった。
そんで今、ちょっぴり怒っている。
媚薬入りキャンディを食べさせられていたから。
内緒で食べさせたことが許せない。
怖いくらいにほしがり一直線だった。
セックス依存って単語が頭をよぎった。
媚薬入りキャンディが原因ってことに安心したけど、気分のイイモノじゃない。
「ご、ごめん」
私の怒りに気づいたウルフは、ベッドの上にちょこんと正座して謝ってくれた。
私もきちんと向かい合って笑顔で接客した。
「別に、仕事だからね」
「……うん」
お金を落としてくれるお客さんだもの。
ラインをこっちから引かないと、このままじゃウルフがのめり込んでくる。
本当にダメになる。
「……もう、怒ってない?」
シュンと落ち込んで、愛くるしい目で見られようとも、ガン無視。
ここの信念だけは曲げたらダメ。
「ごめんなさい」
曲げたら、ダメ。
「くぅーん」
「ああっ! ワンコっ!」
けっこう簡単に曲がった。
「よしよしよしよし!」
すぐに抱きついて頭をよしよしした。
相変わらず尻尾をバタバタと振っている。
おお、かわいいワンコ。私は何度も許してしまうよ。
「へへっ、俺ね、それも好き」
「よしよし好きなの?」
「うん!」
「じゃ、いっぱいしちゃう! よしよし!」
「うへへ」
暴れ狂う尻尾を含めてめっちゃかわいいから、ぎゅうって抱きしめた。
「俺ね、お土産を持ってきた!」
「お土産?」
「ちょっと待ってろ」
ウルフは私の腕から抜け出すと、床にある白い箱を手に取りベッドに戻った。
そしてその箱を開けて私に見せた。
「じゃーん」
「いちごのケーキ!? しかも丸いやつ!」
「ケーキ好きだろ?」
「あっあああ、ありがとうございますう」
「また泣いた!?」
この前のお菓子と同じ、転生前振りに見たいちごのケーキに感動した。
こんな贅沢をしていいのか、草生活に戻れるのか、ちょっと不安だ。
でもケーキに罪はない! 食べる、私は! カビが生えてても丸々食べる!
「一緒に食べようぜ」
「……は?」
「ご、ごめん。一人でドウゾ」
今日からのご飯にしよう。ケーキがご飯とか幸せかよ。
今日はイイ日だ。
幸せいっぱいでずっと笑顔でいられる。ウルフのおかけだ。
「ありがとう!」
「ケーキ一つで大げさ。安い雌だな、アキラは」
「いいの! ケーキ好きなの」
「喜んでくれんなら何でもいいや! 早くイチャイチャしよっ」
ケーキの箱を落とさないように慎重に床に置いて、ウルフの隣に横になった。
ウルフは嬉しそうに腕まくらをしてきた。
「俺ね、今、幸せ」
本当に幸せそうに言うんだもの。ここがどこか忘れたのか何なのか。
返答に詰まったけど、何も言わずに笑顔を向けた。
「やめるだろ?」
「……うん?」
「店だよ、店。俺が一番って言ってくれたし、ずっと一緒って約束したじゃん」
「……うん?」
「何すっとぼけてんだよ。手続きとかどうなんの? 今日終わる?」
あれれ? どんどん話が進展していくんだけど。
これって本気? それとも冗談?
いろんな意味で恐ろしいぞ。
「えっと、冗談だよね? ごめんね、真に受けちゃって、アハハ」
「は? 冗談なわけねーじゃん」
ウルフは真面目に言った。
「結婚しよう」
ちょっとほんと意味が分からなくて、笑顔で固まってしまった。
「俺と一緒にのんびり暮らそうぜ」
いよいよ何を言ってるのか分からなくて固まるしかなかった。
「おまえだって好きでやってるわけじゃないだろ? 人外専門とかマジで壊れるって。だからさっ、雄が付かねーようにこの一カ月頑張った」
「頑張った? 何を?」
「オオカミが惚れ込んでるから手を出したら殺すってウワサを流したんだ。嫌な交尾せずに済んだだろ? それにおまえから雄の匂いが消えた!」
何でこの一カ月が暇だったのか、ようやく分かった。
人外にもランクがあるって種馬さんが言ってたけど、こういうことね。
オオカミがどのくらいのランクになるのか分かんないけど、ここまでの影響力があるってことね。
なるほど、なるほど。
「あのね、ウルフ」
「ん?」
「私は仕事をやめるつもりは」
「ダメだ」
断りを入れる前に遮られてしまった。
それはそれは大変な怒り具合で。
ふぅっと息を吐いて、いっそのこと真実を伝えようと口を開いた。
「借金があるの。それを返済するまでは仕事は続ける」
「いくら?」
「五百万ジュエル」
「そのくらいなら何とかなる。俺が払うからおまえはやめる、分かった?」
そう言われても全然分かんない。
でも多分、ウルフは引く気がない。
やりたくなかったけど、これ以上は見てられない。
「ごめん、ちょっと」
ベッドから出で、部屋にある電話を手にした。事務所へかけるとマスターが出たから、「キャンセルお願いします」と伝えた。
「あら、いいの? 罰金で料金の倍額払ってもらうわよ」
「借金につけといてください」
「奴隷のくせに生意気ね。適当にハイハイ言ってりゃいいのに」
「アハハ」
マスターの言うことはごもっとも。
それが出来なくなったってことは、お互いが近付き過ぎたんだと思う。
お客さんと娼婦。
それだけの関係が拗れたら、あとはグダグタになる。
割り切ってくれると助かるけど、ウルフはそれを望まない。
私もうまくやれない。
それに私は奴隷だ。
ウルフは知らない。
知ったら嫌いになるに決まってる。
気持ち悪いって、手のひらを返すんだ。
「はい」
ウルフの服を渡した。何が?って不安そうにしてるウルフに笑顔を向けた。
「もう来ないで」
「えっ、えっ、何で?」
「あなたとお付き合いする気も結婚する気もありません。というか出来ません」
「だから何で? 何がダメ?」
「知らないよ。ほら、早く着替えて」
戸惑うウルフを促すと、ようやく自分の手で服を着た。でも今の状況を全然分かってなくてオロオロしている。私もウルフに背中を向けて、下着とワンピースを着ながら改めて言った。
「現実が見えたでしょ? もう来ないでね」
「……おれのこと一番って言った」
「商売です」
「……嫌だ」
「ウルフはお金を払って私を買う、それだけの関係です」
「……違う」
「違わないの」
「嫌だっ!」
後ろから抱きついてきたウルフにため息を吐いた。ぎゅうぎゅうに抱きしめてくるから、……やっぱり少し苦しい。
「仕事やめよ? なっ?」
「正攻法でどうぞ」
「身請けってやつすればいいんだろ?」
「出来るわけないじゃん」
「いや、できる! アキラのためなら何でもする! ケーキだって好きなだけ買ってやるし! だからさ、もう会わないって、んなこと言うなよ」
「ケーキも要らないし、身請けもいらない。もっと現実見ようね」
「やだ、やだよ、……俺には、アキラだけなんだって……」
「気のせいだよ」
「……捨てないで」
呟かれた言葉がガツンと心にきた。
でもこれ以上どうしようもなくて、だからこそ終わりなんだと思えた。
「好きな人がいるの」
「……へ?」
「だからウルフと一緒にいけない。ごめんなさい」
「……何だよそれ」
ウルフはようやく離れてくれた。
自由になった体を動かして、白い箱を手に取った。
「これ、返すね。いろいろありがとう」
ウルフにそれを差し出すと、乱暴にそれを取り上げて思い切り床に投げ付けた。
床に飛び散ったいちごのケーキをぼんやり眺めた。
「じゃーな」
子供がかんしゃくを起こしたように、乱暴に扉を閉めてウルフは出て行った。
その場にしゃがんで、床に飛び散ったケーキをかき集める。
砂ぼこりが混じってるけど、食べられる物だ。
しばらくこれで食い繋ごう。
何が起きても自由になるまで死ねないから。
「ウルフは何も知らないんだね。奴隷って何でも食べるんだよ。食べないと死んじゃうから。家畜と同じ……違うか。家畜以下なんだよ、私って」
黒い粒々の砂とほこりの混じった生クリームを指ですくって口にいれた。
ジャリジャリして舌触りは悪かったけど、やっぱり涙が出るほどおいしかった。
「いっぱい助けてくれた、いっぱいよくしてくれた、お花うれしかったのに……ごめんなさい」
自らの手で捨ててしまった。
【希望】は生きる源なのに。
【希望】を枯らしてしまった。
「ツッチーに、会いたいな」
今日は、生クリームの甘ったるさが胸にきて、少しだけ胃がもたれた。
借金をどうにかしないと、どうにもならないのが今の現状。だったら体でも何でも使って、一日でも早く借金を返してやる。
そう意気込んだのに、仕事がない。
一カ月、仕事がない。
お金がないのに、仕事がない。
「何で? 一日一件は何かしら予約が入ってたじゃん。順調だったじゃん。人外界で何が起きてるの?」
公開ショーの翌日から客足がぱったり途切れ、今日までお客ゼロ。
でもヒト科の方は大繁盛。マスターに、「ヒト相手の仕事をください」と土下座して頼んだけど、「人外専門でしょう」と断られた。土下座したのに酷いやつだ。
寮の腐ったご飯も無料じゃない。寮費だってかかる。
無駄遣いしないように頑張って貯めたお金がどんどん減っていく。
これは恐怖だ。
「……どうしよう、……あと一万ジュエルしか残ってない」
農園にいた頃は一万ジュエルは大金で手にすることは夢のまた夢って感じだけど、状況が変わればお金の価値も変わる。
このままじゃ生活苦で死んでしまう。
「三日に一回、寮のご飯を頼んで、あとは草を食べよう。水はあるんだし死ぬことはないよね」
そう思っても、やっぱり恐怖だ。
人外専門娼婦としてここにいるけど、稼げなくなったら農園送り。
想像したくもない未来だ。
一思いに殺されて内臓を売られた方が幸せ。
「誰でもいいから、早くお客さんが来ますように!」
こんな状況でも良いことが一つあった。
お仕事用の個室をもらえたのだ。
いつもの2番の部屋。
私が待機室にいるのが気持ち悪いと嫌がるお嬢たちと、人外と私が使った部屋を使いたくないと苦情がきたからっていう理由だった。
おかげで【嫌な目】でみられることもないし、陰口や笑いでモヤモヤせずに済む。
苦情入れてくれて、ありがとう。
「ふんっふんっ!」
最近、暇な時間を有効活用して、筋トレをしている。カロリー消費は控えたいけど、今のうちに体力をつけなければ。人外さん相手は体力がいくらあっても足りない。
種馬さんも、三回目の種付けセックスで倒れた私を介抱しながら、「人外相手にするならもっと体力をつけろ。いつか死ぬぞ」とアドバイスしてくれたくらいだ。
あれはどう考えてもセックス疲れより精液の量の問題。三回もあんな量を出されたら誰でも倒れる。
「でも! 体力は! 必要! ふおおお!」
ありったけの体力を使って腹筋をしていたら、扉をノックされた。
「アキラちゃん、お仕事よ」
いきなりのことに驚いて、頭からベッドから落ちた。
逆さまの視界に写るのは見たことがある人外さん。
「よっ!」
「ウルフ!」
「何してんの?」
「アハハ、ちょっと筋トレを……」
いそいそと起き上がると、ウルフがベッドに押し倒してきた。抱きついて首にスリスリしながら尻尾を振る様は、まさに犬。
おお、かわいいワンコ。もっと私を癒しておくれ。
「アキラ、久しぶり!」
「久しぶり。元気にしてた?」
「おうっ、元気! アキラは?」
仕事がなくて死にかけましたって口が裂けても言えない。
「元気だよ」
「……うん、雄の匂いがしねーな」
「匂い?」
「んーん、こっちの話。 ほれ、キャンディあげる。あーんして」
「あっ、ああ、ありがとうございますぅ」
「キャンディくらいで泣くなって」
一カ月にしてようやくお給料が入る。しかもキャンディも!
やっとツキが回ってきたかも。
今日こそは寮のご飯を食べようか。
やっぱりあと二人のお客さんがつくまで草を食べよう。
まだ調子に乗るべからず。
口に入ってるキャンディを大切に舐めよう。
「ウルフがきてくれて嬉しいよう」
「アキラはかわいいな」
「ワンコには敵わないよう」
「俺はオオカミだっ!」
いつもの流れに二人で笑って、どちらともなくキスをした。
「もう発情してるの?」
「おう、おまえだけに発情中」
「なにそれ」
「アキラがほしい」
ウルフの手が私の頬をなでる。
その手に自分のを重ねてお互いの舌を絡め合う。
ウルフの感覚を思い出して、お腹がキュンッと疼いた。
奴隷になって、初めて一カ月何もしなかった。
だから敏感になってる?
それとも媚薬成分配合精液に毒された?
セックスに依存してる?
キモチイイことがもっとほしい、早くほしい、なんて思っている。
そんなこと思いたくないのに。
でも、もっとほしいのに唇が離れていく。名残惜しくてウルフの唇をなでた。
「キスするの好き?」
「うん」
「俺がほしくて堪らねえって、そんな目してる」
「そんなことないよ」
「じゃ、ここで止める」
「ダメ!」
思わず言ってしまった。それを聞いたウルフが笑った。
何も面白くないのに!
「そう怒るなって。今のはアキラがかわいいから笑ったんだ」
「そうやって」
「ほんとだから」
ウルフは、はむっと耳を噛んできた。
「みみっ」
耳元で喋るなって言いたいのに言葉が上手く紡げない。
耳を噛んで甘い痛みを与えてくる。
「俺がほしくて堪らないって、そう思ったんなら素直に言えって」
「やっ、ん」
「俺は、アキラに求められるとすげー興奮するし、めちゃくちゃ嬉しい」
ウルフの本音が私を動かした。
私なんかを求めてくれる。
それが嬉しくてウルフに手を伸ばした。
「んっ、どした?」
ウルフは私の手を握った。手の甲に何度もキスをしてくる。
そこじゃなくて唇に欲しいのに。
いっぱいほしいのに。
「ほしいよ、いっぱい……ほしくて、……お願い、止めないで……」
いったん出たら止まらない。
ポロポロと本音が溢れる。
恥ずかしくない、それよりもほしくて堪らない。
何だこれ。何で性欲一直線なんだ。
本当に、私の体、おかしくなったかも。
「ッッ! このっ」
「んんっ」
やっと唇にキスをしてくれた。
深く奥まで貪るようなキスだった。
唇の端からヨダレが溢れるほど、濃厚だ。
「っ」
「ふっ」
お互いが息継ぎを忘れてる。
それだけ求めてくれてると思ったら、何かが込み上げてくる。
「アキラっ」
「んぅ」
ワンピースをたくしあげた。
ウルフは急かすように片手で下着を脱がせて、太い指でアソコをなでた。
クチュッとした音が耳に届く。
キスで感じた証。
「きもちいい?」
「うっ、んぁ」
指が中に入ってくる。
慣らすようにゆっくり。
もどかしいくらいゆっくり。
ジンジンする疼きを生みながら、中へ。
もう堪らなかった。
耐えられそうにもなかった。
小刻みに震えだした体は、もうすぐイキそうだと叫んでいた。
「まだ、だめ」
「っ」
「待て、だぞ」
「やっ、だぁ」
「よしって言うまで、待て」
だったら触らないでほしいのに、中を掻き回してた指がとある場所に触れた。
イクことを促してくるトコロ。
耐えられなくて、止めてくれと首を振ったら、また耳に口を押し付けた。
「ちゃーんと、待てができたら、ゴムを付けるから。今日は、中出しに耐えらんねーだろ」
確かに今日の感度はおかしい。
こんな状態で媚薬成分配合精液を出されたら、狂ってしまう、かも。
でも、今を耐えられる自信がない。
「ふっ、ウルフ、やだっ、やめて」
「だーめ。まだ、待て」
もうダメ、そこまでキテる、ムリ、絶対にムリ。
首を振って訴えても、ナカの指は止まる気配がない。
でも、もうダメだと限界を感じた体も止まることはなくて。
すぐにキモチイイものが全身に駆け巡った。
「んん! やっ、ああっ!」
「ざーんねん」
ウルフは服を脱ぐとアレをアソコに押し付けてきた。
先っぽで入り口を確かめて、少しずつ入れてくる。
何もつけずに挿入するつもりだ。
それは無理、それ以上は止めてと意味を込めて睨んだ。
「おねだりして?」
「なん、で」
「トロ水あんの?」
「ないっ」
「んじゃ、俺の精子を代わりに使うしかねーよな?」
「っ」
「アキラ、早く」
ウルフは自分の手でしごきだした。
最初からゴムをつける気はなかった?って聞こうとしたけど、ここはそういう店だって思い出して、ようやく少しだけ頭が冷えた。
「……だして、ください」
「うんうん、じょーず」
「っうあ」
どんどんナニが中に入ってくる。
微妙に痛くてギュッとアソコがしまると、アレがビクビク震えた。
「うっ、あっ!」
まだ中に出されてる途中なのに、アソコがポッと熱くなる。
これは本当にマズイと理性が戻ったけど、すぐに飛んだ。
「アキラっ!」
「あああっ!」
奥まで入れられてチカチカする視界。
奥の当たってる場所がヤバイくらいに気持ちがいい。
もっとほしい。
もっと、もっと。
「なっ、んでぇ」
それなのにアレを抜いて、アソコの入り口をちょんと触れるだけ。
堪らずにウルフを見れば、ガンッと奥まで突き立てられた。
「俺がほしかった?」
「ああっ、うあっ! やだぁ!」
ほしかった場所にナニが届く。気持ちいい何かが押し寄せてくる。
「嫌ならそんな声出すなって。めっちゃ興奮すんだぞ、その声」
「……あっ、ダメ! イッちゃっ……んん!」
「もっとそれ、聞かせて。めちゃくちゃ興奮する」
「あああっ! あっ、やっ! イッたの!」
「っ……俺もイキそう。……出すぞ、中に、アキラの中に」
「やだっ、やだ! これ以上はやだっ!」
ビクンッとお互いのソコが震える。
その微かな動きですら気持ち良くて声が洩れた。
「んぅ」
息を整えてたらバチッと目が合った。
微笑みながら近づくウルフの顔。それに合わせて目を閉じた。
「俺の、アキラ」
ウルフはそう呟いて、口の中に舌を入れてきた。
ーーーーーー
そろそろダメかもしれない。
ウルフに何度も突かれながら、たまに戻る理性の狭間で、そう思った。
「ねっ、俺が一番?」
「うっ、あぅ」
「ちゃんと答えて? じゃないとやめてあげない」
「いちばんっ、だから! もうやだっ! やだ!」
「俺もアキラが一番っ、ずっといっしょにいよーなっ」
そうしてやっと終わった行為。
理性が戻ったのは行為から一時間後だった。
今回は長かった。
そんで今、ちょっぴり怒っている。
媚薬入りキャンディを食べさせられていたから。
内緒で食べさせたことが許せない。
怖いくらいにほしがり一直線だった。
セックス依存って単語が頭をよぎった。
媚薬入りキャンディが原因ってことに安心したけど、気分のイイモノじゃない。
「ご、ごめん」
私の怒りに気づいたウルフは、ベッドの上にちょこんと正座して謝ってくれた。
私もきちんと向かい合って笑顔で接客した。
「別に、仕事だからね」
「……うん」
お金を落としてくれるお客さんだもの。
ラインをこっちから引かないと、このままじゃウルフがのめり込んでくる。
本当にダメになる。
「……もう、怒ってない?」
シュンと落ち込んで、愛くるしい目で見られようとも、ガン無視。
ここの信念だけは曲げたらダメ。
「ごめんなさい」
曲げたら、ダメ。
「くぅーん」
「ああっ! ワンコっ!」
けっこう簡単に曲がった。
「よしよしよしよし!」
すぐに抱きついて頭をよしよしした。
相変わらず尻尾をバタバタと振っている。
おお、かわいいワンコ。私は何度も許してしまうよ。
「へへっ、俺ね、それも好き」
「よしよし好きなの?」
「うん!」
「じゃ、いっぱいしちゃう! よしよし!」
「うへへ」
暴れ狂う尻尾を含めてめっちゃかわいいから、ぎゅうって抱きしめた。
「俺ね、お土産を持ってきた!」
「お土産?」
「ちょっと待ってろ」
ウルフは私の腕から抜け出すと、床にある白い箱を手に取りベッドに戻った。
そしてその箱を開けて私に見せた。
「じゃーん」
「いちごのケーキ!? しかも丸いやつ!」
「ケーキ好きだろ?」
「あっあああ、ありがとうございますう」
「また泣いた!?」
この前のお菓子と同じ、転生前振りに見たいちごのケーキに感動した。
こんな贅沢をしていいのか、草生活に戻れるのか、ちょっと不安だ。
でもケーキに罪はない! 食べる、私は! カビが生えてても丸々食べる!
「一緒に食べようぜ」
「……は?」
「ご、ごめん。一人でドウゾ」
今日からのご飯にしよう。ケーキがご飯とか幸せかよ。
今日はイイ日だ。
幸せいっぱいでずっと笑顔でいられる。ウルフのおかけだ。
「ありがとう!」
「ケーキ一つで大げさ。安い雌だな、アキラは」
「いいの! ケーキ好きなの」
「喜んでくれんなら何でもいいや! 早くイチャイチャしよっ」
ケーキの箱を落とさないように慎重に床に置いて、ウルフの隣に横になった。
ウルフは嬉しそうに腕まくらをしてきた。
「俺ね、今、幸せ」
本当に幸せそうに言うんだもの。ここがどこか忘れたのか何なのか。
返答に詰まったけど、何も言わずに笑顔を向けた。
「やめるだろ?」
「……うん?」
「店だよ、店。俺が一番って言ってくれたし、ずっと一緒って約束したじゃん」
「……うん?」
「何すっとぼけてんだよ。手続きとかどうなんの? 今日終わる?」
あれれ? どんどん話が進展していくんだけど。
これって本気? それとも冗談?
いろんな意味で恐ろしいぞ。
「えっと、冗談だよね? ごめんね、真に受けちゃって、アハハ」
「は? 冗談なわけねーじゃん」
ウルフは真面目に言った。
「結婚しよう」
ちょっとほんと意味が分からなくて、笑顔で固まってしまった。
「俺と一緒にのんびり暮らそうぜ」
いよいよ何を言ってるのか分からなくて固まるしかなかった。
「おまえだって好きでやってるわけじゃないだろ? 人外専門とかマジで壊れるって。だからさっ、雄が付かねーようにこの一カ月頑張った」
「頑張った? 何を?」
「オオカミが惚れ込んでるから手を出したら殺すってウワサを流したんだ。嫌な交尾せずに済んだだろ? それにおまえから雄の匂いが消えた!」
何でこの一カ月が暇だったのか、ようやく分かった。
人外にもランクがあるって種馬さんが言ってたけど、こういうことね。
オオカミがどのくらいのランクになるのか分かんないけど、ここまでの影響力があるってことね。
なるほど、なるほど。
「あのね、ウルフ」
「ん?」
「私は仕事をやめるつもりは」
「ダメだ」
断りを入れる前に遮られてしまった。
それはそれは大変な怒り具合で。
ふぅっと息を吐いて、いっそのこと真実を伝えようと口を開いた。
「借金があるの。それを返済するまでは仕事は続ける」
「いくら?」
「五百万ジュエル」
「そのくらいなら何とかなる。俺が払うからおまえはやめる、分かった?」
そう言われても全然分かんない。
でも多分、ウルフは引く気がない。
やりたくなかったけど、これ以上は見てられない。
「ごめん、ちょっと」
ベッドから出で、部屋にある電話を手にした。事務所へかけるとマスターが出たから、「キャンセルお願いします」と伝えた。
「あら、いいの? 罰金で料金の倍額払ってもらうわよ」
「借金につけといてください」
「奴隷のくせに生意気ね。適当にハイハイ言ってりゃいいのに」
「アハハ」
マスターの言うことはごもっとも。
それが出来なくなったってことは、お互いが近付き過ぎたんだと思う。
お客さんと娼婦。
それだけの関係が拗れたら、あとはグダグタになる。
割り切ってくれると助かるけど、ウルフはそれを望まない。
私もうまくやれない。
それに私は奴隷だ。
ウルフは知らない。
知ったら嫌いになるに決まってる。
気持ち悪いって、手のひらを返すんだ。
「はい」
ウルフの服を渡した。何が?って不安そうにしてるウルフに笑顔を向けた。
「もう来ないで」
「えっ、えっ、何で?」
「あなたとお付き合いする気も結婚する気もありません。というか出来ません」
「だから何で? 何がダメ?」
「知らないよ。ほら、早く着替えて」
戸惑うウルフを促すと、ようやく自分の手で服を着た。でも今の状況を全然分かってなくてオロオロしている。私もウルフに背中を向けて、下着とワンピースを着ながら改めて言った。
「現実が見えたでしょ? もう来ないでね」
「……おれのこと一番って言った」
「商売です」
「……嫌だ」
「ウルフはお金を払って私を買う、それだけの関係です」
「……違う」
「違わないの」
「嫌だっ!」
後ろから抱きついてきたウルフにため息を吐いた。ぎゅうぎゅうに抱きしめてくるから、……やっぱり少し苦しい。
「仕事やめよ? なっ?」
「正攻法でどうぞ」
「身請けってやつすればいいんだろ?」
「出来るわけないじゃん」
「いや、できる! アキラのためなら何でもする! ケーキだって好きなだけ買ってやるし! だからさ、もう会わないって、んなこと言うなよ」
「ケーキも要らないし、身請けもいらない。もっと現実見ようね」
「やだ、やだよ、……俺には、アキラだけなんだって……」
「気のせいだよ」
「……捨てないで」
呟かれた言葉がガツンと心にきた。
でもこれ以上どうしようもなくて、だからこそ終わりなんだと思えた。
「好きな人がいるの」
「……へ?」
「だからウルフと一緒にいけない。ごめんなさい」
「……何だよそれ」
ウルフはようやく離れてくれた。
自由になった体を動かして、白い箱を手に取った。
「これ、返すね。いろいろありがとう」
ウルフにそれを差し出すと、乱暴にそれを取り上げて思い切り床に投げ付けた。
床に飛び散ったいちごのケーキをぼんやり眺めた。
「じゃーな」
子供がかんしゃくを起こしたように、乱暴に扉を閉めてウルフは出て行った。
その場にしゃがんで、床に飛び散ったケーキをかき集める。
砂ぼこりが混じってるけど、食べられる物だ。
しばらくこれで食い繋ごう。
何が起きても自由になるまで死ねないから。
「ウルフは何も知らないんだね。奴隷って何でも食べるんだよ。食べないと死んじゃうから。家畜と同じ……違うか。家畜以下なんだよ、私って」
黒い粒々の砂とほこりの混じった生クリームを指ですくって口にいれた。
ジャリジャリして舌触りは悪かったけど、やっぱり涙が出るほどおいしかった。
「いっぱい助けてくれた、いっぱいよくしてくれた、お花うれしかったのに……ごめんなさい」
自らの手で捨ててしまった。
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