【前世の記憶】と【現世の記憶】~元婚約者の前で、前世のご主人様を求めた話

くったん

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あの日、三人で楽しんだ日から皇子の様子が変わった……ということもなく、フィジーが転校してくる前のように、穏やかな日々を過ごしている。

皇子は、あの日々をなかったことにしたいのだと思った。私を殺したことをなかったことにして、一から仲を築こうとしているんだと。

虫のいい話だけど、私も皇子を殺した。お互いさまだ。これ以上を掘り下げても、この先の人生でイイコトなんて何もない。

「なぁ、アルザ。今度街へ行かないか?」

皇子にとって悪夢の日と同じように、中庭にレジャーシートを敷いてお昼を過ごしている。違うのは、あの女が居ないこと。私が皇子にひざ枕をしていること。

ーーようやく帰ってきた。

「街へ?」
「久しぶりに、……その、……ショッピングでもと……」
「それは嬉しいお誘いですわ。ぜひご一緒させていただきます」
「ほしいものはないのか?」
「……そうですね……」
「いや、やっぱりいい。行って選べ」
「皇子の知能を高める何か、ですかね?」
「言うなって言った!!」

子どもみたいに真っ赤になって叫ぶ皇子にクスクス笑って、キレイな髪を撫でた。

「あらあらごめんなさい。聞こえなかったのよ」
「絶対にウソだ!」
「皇子ったらウソを見破れるようになったのね!素晴らしい成長です!」
「そうやって俺をバカにする!」
「バカになどしていませんわ。皇子がかわいくて、ついイジメてしまいますの」
「かわっ、かわいいとか言うな」
「いいえ、かわいいですわ。とてもかわいいから甘やかしてしまうの」
「甘やかされた試しがないんだが!?」
「それは皇子がわたくしの甘さに気づいてないだけです」
「……うーん」

そういうことに気づける性格でもないくせに考え始めた。髪を撫でるのをやめて、皇子の顔の前に手を差し出すと、当たり前のように繋いできた。その手を自分の頬にくっつける。ネコが甘えるように、スリスリと。

「この手、大好きです」
「なう!?」
「いつかわたくしの体に触れる日がくるのね」
「だーかーらー、言い方!」
「ねぇ、皇子」
「何だよ」
「手だけならいいと、許可をいただいております」

誰に?という言葉はいらない。それで気づく。女心には疎いくせに、欲情に絡むことは察しが早い。目ざとい人。

「来いっ」
「まだお話は」
「いいから来い!」

皇子は立ち上がると私の手を引いた。歩くペースの早さで、どれだけ溜め込んでいたのか想像がつく。あの日からずっと……やっぱりお互いさま。何だかんだハマってるのは、皇子も同じ。寝取り、寝取られ、そこに興奮を覚えた。

皇子は誰も居ない教室に入ると、教室の内鍵を閉めて真っ赤な顔で見下ろしてきた。

「おまえのせいだっ」

まだそこの段階らしい。早く認めてしまえば楽になるのに。【俺は変わった性癖の持ち主です】って。でも、それを変えるのも面白いのかも。

本当に、飽きない人。

「ええ、そうですわね」

皇子の首に片腕を回して、ふぅと耳に息を吹き掛けた。それだけでビクンと跳ねる皇子にクスクス笑って、囁くように声をかけた。

「わたくしがイケナイ遊びを教えてしまったの。でも、皇子もその気があるのでしょう?」
「なっ、ない!」
「ウソはいけませんわ。だって、これ」

もう片方の手で皇子のアレに触れた。

「これは恥ずかしいことじゃないの。もっと素直になるべきよ」
「っ」
「どう、されたいの?」

私の問いに皇子は素直に応えた。荒い息をしながら忙しく制服と下着を脱いで、大きくなったそれを握らせてきた。

「それで?」
「それっ」
「わたくしはここからどうしたらいいのかしら?」

少しイジワル過ぎたと思ったけど、ここまできたら言わせたい。皇子の口から求める言葉を聞きたい。その言葉だけで熱く滾る自信がある。

だってもうこんなにも……

「ねっ、皇子。……早く。皇子が言ってくれないと……」
「……あ」
「なーに?」
「……あの日みたいにっ、……いかせてくれ」

蚊の鳴く声でそう言った皇子にブルリと震えたあと、自分の唇をペロリと舐めた。

「ええ、もちろんです」
「うあっ」

握っていただけなのに、先の方から透明な液がたくさん出ている。それを指に馴染ませながら、上下にしごいた。

静かな教室に響く音、皇子の息づかい、それに興奮した私の吐息、学校なのに、いやらしいことをしている。そう思うと、ジワリとアソコが濡れるのが分かった。

「っ、んぅ」

素直に悦ぶ皇子にクスリと笑って、赤に染まったかわいい頬に、自分の頬を擦り寄せた。皇子から自分の香水の匂いがした。前に少しだけ分けたけど、愛用してくれているとは思わなかった。

でも、それは、あの女の匂いが消えたということ。私だけの匂いに染まったということ。それがたまらなく嬉しかった。

「……熱い、わ。……とても、……熱い」

「んっ、ぅ、っ」

じんわりと染み出る汗とアソコの体液がもどかしくて、皇子の首に顔を埋めた。香水の匂いにクラクラしそうだ。

でも、今すぐほしいけど【手だけ】の約束だ。それに私は【自慰行為】も禁止されている。こんなにもナカが熱いのに。

そのジレンマをぶつけるように、皇子のアレを激しくしごいた。やっぱり耐え性のない皇子はすぐに果てた。

少し丸めた手のひらの中に、人肌よりも熱いものを感じる。熱い熱いそれは皇子が滾った証。いつかこれが私の中に……そう思うとゾクリときて、自分の唇をペロリと舐めた。

「はぁ、はぁ」

荒い息をしたままの皇子から離れて、その興奮が覚めてない目を見ながらの、体液が付いた手を口元に持っていく。赤い舌を出してそれをペロリと舐めた。

「あなたの味がする」

さっきの興奮はどこへやら、皇子はボンッと音が出そうなほど真っ赤になって、その顔を手で覆いながら、ズルズルと床に座り込んだ。かわいい反応にクスクス笑いながら、座り込んだ皇子の前にしゃがんだ。

「どうなさいましたの?」
「……別に」
「そうですか、わたくしがいやらしく見えたのね」
「言ってないし見えてない!」
「ねぇ、皇子」
「何も言うな!」
「……」
「言えよ!気になるだろ!」
「好きです、あなたのこと。じゃ、失礼します」

そう言ったあと、皇子を残してお手洗いに行った。汚れた手を洗い、ため息をはいて鏡を見る。皇子のことを何も言えないくらい真っ赤になってる自分がいた。それにビックリした。

だってそういうのは皇子の役目で、私はただ皇子で遊ぶ……そう、退屈しのぎ!浮気者にほだされたらダメ。皇子を手のひらで転がして遊ぶの。そう、それだけの話。

心を落ち着かせたあとにお手洗いから出ると、皇子がいた。私を見るなりキッと睨んで「置いて行くなよ!」と。

「え?」
「ほら行くぞ!」
「あっ、皇子」

強引に繋がれた手に引っ張られながら歩いていく。

「まだ昼休み終わってないからな。中庭で寝る」
「は、はぁ……?でしたらお一人で」
「枕がないと寝れないって言ってるんだ!察しろよ!」

中庭で寝るためにわざわざ私を待っていたってこと?残りのお昼休みも一緒に過ごそうって思ってくれたの?

「っ」

ぶわあっと全身が熱くなった。頭皮まで赤く染まってるんじゃないかと思うほど、熱くて熱くて。しかも何か変な汗まで!

違う、これは違う!浮気者にほだされてたまるか!どうせまた浮気をするんだ!またあんな痛みを……あんな思い、もう二度としたくない。

「まったく皇子ったら、まだ【坊や】ですものね」
「言い方!」

中庭に着いてシートの上に座る。

「ほら、おいで【坊や】」
「だーかーらー言い方って!」

とか何とか言いながらも皇子は素直に寝転んだ。いつものように髪を撫でる。ネコのように甘える皇子がかわいいから、もっと甘やかしたくなる。

「賢者タイムですの?」
「俺はいつだって賢者だ!」
「あら、皇子ったら。賢者は賢くないとなれませんのよ」
「どういうこと!?」
「皇子がなるとアホ賢者ね」
「もういい!知らん!」
「でも、それでいいのよ。あなたはあなたです。大丈夫です。わたくしは未来の妻ですもの。どこまでもお供しますわ」
「……毒舌妻のくせに」

皇子は起き上がると、近くに生えていたシロツメクサを摘んだ。それを慣れた手つきで丸めて、私に差し出した。やっぱり何が何だかな状況にポカンとしてたら、左手を掴んで、その薬指にシロツメクサの指輪をはめた。

「……あそこまで、……おまえを追い込んだこと、反省している。あの日をなかったことにも出来ないのも分かるし、でも……お互いさまだと思う。まぁ、だから……その、……これからは二人で……なんか、そーいうことだ!」

全然きまらない言葉。何が言いたいのかサッパリだし、大切なところは濁して終わりだし。でも、でもね、死んだ自分が戻ってきてるような気分だった。

この暗闇と傷を作ったのは、この人。私を殺したのも、この人。

傷つけたこの人が私の傷を埋める。

一気に埋められた訳じゃない。そんなんじゃ傷は消えない。消しちゃいけない。でもほんの少し、少しだけ、さっきよりもいくらかは、滑らかになったと、そう思った。

「……泣くなよ……」
「泣いてません!」
「強情な浮気者め」
「それはあなたです!」
「浮気はお互いさまだろ。でも、いいよ、俺は。もういいや」

何が?って聞く前に皇子はまたごろんと寝転んだ。

「おまえが居れば、もういいや」

今度は太ももにすり寄ってネコみたいにゴロゴロしている。とてもいとしくて、やっぱり自然と髪を撫でた。

もうなかったことに出来ないのに、皇子の言葉を信じることができる日が来るのか。そんな幸せな想いが咲く日が来るのか。今はまだ暗すぎて何も見えないけど。

そんな日が来るといいなと、願わずにいられない。

「そうね、これは、ただ、シロツメクサで遊んだけのお話ですわ」

【復讐】の上に咲いた【約束】のシロツメクサの指輪をはめた手で、私は皇子の頬に触れた。

【わたしを想って】

その言葉は、まだ怖くて言えなかった。


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