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わたしとアイツと報告ノート
6話
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今日が最後の休日だ。
明日は送別会で、明後日のお昼の便の飛行機で日本へ帰る。大きい荷物もすべて日本へ送ったし、荷作りも終わった。
本日付けでマイクとの契約が切れる。最後に観光デートしようと思ったけど、これ以上引っ掻き回すわけにもいかず、特にやることもないので、ホテルに引きこもってることにした。
いつもよりマイクの視線を感じる。距離も少しずつ狭くなってきている気もする。例えばソファーならば、昨日までは端と端に座るのが当たり前だったのに、端に座る私のすぐ横に腰掛けてくるのだ。そしてチラチラと視線を。
ソファーでくつろぎながら暇つぶしの映画を見てるのに。いい加減、もの申してやる。
「何か用でもあるの?」
「えっ、えっ!?」
しつこいくらいチラチラ見てたのはマイクなのに、何を驚くことがあるんだ。
「映画を見てるときにそれをされるの、かなりウザイ」
マイクに対して、罪悪感しか抱けなくなっているせいで、物言いがキツイものになっている。俗に言う八つ当たりだ。
それをマイクも感じているせいで、余計にオドオドしているんだと思う。でも、全部が全部、罪悪感で死にそうなんだもの。しょうがないじゃないか。
「ずっと見てるでしょ。気がつかないとでも思ってんの」
「えっと、その」
「何よ、ハッキリ言いなさいよ。めんどくさい男は大嫌いなんだけど」
「……めんどくさい……大嫌い……」
あからさまにシュンと落ち込んだマイクを鼻で笑ってやったら、肩を落として負のオーラを纏ってしまった。知らん顔して映画を見てると、観念したマイクが声を掛けてきた。
「あの」
「何よ」
「……ずっと、渡したい物があって」
「まだ懲りずに貢ぐつもりなの?」
呆れながらマイクを見ると、意外な物を手に持っていた。それとマイクを交互に見てると、すごく申し訳なさそうに、やっぱりオドオドしながら、これを買った経緯を説明してきた。
「昨日たまたま露店で見つけて、サキに似てかわいいから、つい買ってしまって。……でも、その、……サキには安物過ぎて、……こんなの、渡せなくて」
マイクが手に持っているのは、キツネのマスコットが付いた二つのストラップ。一個はピンクのリボンを付けていて、もう一個はブルーのリボンを付けている。
観光地に売ってそうなご当地ストラップを、しかもお揃いのやつを男に貰って、無邪気にはしゃげる歳じゃない。でも、その想いを深く考えることが出来る歳になった。
昨日からずっと渡したくて、でも私がブランド物とか高価な物を欲しがる女だから不安で渡せなくて。何だ、そのジレンマ。
「私はこっちね」
マイクの手からピンクのリボンが付いたキツネのストラップを取り、自分のスマホに付けた。
その様子をポカンと見ていたマイクにスマホを見せながら、少し照れくさいけど、お礼を言った。
「何て言うか、高価な物より嬉しい。あんたの気持ちが伝わるわ。……ありがとう」
マイクはフリーズしていた。それもそれで恥ずかしいので、マイクの手からストラップを取り上げて、テーブルに置いてあったマイクのスマホに付けてやった。
それでも何も言わずポカンとしたままだから、スマホをマイクに投げ付けてやった。
「この私が付けてあげたんだから、あんたもお礼くらい言いなさいよ!」
「……へっ!? あっ、あっ」
「もう知らない!」
私はガキかって思いながらも映画に視線を戻した。情けないやら恥ずかしいやら映画どころじゃない。何なんだ、何でストラップごときでこんな思いをしなくちゃならんのだ。
「……照れてるんですか?」
「この私があんたなんかに照れるわけないでしょう」
「そうですね。ありがとうございます。ぼくも嬉しいです」
本当に嬉しそうにスマホに付けたストラップを見ていた。何と言うか、それを見てやっと平常心に戻れた。
「それにカメラとか盗聴器とか付けてんじゃないでしょうね」
「……はっ!?」
「その手があったみたいな顔するのやめて。やっぱり何か企んでんじゃないの?」
「何も企みませんよ!」
「ほんとかしら。何かもう疑わずにいられないんだけど」
「そ、そりゃ、少しは……」
「何を企んでるのよ」
「あっ、あなたと、そのっ」
「私と何をしたいの? やっぱり体でも狙ってんのかしら? いやーね、男って。やることしか考えてないんだから」
「違います!!」
あまりの大声にびっくりして、でもマイクは大事そうにストラップを抱えながら私と向き合った。
「あなたを守ると約束しました! だからあなたが嫌がることは絶対にしない! あなたの許可なく触れたりしない! ぼくのことを疑うのも、財布代わりにするのも、あなたの好きにしていいです! いくらだって騙されてあげます! でも、この約束だけは信じてください!」
その言葉が嘘か本気かどうかなんてすぐに分かる。間違いなく本気の想い。マイクはこういう男なんだ。でも、相手が本気だからこそ最後まで性悪をやり通す。
「……絶対なんだ?」
「絶対です!」
「私が、ここで、何をしても、襲ったりしない?」
「な、何を、しても?」
「我慢出来るんでしょ?」
さっきの勢いはどこへやら、急にオドオドし始めたマイクに詰め寄った。そんな私にマイクは後退り。それでも構わず詰め寄って、ソファーの端まで追い詰めてやった。
「あっ、あのっ」
「なに?」
「そっ、そーいうことじゃ……」
「どーいうことぉ?」
それでもジリジリと詰め寄ると、マイクは距離を取ろうと徐々に倒れていく。結局ソファーに倒れる形になったマイクのお腹に股がって、ニヤニヤしながら髪の毛に触れた。柔らかい毛質がちょっと癖になった。
「猫っ毛なの? 触り心地いいわね」
「もっ、もう! そっ、そーやってぼくで遊ばないで下さい!」
「疑うのも財布代わりにするのも、あの約束さえ信じれば、私の好きにしていいんでしょ?」
「揚げ足も取らないで!」
「でも我慢できるんでしょ? それとも負けそうなの?」
「負けません! 我慢できます!」
「ほんとかなぁ?」
少し誘惑すればマイクごとき簡単に食い付いてくるはず。そんで、ほらウソじゃんって罵って遊んでやろう。
「ほんとに我慢、できるのかなぁ」
「できっます」
「ほんとにほんとかなぁ」
「ほんとですっ」
「ねぇ、ほんとうにぃ?」
「っ」
いくら誘っても乗って来ないからモヤモヤしてきた。マジで触らない男とか初めてだ。この私がここまでしてるのに……腹立つ野郎だ。
「もういい」
マイクにこれ以上時間を使うのも嫌だし、映画の続きを見ることにした。でも、マイクの手が腕を掴んできて、グッと引っ張られるままマイクの腕の中へ。
マイクの温もりが嫌でも伝わってきて、拒否する気持ちが萎えてしまった。
「……ふれていいのなら、……さわりたいです」
「誰もいいなんて言ってないわよ」
「言ってました」
「幻聴じゃないの」
「サキ、あったかいです」
「会話が噛み合ってないんだけど」
「ぼくにはあなただけです」
「何が」
「あなたがいればもうなにっっ! ああっ、こんなときに社長がっ! 頭が痛いっ、けど、イヤだ、出たくない! 死ぬほどの勇気を出してせっかく抱きしめることが出来たのに! うぐうう、痛い痛い! イヤだイヤだイヤだ! この温もりを離したくないんだああああ!でも痛いいいい! やーーめーーてーー!!」
まさに【混沌】ともいえる光景が目の前で繰り広げられている。すごい、これぞまさしく自分との戦い。でも気味が悪いから止めてあげようと思う。
「えっと、頭が痛むのなら病院に……」
「イヤです! やっとなんです! もっとあなたに触れていああああ! 頭が痛いいいい!」
「いや、何か、その、いろいろと大丈夫じゃなさそうだし、病院行こう?」
「違います! これは社長とのあれなんですうう!」
「で、でも……」
「あとでまた抱きしめてもいい!? 気の済むまで触れていい!? うあああ!」
「マイクの好きにしていいから、早く何とかしなって。混沌し過ぎて私の精神もついていけないの。見てる方もけっこうキツイね、これ」
「約束ですからね! ああっもう! 社長ってば今日に限ってしつっこい!!」
社長の正体お前だぞ。お前がそんなんだからしつっこいんだぞって心の中でツッコミを入れつつも、ずっとマイクの腕の中にいた。
「距離を置けと何度言えば分かる! その女は危険なんだ!」
「無理です! ぼくは本気です! 何回も言ってるでしょう!?」
「何でその女に固執する!? もっとマシな女はいくらでも居るだろう!」
「この世界にサキは一人だけです! 彼女だから本気なんです!」
「そいつに騙されてるんだぞ!」
「……社長」
「その女はお前の想いを裏切っている。許されないことなんだ」
「それでもいい。騙されたって、裏切られたって、そばにいてくれるのなら何だっていい!」
「お前を解雇するぞ」
「……社長、それは……」
「俺は本気だ」
「今までお世話になりました」
「何でそうなるんだよ! 女と俺、天秤にかけて勝つのは俺だろうが!」
「……ぷっ、社長ってば、どんだけぼくのことが好きなんですか。でもヤキモチ妬かなくても大丈夫ですよ。社長も大事な人ですからね」
「そーいうことじゃないんだあああ!!」
「うわっ、うるさっ! 大声で叫ばないで下さいよ。頭がキーーンってします」
「もういい! お前じゃ話にならん! 俺と今すぐ代われ!」
「代わる? 何の話をして……っ! 頭がキーーンって! 痛いいいい……いやっ、イヤだ! メインはぼくだ! ぼくなんだ! 彼女との時間はっ、誰にも譲らないっ!」
「マイクウウウ!? この俺を否定するのかあああ!」
「うおおああああ!! まーーけーーなーーいーー!!」
「うおおああああ!! ゆーーずーーれーー!!」
何の話をしているのかモロバレしてるんだけど何も聞こえていてないフリをして、映画の続きを見ることにした。
ありったけの声で叫ぶマイクと社長がやかましくて、映画の音声が聞こえないから、買っておいたイヤホンを付けて映画を見ていた。
「……」
映画が終わった頃には、真っ白に燃え尽きたマイク兼社長がソファーにもたれ掛かってスヤスヤと眠っていた。
「あっ、日付変わった。……ってことは、契約終了。私の勝ちっ」
結局、男女ひとつ屋根の下で暮らしてもR18発展しなかったから、今回のイタリア生活が何事もなく無事に終わって本当に良かったと、心の底から思いました。
ここまで引っ張ったのに、こんなサッパリとした終わり方でいいのか分からないけど……
明日は送別会で、明後日のお昼の便の飛行機で日本へ帰る。大きい荷物もすべて日本へ送ったし、荷作りも終わった。
本日付けでマイクとの契約が切れる。最後に観光デートしようと思ったけど、これ以上引っ掻き回すわけにもいかず、特にやることもないので、ホテルに引きこもってることにした。
いつもよりマイクの視線を感じる。距離も少しずつ狭くなってきている気もする。例えばソファーならば、昨日までは端と端に座るのが当たり前だったのに、端に座る私のすぐ横に腰掛けてくるのだ。そしてチラチラと視線を。
ソファーでくつろぎながら暇つぶしの映画を見てるのに。いい加減、もの申してやる。
「何か用でもあるの?」
「えっ、えっ!?」
しつこいくらいチラチラ見てたのはマイクなのに、何を驚くことがあるんだ。
「映画を見てるときにそれをされるの、かなりウザイ」
マイクに対して、罪悪感しか抱けなくなっているせいで、物言いがキツイものになっている。俗に言う八つ当たりだ。
それをマイクも感じているせいで、余計にオドオドしているんだと思う。でも、全部が全部、罪悪感で死にそうなんだもの。しょうがないじゃないか。
「ずっと見てるでしょ。気がつかないとでも思ってんの」
「えっと、その」
「何よ、ハッキリ言いなさいよ。めんどくさい男は大嫌いなんだけど」
「……めんどくさい……大嫌い……」
あからさまにシュンと落ち込んだマイクを鼻で笑ってやったら、肩を落として負のオーラを纏ってしまった。知らん顔して映画を見てると、観念したマイクが声を掛けてきた。
「あの」
「何よ」
「……ずっと、渡したい物があって」
「まだ懲りずに貢ぐつもりなの?」
呆れながらマイクを見ると、意外な物を手に持っていた。それとマイクを交互に見てると、すごく申し訳なさそうに、やっぱりオドオドしながら、これを買った経緯を説明してきた。
「昨日たまたま露店で見つけて、サキに似てかわいいから、つい買ってしまって。……でも、その、……サキには安物過ぎて、……こんなの、渡せなくて」
マイクが手に持っているのは、キツネのマスコットが付いた二つのストラップ。一個はピンクのリボンを付けていて、もう一個はブルーのリボンを付けている。
観光地に売ってそうなご当地ストラップを、しかもお揃いのやつを男に貰って、無邪気にはしゃげる歳じゃない。でも、その想いを深く考えることが出来る歳になった。
昨日からずっと渡したくて、でも私がブランド物とか高価な物を欲しがる女だから不安で渡せなくて。何だ、そのジレンマ。
「私はこっちね」
マイクの手からピンクのリボンが付いたキツネのストラップを取り、自分のスマホに付けた。
その様子をポカンと見ていたマイクにスマホを見せながら、少し照れくさいけど、お礼を言った。
「何て言うか、高価な物より嬉しい。あんたの気持ちが伝わるわ。……ありがとう」
マイクはフリーズしていた。それもそれで恥ずかしいので、マイクの手からストラップを取り上げて、テーブルに置いてあったマイクのスマホに付けてやった。
それでも何も言わずポカンとしたままだから、スマホをマイクに投げ付けてやった。
「この私が付けてあげたんだから、あんたもお礼くらい言いなさいよ!」
「……へっ!? あっ、あっ」
「もう知らない!」
私はガキかって思いながらも映画に視線を戻した。情けないやら恥ずかしいやら映画どころじゃない。何なんだ、何でストラップごときでこんな思いをしなくちゃならんのだ。
「……照れてるんですか?」
「この私があんたなんかに照れるわけないでしょう」
「そうですね。ありがとうございます。ぼくも嬉しいです」
本当に嬉しそうにスマホに付けたストラップを見ていた。何と言うか、それを見てやっと平常心に戻れた。
「それにカメラとか盗聴器とか付けてんじゃないでしょうね」
「……はっ!?」
「その手があったみたいな顔するのやめて。やっぱり何か企んでんじゃないの?」
「何も企みませんよ!」
「ほんとかしら。何かもう疑わずにいられないんだけど」
「そ、そりゃ、少しは……」
「何を企んでるのよ」
「あっ、あなたと、そのっ」
「私と何をしたいの? やっぱり体でも狙ってんのかしら? いやーね、男って。やることしか考えてないんだから」
「違います!!」
あまりの大声にびっくりして、でもマイクは大事そうにストラップを抱えながら私と向き合った。
「あなたを守ると約束しました! だからあなたが嫌がることは絶対にしない! あなたの許可なく触れたりしない! ぼくのことを疑うのも、財布代わりにするのも、あなたの好きにしていいです! いくらだって騙されてあげます! でも、この約束だけは信じてください!」
その言葉が嘘か本気かどうかなんてすぐに分かる。間違いなく本気の想い。マイクはこういう男なんだ。でも、相手が本気だからこそ最後まで性悪をやり通す。
「……絶対なんだ?」
「絶対です!」
「私が、ここで、何をしても、襲ったりしない?」
「な、何を、しても?」
「我慢出来るんでしょ?」
さっきの勢いはどこへやら、急にオドオドし始めたマイクに詰め寄った。そんな私にマイクは後退り。それでも構わず詰め寄って、ソファーの端まで追い詰めてやった。
「あっ、あのっ」
「なに?」
「そっ、そーいうことじゃ……」
「どーいうことぉ?」
それでもジリジリと詰め寄ると、マイクは距離を取ろうと徐々に倒れていく。結局ソファーに倒れる形になったマイクのお腹に股がって、ニヤニヤしながら髪の毛に触れた。柔らかい毛質がちょっと癖になった。
「猫っ毛なの? 触り心地いいわね」
「もっ、もう! そっ、そーやってぼくで遊ばないで下さい!」
「疑うのも財布代わりにするのも、あの約束さえ信じれば、私の好きにしていいんでしょ?」
「揚げ足も取らないで!」
「でも我慢できるんでしょ? それとも負けそうなの?」
「負けません! 我慢できます!」
「ほんとかなぁ?」
少し誘惑すればマイクごとき簡単に食い付いてくるはず。そんで、ほらウソじゃんって罵って遊んでやろう。
「ほんとに我慢、できるのかなぁ」
「できっます」
「ほんとにほんとかなぁ」
「ほんとですっ」
「ねぇ、ほんとうにぃ?」
「っ」
いくら誘っても乗って来ないからモヤモヤしてきた。マジで触らない男とか初めてだ。この私がここまでしてるのに……腹立つ野郎だ。
「もういい」
マイクにこれ以上時間を使うのも嫌だし、映画の続きを見ることにした。でも、マイクの手が腕を掴んできて、グッと引っ張られるままマイクの腕の中へ。
マイクの温もりが嫌でも伝わってきて、拒否する気持ちが萎えてしまった。
「……ふれていいのなら、……さわりたいです」
「誰もいいなんて言ってないわよ」
「言ってました」
「幻聴じゃないの」
「サキ、あったかいです」
「会話が噛み合ってないんだけど」
「ぼくにはあなただけです」
「何が」
「あなたがいればもうなにっっ! ああっ、こんなときに社長がっ! 頭が痛いっ、けど、イヤだ、出たくない! 死ぬほどの勇気を出してせっかく抱きしめることが出来たのに! うぐうう、痛い痛い! イヤだイヤだイヤだ! この温もりを離したくないんだああああ!でも痛いいいい! やーーめーーてーー!!」
まさに【混沌】ともいえる光景が目の前で繰り広げられている。すごい、これぞまさしく自分との戦い。でも気味が悪いから止めてあげようと思う。
「えっと、頭が痛むのなら病院に……」
「イヤです! やっとなんです! もっとあなたに触れていああああ! 頭が痛いいいい!」
「いや、何か、その、いろいろと大丈夫じゃなさそうだし、病院行こう?」
「違います! これは社長とのあれなんですうう!」
「で、でも……」
「あとでまた抱きしめてもいい!? 気の済むまで触れていい!? うあああ!」
「マイクの好きにしていいから、早く何とかしなって。混沌し過ぎて私の精神もついていけないの。見てる方もけっこうキツイね、これ」
「約束ですからね! ああっもう! 社長ってば今日に限ってしつっこい!!」
社長の正体お前だぞ。お前がそんなんだからしつっこいんだぞって心の中でツッコミを入れつつも、ずっとマイクの腕の中にいた。
「距離を置けと何度言えば分かる! その女は危険なんだ!」
「無理です! ぼくは本気です! 何回も言ってるでしょう!?」
「何でその女に固執する!? もっとマシな女はいくらでも居るだろう!」
「この世界にサキは一人だけです! 彼女だから本気なんです!」
「そいつに騙されてるんだぞ!」
「……社長」
「その女はお前の想いを裏切っている。許されないことなんだ」
「それでもいい。騙されたって、裏切られたって、そばにいてくれるのなら何だっていい!」
「お前を解雇するぞ」
「……社長、それは……」
「俺は本気だ」
「今までお世話になりました」
「何でそうなるんだよ! 女と俺、天秤にかけて勝つのは俺だろうが!」
「……ぷっ、社長ってば、どんだけぼくのことが好きなんですか。でもヤキモチ妬かなくても大丈夫ですよ。社長も大事な人ですからね」
「そーいうことじゃないんだあああ!!」
「うわっ、うるさっ! 大声で叫ばないで下さいよ。頭がキーーンってします」
「もういい! お前じゃ話にならん! 俺と今すぐ代われ!」
「代わる? 何の話をして……っ! 頭がキーーンって! 痛いいいい……いやっ、イヤだ! メインはぼくだ! ぼくなんだ! 彼女との時間はっ、誰にも譲らないっ!」
「マイクウウウ!? この俺を否定するのかあああ!」
「うおおああああ!! まーーけーーなーーいーー!!」
「うおおああああ!! ゆーーずーーれーー!!」
何の話をしているのかモロバレしてるんだけど何も聞こえていてないフリをして、映画の続きを見ることにした。
ありったけの声で叫ぶマイクと社長がやかましくて、映画の音声が聞こえないから、買っておいたイヤホンを付けて映画を見ていた。
「……」
映画が終わった頃には、真っ白に燃え尽きたマイク兼社長がソファーにもたれ掛かってスヤスヤと眠っていた。
「あっ、日付変わった。……ってことは、契約終了。私の勝ちっ」
結局、男女ひとつ屋根の下で暮らしてもR18発展しなかったから、今回のイタリア生活が何事もなく無事に終わって本当に良かったと、心の底から思いました。
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