【R18】わたしとアイツと腐った純愛

くったん

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わたしとアイツと両親

 5話③

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「キザね」
 もうやめてくれとテーブルをどんどん叩く。でも悪魔親子の追撃戦が始まった。
「聞いてたこっちが恥ずかしいわ」
「勇樹ってばかわいいでしょ!」
「咲希はロマンチストだからキザな男……というかクドい男が好きよね。お母さんには分かんないわ」
「えー、どうせなら夢を見せてくれる男がいいじゃん。非現実を現実にしてくれるなんて最高じゃない?」
「咲希のそういうところ、中世の傲慢なお嬢様みたいだわ。いっそのこと王子様とお城にでも住んでみたらどう?似合うわよ、いろいろな意味で」
「はぁ、お城が自宅とか憧れちゃう! 王子様と一緒にお城で暮す、か。それもいいなぁ……」
「それじゃあ夢見るお姫様、マティーニをいただけるかしら」
「うん、ちょっと待っててね!」
 カウンター裏に戻ったんだろう、隣にあった咲希の気配が遠のく。いつまでもこうしてるわけにもいかず、顔を上げようとしたらぐっと肩を抱かれた。
「おやおやぁ、お目覚めですか、王子様」
「いやマジでやめてくださいっす」
「かわいいお姫様がお城をご所望していますわよ」
「……城って買えるんすか?」
「買えるわよ。そのためにも頑張ってのし上がらないとね、勇樹君」
「……のし上がる?」
「そうよ。あなたは平も平の下っ端のアルバイトから私の会社に入るの。今いる奴らのためにも贔屓はしない。あなたの実力でここまでのし上がりなさい。それが出来たら会社丸ごとくれてやるわ」
 お袋さんは葉巻に火をつけてふうっとうまそうに吸っている。俺としては全然うまくない話だ。だってコネ入社みたいなもんだと思ってたし。むしろ跡取り息子的なポジションかと……
「でも叩き込むって……」
「叩き込むけど意味が違う。直々にとは言ってない」
「……ああ、そーいう……」
「学業とアルバイトの両立、きっと大変でしょうけど、咲希にやれたんだから勇樹君もやれるわよ。まっ、頑張ってね」
「どうも」
 まるで興味なさそうな応援ありがとうございますの意味を込めてお辞儀をした。
 兎にも角にも実力勝負ってんなら負けてらんねぇ。絶対にテッペン取ってお袋さんをギャフンと言わせて……、ん?そもそも、何の仕事?
「あの」
 俺が質問する前に店の扉が開いた。なぜかうちの両親がいた。
「お待たせ! 俺はいつもの!」
「待たせてごめんなさいね。私は……そうね、りんごジュースをくださいな」
 親父もお袋も会釈と注文をしながら店に入り、当然のごとく咲希のお袋さんの隣に座る。
「話は終わったわ。勇樹君はうちがもらうわよ」
「あら、まぁ!」
「そうか、荒波に乗っかるか。まっ、それも男の人生だ。お前がどうなってもお父さんはお前の味方だぞ」
 俺に話す前に両親と話し合ってたらしい。親のリアクションを見る限り、こうなることは予想済みってことか。それはそれで話の手間が省けていいんだけども、……ってか仕事は何なの?
「あの」
「へい、お待ち!」
 改めて質問しようとしたら今度は咲希が声を被せてきた。お袋さんの頼んだ酒、親父にウイスキー、お袋にりんごジュースを差し出した。この仕事の早さよ。……で、仕事ってなに?
「あの」
「で、結果は」
 咲希のお袋さんが声を被せてきた。だったらもういいやと沈黙を選んだ。
「妊娠6周目ですって」
「いやぁ、この歳で我が子を授かるとは……お恥ずかしい!」
 気のせいでなければお袋と親父がとんでもねえことを言った気がする。でも気のせいだと思う。まさかそんな……まっさかぁ!
「きゃーっ!おめでとう、ママ、パパ!」
「おめでとう。これで藤森家も安泰ね」
 そうか気のせいじゃなかったか。とうとう藤森家に子どもが、つまり俺に弟か妹のどちらかが出来るわけだ。
「今さらっ!」
 またテーブルに突っ伏したら隣にいるお袋さんが肩を叩いてきた。やめろ、今の俺は荒んでいる。
「お盛んよね」
「いやほんとやめてくれるかな!?」
「お父さん、まだまだ息子には負けんぞ!」
「ほんとそういうのやめてくれるかな、くそ親父!」
「お父さん、絶倫だものね」
「やめてって言ってるよね、くそば……閣下様!」
「この前、ママのことクソババアって言ってたよ。実はまだ録音してあるの」
「ほんっと咲希はかわいい悪魔だよ、こんちくしょう!」
 嘆く俺を見て大人達がニヤニヤしてる。もういやだ、こんな大人になりたくないとしょぼくれてると遠くのテーブル席からヤジが飛んできた。
「俺たちの咲希ちゃんを奪った罰だ!」
「そうだそうだ!」
「何なら俺に乗り換えてもいいんだぞ、咲希ちゃん!」
 常連さん達のたわ言に俺が何かを言う前に咲希がハッキリと毒で返した。
「お断りよ。私は、今も、これからも、一緒に進むべき人は勇樹って決めてるの。勇樹じゃないと無理、……っていうか、その不細工な顔面を変えて出直してきてくれるかしら」
 毒攻撃を喰らった常連さんは手で顔を押さえた。
「……しゅ、しゅごいっ」
 だと思った。
「う、羨まし過ぎるぜ……」
 この店は変態の巣窟みたいだ。
「つ、つーかさ、その美人様って……咲希ちゃんのお母さんなんだろ?」
「うん。私のお母さん」
「いっ、一緒にどうっすか?」
「黙れ糞野郎」
「くっ! あそこが痺れる!」
 お袋さんの痺れるお言葉にあそこを押さえてうずくまったクソ野郎。変態の巣窟どころか下品の巣窟だ。
 でも品のない変態達はここぞとばかりに咲希とお袋さんに絡む。それはもうしつこいほどに。そこにいつの間にか店に来ていた親父さんも、親父さんのライバルであるマスターも交ざって、悪魔親子(ドS)VS変態野郎(ドM)の無駄な戦いが始まり、何かもうやってられなくなった俺は質問することを諦めて立ち上がった。
「俺、帰るわ。明日学校だし」
 俺の声に気づいてくれたのは端っこのテーブルに避難した両親だけ。親父はお袋のお腹を擦ってはニコニコしていた。
「お兄ちゃん、気をつけて帰るんでちゅよ」
「やだ、パパったら。勇樹、気をつけて帰るんでちゅよ」
「もう、ママったら!」
 クソほど仲良しな両親に冷めた視線を送り店の扉を開ける。外は生ぬるい風が吹いていて、でも何かすっげぇ……
「……寒い。……そうか、これが……寂しいってことか……」
 今なら温もりを求めた咲希の気持ちがすごく分かる。分かりたくもねぇのに。
「……だから、仕事って何なんだよ。誰か俺の話を聞いてくれよ、お願いだから……」
 俺の独り言は夜の街のざわめきにかき消された。


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