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1章 長い長いプロローグ(後編)
飛んでいった想い
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ジョージからもらったお花は、カンパニュラという花だった。鐘のような形をしたかわいい花だと聞いて図鑑で調べようと思ったけどやめた。どんな花か咲くのを待つのも一つの楽しみだ。
種まきの時期は「いつでもいい」と言われたから、誕生日の翌日に新しい花壇を作って種をまいた。新しい命が増えることに喜びを感じた。
「んー……今日もいい天気!」
誕生日から早いもので一ヶ月ちょっと。もうすぐ四月だというのに、朝はまだ肌寒い。
花壇の水やりを終えて今度は草を取る。取っても取ってもすぐに生えるから、花の世話は面倒だと思う。でも、そこがいい。
「おはよう、お猫様」
「ランディ、おはよう」
いつからか始めたランディの早朝ランニング。今のところ毎日続けてるおかげか、ランディの背も体も大きくなった気もする。私はちっとも変わらないのに。
「草むしり、手伝うよ」
「ありがとう」
だったら一息つこうと顔を上げた。ぐっと背を伸ばして空を見る。真っ青な空に、ふわふわの白い雲。白く薄い月。
「あ」
青に映える白く薄い月が何だか綺麗で見とれた。
「どうしたの?」
「月が……」
「月?」
空を仰ぎ見るランディを見る。月を見たランディは私に笑顔を向けた。
「綺麗だね」
私に対して言われたわけじゃないのに、心がぎゅうって締め付けられる。もっと言われたいって、好きだって、心が暴れる。
「さーて、さっさと終わらせよう」
草取りで心を誤魔化した。
好きって不思議だ。他の気持ちと違う。こんなにも好きでいっぱいなのに、素直に伝えられない。バレたくない。秘密にしてたい。
それでも、伝えたい。
「ねぇ、お猫様」
「なに」
「名前を考えたんだ」
「名前?お花の?」
「きみの」
ランディが何を言ってるのか分からなかった。お猫様は、お猫様だ。お猫様が私の名前だ。
「お猫様はお猫様だよ?」
「あー……そうなんだけどね、何ていうか、ニックネームみたいな?」
「にっくねーむ?」
「うーんと、……二つ名的な?」
「ふたつな……」
ふたつなの意味は分かんないけど、何かカッコいい感じがする。
「ふむ、よかろう!我にふたつなを与えたまえ!」
「意味分かってないのに何でそれっぽいキャラに切り替えるのさ」
「御託はいい、早く与えるのだ!」
「……ハル」
「はる?」
何かいまいちピーンッとこなくて、首をかしげてしまった。リアクションの薄さに少しむくれたランディが名前の由来を教えてくれた。
「春は生物の動き始める時期だろ。命の始まりで命の再来、厳しい冬が訪れても春はやってくる。ゆっくりだけど厳しい寒さは温もりに変わる。どんなに寒くつらくても、春の陽射しのような心を忘れずに……いてほしい……と、思って……」
耳まで真っ赤になったランディ。それに釣られて私も熱くなった。
ハル、ハル、ハル。
心に刻み込む。
ハル、ハル、ハル。
絶対に忘れられないものが増えた。
「ランディ」
「なに」
「ピーンッときた!」
「ほんとかなぁ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「ランディ」
「ん?」
「すきだよ」
ぽろりと出た想い。
私の素直な想い。
だけど困ったや。
「ん?何か言った?」
「なーんにも!」
さーっと吹いた風に乗って、どこかへ飛んでいったらしい。
種まきの時期は「いつでもいい」と言われたから、誕生日の翌日に新しい花壇を作って種をまいた。新しい命が増えることに喜びを感じた。
「んー……今日もいい天気!」
誕生日から早いもので一ヶ月ちょっと。もうすぐ四月だというのに、朝はまだ肌寒い。
花壇の水やりを終えて今度は草を取る。取っても取ってもすぐに生えるから、花の世話は面倒だと思う。でも、そこがいい。
「おはよう、お猫様」
「ランディ、おはよう」
いつからか始めたランディの早朝ランニング。今のところ毎日続けてるおかげか、ランディの背も体も大きくなった気もする。私はちっとも変わらないのに。
「草むしり、手伝うよ」
「ありがとう」
だったら一息つこうと顔を上げた。ぐっと背を伸ばして空を見る。真っ青な空に、ふわふわの白い雲。白く薄い月。
「あ」
青に映える白く薄い月が何だか綺麗で見とれた。
「どうしたの?」
「月が……」
「月?」
空を仰ぎ見るランディを見る。月を見たランディは私に笑顔を向けた。
「綺麗だね」
私に対して言われたわけじゃないのに、心がぎゅうって締め付けられる。もっと言われたいって、好きだって、心が暴れる。
「さーて、さっさと終わらせよう」
草取りで心を誤魔化した。
好きって不思議だ。他の気持ちと違う。こんなにも好きでいっぱいなのに、素直に伝えられない。バレたくない。秘密にしてたい。
それでも、伝えたい。
「ねぇ、お猫様」
「なに」
「名前を考えたんだ」
「名前?お花の?」
「きみの」
ランディが何を言ってるのか分からなかった。お猫様は、お猫様だ。お猫様が私の名前だ。
「お猫様はお猫様だよ?」
「あー……そうなんだけどね、何ていうか、ニックネームみたいな?」
「にっくねーむ?」
「うーんと、……二つ名的な?」
「ふたつな……」
ふたつなの意味は分かんないけど、何かカッコいい感じがする。
「ふむ、よかろう!我にふたつなを与えたまえ!」
「意味分かってないのに何でそれっぽいキャラに切り替えるのさ」
「御託はいい、早く与えるのだ!」
「……ハル」
「はる?」
何かいまいちピーンッとこなくて、首をかしげてしまった。リアクションの薄さに少しむくれたランディが名前の由来を教えてくれた。
「春は生物の動き始める時期だろ。命の始まりで命の再来、厳しい冬が訪れても春はやってくる。ゆっくりだけど厳しい寒さは温もりに変わる。どんなに寒くつらくても、春の陽射しのような心を忘れずに……いてほしい……と、思って……」
耳まで真っ赤になったランディ。それに釣られて私も熱くなった。
ハル、ハル、ハル。
心に刻み込む。
ハル、ハル、ハル。
絶対に忘れられないものが増えた。
「ランディ」
「なに」
「ピーンッときた!」
「ほんとかなぁ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「ランディ」
「ん?」
「すきだよ」
ぽろりと出た想い。
私の素直な想い。
だけど困ったや。
「ん?何か言った?」
「なーんにも!」
さーっと吹いた風に乗って、どこかへ飛んでいったらしい。
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