目が覚めたら【呪いの首輪】と【呪いのおパンツ】をつけられていたけど、これをやった犯人は誰ですか?

くったん

文字の大きさ
8 / 55
1章 長い長いプロローグ(後編)

飛んでいった想い

しおりを挟む
ジョージからもらったお花は、カンパニュラという花だった。鐘のような形をしたかわいい花だと聞いて図鑑で調べようと思ったけどやめた。どんな花か咲くのを待つのも一つの楽しみだ。

種まきの時期は「いつでもいい」と言われたから、誕生日の翌日に新しい花壇を作って種をまいた。新しい命が増えることに喜びを感じた。

「んー……今日もいい天気!」

誕生日から早いもので一ヶ月ちょっと。もうすぐ四月だというのに、朝はまだ肌寒い。

花壇の水やりを終えて今度は草を取る。取っても取ってもすぐに生えるから、花の世話は面倒だと思う。でも、そこがいい。

「おはよう、お猫様」
「ランディ、おはよう」

いつからか始めたランディの早朝ランニング。今のところ毎日続けてるおかげか、ランディの背も体も大きくなった気もする。私はちっとも変わらないのに。

「草むしり、手伝うよ」
「ありがとう」

だったら一息つこうと顔を上げた。ぐっと背を伸ばして空を見る。真っ青な空に、ふわふわの白い雲。白く薄い月。

「あ」

青に映える白く薄い月が何だか綺麗で見とれた。

「どうしたの?」
「月が……」
「月?」

空を仰ぎ見るランディを見る。月を見たランディは私に笑顔を向けた。

「綺麗だね」

私に対して言われたわけじゃないのに、心がぎゅうって締め付けられる。もっと言われたいって、好きだって、心が暴れる。

「さーて、さっさと終わらせよう」

草取りで心を誤魔化した。

好きって不思議だ。他の気持ちと違う。こんなにも好きでいっぱいなのに、素直に伝えられない。バレたくない。秘密にしてたい。

それでも、伝えたい。

「ねぇ、お猫様」
「なに」
「名前を考えたんだ」
「名前?お花の?」
「きみの」

ランディが何を言ってるのか分からなかった。お猫様は、お猫様だ。お猫様が私の名前だ。

「お猫様はお猫様だよ?」
「あー……そうなんだけどね、何ていうか、ニックネームみたいな?」
「にっくねーむ?」
「うーんと、……二つ名的な?」
「ふたつな……」

ふたつなの意味は分かんないけど、何かカッコいい感じがする。

「ふむ、よかろう!我にふたつなを与えたまえ!」
「意味分かってないのに何でそれっぽいキャラに切り替えるのさ」
「御託はいい、早く与えるのだ!」
「……ハル」
「はる?」

何かいまいちピーンッとこなくて、首をかしげてしまった。リアクションの薄さに少しむくれたランディが名前の由来を教えてくれた。

「春は生物の動き始める時期だろ。命の始まりで命の再来、厳しい冬が訪れても春はやってくる。ゆっくりだけど厳しい寒さは温もりに変わる。どんなに寒くつらくても、春の陽射しのような心を忘れずに……いてほしい……と、思って……」

耳まで真っ赤になったランディ。それに釣られて私も熱くなった。

ハル、ハル、ハル。

心に刻み込む。

ハル、ハル、ハル。

絶対に忘れられないものが増えた。

「ランディ」
「なに」
「ピーンッときた!」
「ほんとかなぁ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「ランディ」
「ん?」
「すきだよ」

ぽろりと出た想い。

私の素直な想い。

だけど困ったや。

「ん?何か言った?」
「なーんにも!」

さーっと吹いた風に乗って、どこかへ飛んでいったらしい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

処理中です...