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1章 長い長いプロローグ(後編)
初デート①
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今日はジョージが出掛ける日。私がこの家に来てから初めての留守番だ。
トイレとご飯以外書斎から出ない。誰か訪ねて来ても絶対に出ない。窓から覗かない。居ないふりをする。
いつもと変わらない約束を結んで、ジョージは出掛けた。
ランディも一緒に留守番だけど、ランディには暇すぎるらしく、ジョージが出掛けて一時間で「つまらない」と言い出した。
「本でも読んだら?」
「読んだ本ばっかりだよ」
「運動でもしたら?」
「ハルも一緒にするならする」
「やだよ」
新しい名前を呼ばれるのに慣れない。こんなにも嬉しいのに、素っ気ない態度をしてしまう。
「もー……暇すぎる」
本当にやることがなくて暇なんだろう。ソファーに深くもたれ掛かる姿は、いつもピシッとしてるランディとは程遠い。
「楽しくても悲しくても時間は過ぎるものだよ」
「暇を楽しめってこと?」
「ううん、慣れろってこと」
「えー……無理だよ」
毎日こういう生活をしているから暇に慣れたけど、私よりも自由なランディにはちょっとキツイのかも。
「遊びに行っていいよ。留守番なら一人で出来るから。それこそいつもと変わらないわけだし」
「それはだめだよ。もし何かあったらどうするの?きみを守るのはぼくの仕事なんだよ」
だったらぐだぐだ言わず暇を潰せよって言いたいけど言えないから、わざとため息をこぼした。
「あ、そうだ!一緒に出掛けようよ!」
ランディの提案にひゅっと息を飲んだ。
「どうせ父さんは夜まで帰ってこないんだし、夕方までに帰ってくれば問題ないだろ」
いい提案だろって顔を向けられても何一つ賛同できないから、無言で首を振った。ジョージの約束は絶対なんだ。でもランディは私が断ることを見越してたらしい。わざとらしいため息を吐いた。
「外には楽しいことがいっぱいあるのに、ずーーーっとこの家から出られず、一生を終えるつもり?それがハルの幸せなの?色んなことを知りたいと思わないの?」
そう言われても外に何があるのか知らないし、知らないから興味もないわけで。それに外に出たら危険だ、みんなが幸せに生きる為にも約束は守るように口酸っぱく言われてる。
だからもう一度首を横に振った。
「……ハルの好きなパフェがいっぱいあるよ」
「にゃに?」
それはちょっと聞き捨てならないぞ。
「パンを売ってるお店も、アイスクリーム屋さんも、ケーキ屋さんも、何ならデザート食べ放題のお店だってあるよ。洋服だって本だってたくさんある」
外界にそんなすんげえものがあるなんて聞いたことないし、むしろ知ってたら連れて行ってって駄々捏ねるに決まってる。
外は危険どころか天国じゃないか。でも何でジョージは何も言ってくれなかったんだろ……
「父さんはハルを連れて行きたくないから内緒にしてたんだよ、きっと。変なところでケチだからなぁ、あのロリコン親父」
「にゃ!?そーいう理由にゃ!?」
「さて、ハル」
「いかがしましょう?」と言うランディの顔は勝者のそれだ。何を天秤にかけても勝つものは決まっている。
「お外に連れて行って!」
「仰せのままに、お姫様!」
ランディは私の手を取って走り出した。ジョージよりも小さいけど、私よりも大きくてドキドキする手。それとふれあってるだけで、庭も、花も、青い空も、ふわふわの雲も、いつもと違うものに見えた。
トイレとご飯以外書斎から出ない。誰か訪ねて来ても絶対に出ない。窓から覗かない。居ないふりをする。
いつもと変わらない約束を結んで、ジョージは出掛けた。
ランディも一緒に留守番だけど、ランディには暇すぎるらしく、ジョージが出掛けて一時間で「つまらない」と言い出した。
「本でも読んだら?」
「読んだ本ばっかりだよ」
「運動でもしたら?」
「ハルも一緒にするならする」
「やだよ」
新しい名前を呼ばれるのに慣れない。こんなにも嬉しいのに、素っ気ない態度をしてしまう。
「もー……暇すぎる」
本当にやることがなくて暇なんだろう。ソファーに深くもたれ掛かる姿は、いつもピシッとしてるランディとは程遠い。
「楽しくても悲しくても時間は過ぎるものだよ」
「暇を楽しめってこと?」
「ううん、慣れろってこと」
「えー……無理だよ」
毎日こういう生活をしているから暇に慣れたけど、私よりも自由なランディにはちょっとキツイのかも。
「遊びに行っていいよ。留守番なら一人で出来るから。それこそいつもと変わらないわけだし」
「それはだめだよ。もし何かあったらどうするの?きみを守るのはぼくの仕事なんだよ」
だったらぐだぐだ言わず暇を潰せよって言いたいけど言えないから、わざとため息をこぼした。
「あ、そうだ!一緒に出掛けようよ!」
ランディの提案にひゅっと息を飲んだ。
「どうせ父さんは夜まで帰ってこないんだし、夕方までに帰ってくれば問題ないだろ」
いい提案だろって顔を向けられても何一つ賛同できないから、無言で首を振った。ジョージの約束は絶対なんだ。でもランディは私が断ることを見越してたらしい。わざとらしいため息を吐いた。
「外には楽しいことがいっぱいあるのに、ずーーーっとこの家から出られず、一生を終えるつもり?それがハルの幸せなの?色んなことを知りたいと思わないの?」
そう言われても外に何があるのか知らないし、知らないから興味もないわけで。それに外に出たら危険だ、みんなが幸せに生きる為にも約束は守るように口酸っぱく言われてる。
だからもう一度首を横に振った。
「……ハルの好きなパフェがいっぱいあるよ」
「にゃに?」
それはちょっと聞き捨てならないぞ。
「パンを売ってるお店も、アイスクリーム屋さんも、ケーキ屋さんも、何ならデザート食べ放題のお店だってあるよ。洋服だって本だってたくさんある」
外界にそんなすんげえものがあるなんて聞いたことないし、むしろ知ってたら連れて行ってって駄々捏ねるに決まってる。
外は危険どころか天国じゃないか。でも何でジョージは何も言ってくれなかったんだろ……
「父さんはハルを連れて行きたくないから内緒にしてたんだよ、きっと。変なところでケチだからなぁ、あのロリコン親父」
「にゃ!?そーいう理由にゃ!?」
「さて、ハル」
「いかがしましょう?」と言うランディの顔は勝者のそれだ。何を天秤にかけても勝つものは決まっている。
「お外に連れて行って!」
「仰せのままに、お姫様!」
ランディは私の手を取って走り出した。ジョージよりも小さいけど、私よりも大きくてドキドキする手。それとふれあってるだけで、庭も、花も、青い空も、ふわふわの雲も、いつもと違うものに見えた。
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