目が覚めたら【呪いの首輪】と【呪いのおパンツ】をつけられていたけど、これをやった犯人は誰ですか?

くったん

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1章 長い長いプロローグ(後編)

好きというもの

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それは突然だった。

「ガッコー?」
「学校だよ」
「ガッコウ」

ランディはガッコウというものに行かなければならないと報告を受けた。

「長期休暇以外は帰ってこない」
「……帰ってこない?」
「寮制だからな」
「いつから?」
「今朝早くに出発した。お猫様は寂しいだろうが、これはランディのためであって仕方のないことなんだよ」

ランディのためなら仕方がないけど、何だか置いて行かれた気分のようで、とっっっても嫌な気分だ。一緒にいるって、また星空を見るって約束したのに。でもランディが嘘をつくはずがない。

まさか……この前の留守番の件、ジョージは怒ってるんじゃ……、だからランディを追い出した、とか?あれから二人とも微妙な空気だったし……。

「ジョージが追い出したの?」
「……その必要があった」
「ジョージのバカ!ジョージなんてだいっきらい!!」
「か、かかか覚悟はしていたが、こ、こ、これほどまでとは……あ、ああ、あああああああ!」

それからジョージとは口を聞いてない。心のモヤモヤが晴れないんだもの、しょうがないじゃないか。

「今日はお猫様の好きなハンバーグだよ、チーズたっぷりだよ」

好きなご飯でご機嫌を取ってこようとも。

「お猫様の新しいお洋服だよ。これなんて特にかわいいだろ。白のワンピースは天使のようなお猫様に絶対に似合う……あああああああ!!似合うっ!」

かわいいお洋服を与えられても。

「お猫様のお部屋を模様替えしようか。ニンジャ屋敷に憧れてるんだろう?」
「ニンジャにゃ!?ニンニンできるかにゃ!?」
「ネコ語ッ!久しぶりに聞いた声がッ、ネコ語ッ!あああああああ!!」

例え好きなモノを買い与えられても、絶対に許さないって思ってたのにっ!

時の流れとは無情だ。

一週間、一か月、一年と、時が経てば経つほど怒りが風化した。

ランディがいないことに慣れてしまった。

ガッコウが休みのときは帰ってくるとジョージは言ってたのに、ランディは一度も帰ってこなかった。それもあってジョージとの戦いが長く続いたんだけども、私が怒ってもランディが帰ってくるわけもなく、ジョージとの微妙な空気の中、一日一日が無情に過ぎていくだけ。

夏がきて秋になる、寒い冬を越えて春が訪れる。

季節が過ぎるたびにランディのいない日常に慣れていく。

誕生日も一人で星空を見る。

寂しいけど、私にはどうすることも出来ない。

会いたいと願っても、流れ星は叶えてくれなかった。

「ジョージ、シーツ洗うからさっさと起きて!」

気づけばもう三度目の初夏。一年前にジョージと仲直りをした。ランディを思い出すのをやめた。寂しくなるだけで、明るくなれないから。

「やだよぉ、まだ眠いよぉ」

最近メンドクセーオヤジと化してるジョージをベッドから蹴落とし、シーツを剥ぎ取る。するとジョージは私の手からシーツを取り上げ、それで私を包んだ。

「悪い子にはお仕置きだ!」
「悪いのはいつまでたっても起きないジョージでしょ!」
「たまには寝坊もいいもんだろ!」
「ぎゃーっ!」

そのままベッドに倒れた。それでもぎゅうぎゅうに抱き付いてくるジョージと笑いあった。

「このまま二度寝するか」
「えー」
「今日はお休みにしよう」
「えー」

ほんとに二度寝する気らしく、ジョージは黙り込んでしまった。

「もう、仕方ないなぁ」

ぐるりと寝返りをうってジョージに背中を向ける。それでも引っ付いてくるジョージにため息を一つ。

初夏の眩しい光が窓から入る。その向こうには真っ青な空と、白く薄い月。掴めるはずもないのに、手を伸ばしてそれを掴んでみた。

「ねぇ、ジョージ。どうして明るいのに月が出ているの?」
「……」
「どうして空は青いの?」
「……」
「どうして雲はふわふわなの?」
「……」
「どうして……」

ランディは帰ってこないの?

その答えを聞くのが怖くて口を閉じた。

「大丈夫だよ」

伸ばした手に重なる大きな手。包み込むそれにやっぱりひどく安心して、寂しいことを考えるのをやめて目を閉じた。

「……ランディ」

その日の夢は、ランディとひまわり畑で遊ぶ夢だった。

かくれんぼをしていた。

高く伸びるたくさんのひまわりを掻き分けてランディを探す。自分を呼ぶ声は聞こえるのに、探せど探せど見つからない。

寂しくて、悲しくて、腹が立って、おっきな声でランディを呼んだ。

「ランディ!」

びゅうっと風が吹いた。

大切なものを盗まれた気がして、その風を追いかけた。

真っ青な空に浮かぶ白く薄い月と同じ、掴めるはずもないのに、一生懸命に手を伸ばす。

掴めないから伸ばす。

掴みたいから伸ばす。

ああ、そうだ、誤魔化せるはずなかったんだ。

私はこんなにも……

「……ランディ」

好きを知ってしまっていたんだ。


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