目が覚めたら【呪いの首輪】と【呪いのおパンツ】をつけられていたけど、これをやった犯人は誰ですか?

くったん

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1章 長い長いプロローグ(後編)

金木犀の香る夜に①

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あっという間に五度目の初夏がやって来た。

花壇にカンパニュラも咲いた。

去年の誕生日に金木犀を植えた。

一年で大きくなったそれを見て、この家の御神木のようだとジョージが言った。ならばとしめ縄と【家内安全】と書いた札を作って木に巻き付けた。

「家内安全は、家内である妻を大切にしないと災いが起きるって意味なんだよ」
「おや、お猫様はわたしの嫁になるのかな」
「メンドクセーオヤジが旦那とかマジで嫌だ」
「あああああああ!」

【家内安全】の効果なのか、ジョージとケンカもなく仲良く暮らしている。ただ、原因は分からないけど、体が成長しない。ジョージは女の子はそういうものだと言うけど納得いかない。胸だけでも育ってくれてもいいと思う。見せる相手が居ないからあってもしょうがないけど。

ランディは相変わらず帰ってこない。私の好きはいっこうに消えないけど、知らないフリをしている。

この数年で培った、知らないフリ、ものすごく楽だ。

でも、それでも思い出してしまう。

晴れた日の夜は特に。

「ジョージ、そろそろ寝るよ」

お風呂から上がったあと、まだお仕事中のジョージの書斎へ。声をかけても顔を上げずに「おやすみ」と返事をしてくれた。

「ちゃんと眠ってね。昨日もそんなに寝てないでしょ?」
「分かってる、大丈夫だよ」

それでも顔を上げないんだから絶対に分かってないと思う。最近は特に忙しいみたいだからしょうがないんだろうけど。

「ほんとに分かってる?」
「おやすみ、お猫様」

返事を聞いてため息一つ。これ以上言っても無駄っぽいからおとなしく部屋に戻る。

部屋に入るとすぐに違和感に気づいた。閉めていたはずの窓が開いている。ジョージを呼ぶべきだろうけど、懐かしい匂いがベッドに腰かけてた。

ずっと待ってた。ずっと会いたかった。

でも、いつか帰ってきたときはいつも通りで居ようと思ってた。あなたが居なくても平気だったと思わせたかった。

「久しぶりだね」
「嘘つき詐欺師の次は泥棒のまねごと?あーやだやだ、これだから男は信用ならないのよ」

皮肉を垂れながらも、あの頃と同じようにランディの隣に腰掛ける。身長も体格も声もあの頃と全然違う。子どもと大人の差ほどある。

「おっきくなりすぎ」
「鍛えたからね」
「ふーん、それで忙しくて帰ってこれなかったのね」

嫌みをたっぷり言いながら逞しい体に寄っ掛かってみた。あの頃みたいに見上げてみると、あの頃と同じで微笑みながら私を見ていたから、誤魔化すように床に視線を落とした。

あの頃と違う。

ランディが大人の男になってる。

「父さんの部屋に行ってたの?」
「うん。おやすみの挨拶をしに」
「そっか」
「今日はどうしたの?ジョージに用事があるの?」
「ただ、きみに会いたくなった」
「会いたくなるのが遅すぎる件について腹を割って話し合うべきだと思うの」
「どうしたって、すきだよ、きみのことが。ようやく気づけたから会いに来た」
「今さら言われても困るわよ」

ほんっとにかわいくない口だけど、素直になれないもの当然だと思う。それほど待ったんだ。ずーーーっと待ってて、そして諦めてた。それを今さら……気持ちが追いつかない。

「ふーん、誰か好きな人がいるの?まさか気色悪いロリコンエロオヤジ?」
「……うん、そう」

だから、ちっぽけなウソが飛び出す。

「ごめん、全然聞こえなかった。何か言った?」
「ジョージがすきなの」
「ごめんね、きみの言ってることが理解出来ない。うーん、疲れてるのかも。そうだ今日は一緒に寝ようか。ほら、眠るのに不必要だろ。要らないモノだよ、こんなものッ!」

ランディはベッドサイドに飾ってあるジョージと私の写真立てを床に叩き付けた。それでも足りないらしく足でグリグリィと踏みつけて、最終的には写真を取り出して引きちぎってバラバラにしていた。鬼の形相で。

ランディがご乱心だ。真っ黒だ。一体どうしちゃったんだ。

「あの」
「……ん?どうしたの?」
「……嘘です、ごめんなさい」
「あ、そうなんだね!本気にしてびっくりしちゃったよ。よかったよかった」

鬼の形相からいつもの笑顔に戻したランディに身震いしてしまった。この人の内なるところに悪魔が潜んでる。まぁ、ヤキモチといえばそれまでなんだけど。

「……あれ?……引いてない?何で?何かしちゃった?」
「いえ、別に」

何もみてないフリをして、シーツの中に潜り込んだ。ランディも明かりを消して隣に寝そべってきた。

「久しぶりだね、こういうの」
「うん」

お互い向き合って、手を繋いで、目を閉じる。あの頃から何年も経ったのに、あの頃と同じ。離れてたのにすぐに戻る関係。それが嬉しいのか悲しいのか分からない。

ただ、足りない何かを埋めるように、ランディの大きな手を握ってた。話すこともいっぱいある。どれから話そうと整理してたーーハズだった。


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