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2章 呪いの首輪と呪いのおパンツ
呪いの不思議⑥
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乗り換えする駅に着いた。
途中で泣いてしまったから気まずいと思ってたけど、二人は特に気にしていないらしく、その話題に触れてくることはなかった。正直言うと有難い。私も何で泣いてしまったのかよく覚えていないから。
「少し時間あるし、売店で何か買うか」
「お菓子!ジュース!アイス!」
「求めるものが子どものそれな」
呆れつつもリビアはお弁当と一緒に買ってくれた。溶けるからってことでアイスを頬張りながら、駅構内のベンチに座る。ちなみにジョニーは駅員さんにバレないようどこかに隠れてるらしい。
「悪いことをすると自分に返ってくるんだよ」
「バレなきゃ悪いことになんねぇの」
「こっからどのくらいで着くの?」
「その質問も子どものそれと同じな」
「すぐ着くの?」
「んー、何にもなければ六時間くらい」
四時間でもけっこう長く感じたのに、今からまた六時間とか無理過ぎる。しかも何もなければってなんだ。何かあったりするのか。
「途中で止まったりするんだよ。運転手が疲れたーとか言ってサボるわけ」
「なにそれお仕事してよ」
「チップを渡すと張り切って仕事するぜ。まっ金額によりけりだけど」
「ねぇねぇリビアさんリビアさん、それってチップを稼ぐためにわざと止めてるってこと?」
「思ってても口にしちゃいかんよ、ハルくん。金が一番、それがこの世の理だ」
「リビアは貧乏なのに、志とプライドとおちゅんちゅんだけは立派だね」
「全力で俺の心を折ろうとしてるのか、それとも喜ばせようとしてるのか、そもそもいつ見たのか、とても複雑な気持ちだよ」
「違うよ、全力で貶してるんだよ。だって嘘だもん。おちゅんちゅんも貧乏だもんね」
「おう、お前はやっぱしクソネコな」
「ありがとう」
「これっぽっちも褒めてねぇよ!大体お前は」
ぐちぐち言い出したから知らん顔でアイスを食べる。めんどくさい男は嫌いだ。
「んなもんこうしてやる!」
何を思ったのか、リビアが私のアイスに食らいついた。私のアイスが半分以下になった。
「へへ、ざまーみろ」
意地の悪い顔して嫌なことをしたリビアに持っていたアイスを渡した。
「新しいの買ってよ」
「は?」
「これはリビアが責任持って食べて、新しいアイスを買ってって言ったの」
「いや、食えよ、これを」
「やだよ」
「何でだよ」
「知ってる?お口の中は細菌だらけなんだよ。好きな人の細菌ならまだしも、リビアのはちょっと……」
「ちょっとやめろよ、それめっちゃ傷つくやつ……」
「私も私のアイス勝手に食べられて傷ついたから、これでおあいこだね」
「……買ってくる」
とぼとぼと売店に向かうリビアを笑顔で見送ったら、はっ!?と何かに気づいたようにリビアがダッシュで戻ってきた。
「そもそもキスしたよな!?」
「へ?」
「お前と俺、キスしたじゃん!舌まで入れてさ!直で細菌の移し合いしたんだから今さらじゃね!?」
駅の構内で、しかもおっきな声で何を言ってるんだろう。何も言わずに冷めた目と笑顔を向けると、今の状況に気づいたのか売店へと逃げた。
「でも、そうだよね……」
仕方ないとはいえリビアとキスをした。しかもあの時の映像と同じ、舌を絡めるやつを。ちょっと興奮したけど、だからといって思い出してもドキドキしないから、やっぱりあれはアクシデントの一部みたいなものだ。
キスは特別な証だもの。
ノーカウントにしておこう。
「……リビア、遅いな」
売店に目をやろうとすれば、ドスンと隣に誰かが座った。嫌でも視界に入ってきた人物は、マントを羽織っていても分かるほどめちゃくちゃ体格のいいおっさんだった。その巨体に驚きつつも、あんまり見たら失礼だからと目線を自分の足元にやった。
「……ネコの、……匂いがする」
おっさんの呟きが聞こえて、ますます顔を上げられたくなった。
「なんだこの匂いは。……どこから……」
めちゃくちゃ視線を感じるけど言わなきゃバレないようので知らん顔。
「……あの、お嬢さん」
「おーい!ハルー!」
ナイスタイミングとばかりのリビアの呼び声にすぐさま立ち上がり、荷物を持って駆け寄る。
「待っ、待たれよ!」
「どうしたの?」
「アイスどれがいい?」
「えっとね、いちご味」
「お、おう」
リビアの視線が私の背後に向かう。何か変なのついてきたけど、あえて知らん顔してほしいとアイコンタクトを送った。それが通じたらしくリビアはチラ見するだけで、それ以上のことは言わなかった。それで良い。
「お嬢さん、お話をしたいのだが」
「まだ列車来ないの?」
「あと五分くらい」
「五分もあるのね」
「五分だけでもお話を」
「あーん、アイス美味しい」
「一口くれ」
「やだよ、リビアの細菌は好きになれない」
「だからそういうことを言うなよ」
「お話をしたいのだが」
負けじと絡んでくるおっさん。リビアはリビアでおっさんと私の関係性を気にしてるみたいだ。
「お前を知ってるやつじゃねぇの?」
リビアがこそこそ聞いてきた。
「このおっさん「ネコの匂いがする」と言ってたんだよ。何か怖いじゃん」
「んだよ、またネコ信者かよ。あれほどフードを取るなと……」
「違うよ、被ったままの状態でそう言ったんだよ」
「えー何だよそのエスパー。めちゃくちゃ怖いやつじゃん」
「でしょ?怖いでしょ?関わりたくないでしょ?」
「元飼い主だったりして」
リビアは面白おかしく言ったつもりなんだろうけど、私にはちっとも面白くないわけで、わざと靴を踏んづけてあげた。ぐりぐりぃぃっと。
「このクソネコ!」
「やはりネコ!あなたが!」
「リビアのせいでおっさんの心にネコ魂が宿ったじゃん」
「……悪い、今のは完璧に俺が……いや、お前が踏んづけるからだろ!?」
「どうしてくれんのよ」
「ネコ様!あなたがネコ様!」
もういっそのことお話でもしようかと考えてると、タイミング良く列車が来た。
「んじゃ行くか」
「そだねー」
「どこまでもお供します」
「てめぇは来んなやあああ!」
おっさんも着いてこようとしたから、持っていたアイスを顔面に投げつけて、ついでに蹴りを一発いれた。ずさーーっとぶっ飛んでった。
「ネコ様!」
それでも負けじと走ってくるおっさんに笑顔で手を振った。
途中で泣いてしまったから気まずいと思ってたけど、二人は特に気にしていないらしく、その話題に触れてくることはなかった。正直言うと有難い。私も何で泣いてしまったのかよく覚えていないから。
「少し時間あるし、売店で何か買うか」
「お菓子!ジュース!アイス!」
「求めるものが子どものそれな」
呆れつつもリビアはお弁当と一緒に買ってくれた。溶けるからってことでアイスを頬張りながら、駅構内のベンチに座る。ちなみにジョニーは駅員さんにバレないようどこかに隠れてるらしい。
「悪いことをすると自分に返ってくるんだよ」
「バレなきゃ悪いことになんねぇの」
「こっからどのくらいで着くの?」
「その質問も子どものそれと同じな」
「すぐ着くの?」
「んー、何にもなければ六時間くらい」
四時間でもけっこう長く感じたのに、今からまた六時間とか無理過ぎる。しかも何もなければってなんだ。何かあったりするのか。
「途中で止まったりするんだよ。運転手が疲れたーとか言ってサボるわけ」
「なにそれお仕事してよ」
「チップを渡すと張り切って仕事するぜ。まっ金額によりけりだけど」
「ねぇねぇリビアさんリビアさん、それってチップを稼ぐためにわざと止めてるってこと?」
「思ってても口にしちゃいかんよ、ハルくん。金が一番、それがこの世の理だ」
「リビアは貧乏なのに、志とプライドとおちゅんちゅんだけは立派だね」
「全力で俺の心を折ろうとしてるのか、それとも喜ばせようとしてるのか、そもそもいつ見たのか、とても複雑な気持ちだよ」
「違うよ、全力で貶してるんだよ。だって嘘だもん。おちゅんちゅんも貧乏だもんね」
「おう、お前はやっぱしクソネコな」
「ありがとう」
「これっぽっちも褒めてねぇよ!大体お前は」
ぐちぐち言い出したから知らん顔でアイスを食べる。めんどくさい男は嫌いだ。
「んなもんこうしてやる!」
何を思ったのか、リビアが私のアイスに食らいついた。私のアイスが半分以下になった。
「へへ、ざまーみろ」
意地の悪い顔して嫌なことをしたリビアに持っていたアイスを渡した。
「新しいの買ってよ」
「は?」
「これはリビアが責任持って食べて、新しいアイスを買ってって言ったの」
「いや、食えよ、これを」
「やだよ」
「何でだよ」
「知ってる?お口の中は細菌だらけなんだよ。好きな人の細菌ならまだしも、リビアのはちょっと……」
「ちょっとやめろよ、それめっちゃ傷つくやつ……」
「私も私のアイス勝手に食べられて傷ついたから、これでおあいこだね」
「……買ってくる」
とぼとぼと売店に向かうリビアを笑顔で見送ったら、はっ!?と何かに気づいたようにリビアがダッシュで戻ってきた。
「そもそもキスしたよな!?」
「へ?」
「お前と俺、キスしたじゃん!舌まで入れてさ!直で細菌の移し合いしたんだから今さらじゃね!?」
駅の構内で、しかもおっきな声で何を言ってるんだろう。何も言わずに冷めた目と笑顔を向けると、今の状況に気づいたのか売店へと逃げた。
「でも、そうだよね……」
仕方ないとはいえリビアとキスをした。しかもあの時の映像と同じ、舌を絡めるやつを。ちょっと興奮したけど、だからといって思い出してもドキドキしないから、やっぱりあれはアクシデントの一部みたいなものだ。
キスは特別な証だもの。
ノーカウントにしておこう。
「……リビア、遅いな」
売店に目をやろうとすれば、ドスンと隣に誰かが座った。嫌でも視界に入ってきた人物は、マントを羽織っていても分かるほどめちゃくちゃ体格のいいおっさんだった。その巨体に驚きつつも、あんまり見たら失礼だからと目線を自分の足元にやった。
「……ネコの、……匂いがする」
おっさんの呟きが聞こえて、ますます顔を上げられたくなった。
「なんだこの匂いは。……どこから……」
めちゃくちゃ視線を感じるけど言わなきゃバレないようので知らん顔。
「……あの、お嬢さん」
「おーい!ハルー!」
ナイスタイミングとばかりのリビアの呼び声にすぐさま立ち上がり、荷物を持って駆け寄る。
「待っ、待たれよ!」
「どうしたの?」
「アイスどれがいい?」
「えっとね、いちご味」
「お、おう」
リビアの視線が私の背後に向かう。何か変なのついてきたけど、あえて知らん顔してほしいとアイコンタクトを送った。それが通じたらしくリビアはチラ見するだけで、それ以上のことは言わなかった。それで良い。
「お嬢さん、お話をしたいのだが」
「まだ列車来ないの?」
「あと五分くらい」
「五分もあるのね」
「五分だけでもお話を」
「あーん、アイス美味しい」
「一口くれ」
「やだよ、リビアの細菌は好きになれない」
「だからそういうことを言うなよ」
「お話をしたいのだが」
負けじと絡んでくるおっさん。リビアはリビアでおっさんと私の関係性を気にしてるみたいだ。
「お前を知ってるやつじゃねぇの?」
リビアがこそこそ聞いてきた。
「このおっさん「ネコの匂いがする」と言ってたんだよ。何か怖いじゃん」
「んだよ、またネコ信者かよ。あれほどフードを取るなと……」
「違うよ、被ったままの状態でそう言ったんだよ」
「えー何だよそのエスパー。めちゃくちゃ怖いやつじゃん」
「でしょ?怖いでしょ?関わりたくないでしょ?」
「元飼い主だったりして」
リビアは面白おかしく言ったつもりなんだろうけど、私にはちっとも面白くないわけで、わざと靴を踏んづけてあげた。ぐりぐりぃぃっと。
「このクソネコ!」
「やはりネコ!あなたが!」
「リビアのせいでおっさんの心にネコ魂が宿ったじゃん」
「……悪い、今のは完璧に俺が……いや、お前が踏んづけるからだろ!?」
「どうしてくれんのよ」
「ネコ様!あなたがネコ様!」
もういっそのことお話でもしようかと考えてると、タイミング良く列車が来た。
「んじゃ行くか」
「そだねー」
「どこまでもお供します」
「てめぇは来んなやあああ!」
おっさんも着いてこようとしたから、持っていたアイスを顔面に投げつけて、ついでに蹴りを一発いれた。ずさーーっとぶっ飛んでった。
「ネコ様!」
それでも負けじと走ってくるおっさんに笑顔で手を振った。
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