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2章 呪いの首輪と呪いのおパンツ
逃げられなかった運命⑤
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お兄さんが帰ったあと出窓に戻り、「ジョニーがなくなって十年」という意味を深く考えてみる。
なくなって十年、亡くなったってこと?しかも十年前に。ジョニーは幽霊なの?
「いやまぁ確かにゾンビっぽいけど……ほんとだ、ゾンビだ」
言われてみれば、顔色も悪いし、体温だってめちゃくちゃ冷たい。ご飯を食べているところを見たことがないし、眠っているところも見たことがない。心以外、【生】を感じるモノがないように思える。
「……でも、触れるよ?」
幽霊ってもっと半透明じゃないの?ジョニーってばモロに実体があるけど。それとも私とリビアにだけ見えていて、他の人には見えてないの?実は透明なの?
「うーん、基本的に行動が別々だから……別だから怪しいのか!」
言われてみれば、一緒に行動する機会があまりない。あっても図書館に行くときくらいだ。一緒に行こうと誘ったこともあるけど、やんわりと断られた。
「……でも、……デートしたし。……ああもう!わかんない!」
言われてみれば、と、でも、が交差する。二人に聞いた方が早いけど、聞きにくい話題だ。「ジョニーってもう死んでるの?」「ジョニーって本物のゾンビ?」どう聞いても失礼な質問である。
仮にそうであったとして、二人が事情を話してこないなら、私には触れられたくない事情ってことだろう。だったら何かしらのアクションがあるまで知らん顔してるのが一番だけど、知ってしまった以上、普通に出来る自信がない。
「……あっ!【呪い】でそうなったって言ってたね」
初めて会ったときに、呪いでゾンビになったから、それを解くために呪いを調べてるって言ってたのを忘れてた。願い事を叶えるために、私の【呪いの首輪】が欲しいっていう取引だった。失敬、失敬。
「……ほんとに願いが叶うのかな。……自分のことなのに、知らないことだらけだ」
呪いについての手掛かりが何もない今、一番てっとり早いのは記憶を戻すこと。そうすればジョニーが元に戻る。
「悠長なことを言ってられないじゃん!」
記憶を探るのは、やっぱり怖い。知らない私が嫌がっている。でもジョニーの呪いを解くため、ここは度胸でクリアするしかない。踏ん張りどころってやつだ。
私もジョニーを助けたい。そのために私が出来ることは、ただ一つ。記憶を取り戻すこと。
「っし!やんぞ、自分に負けるかよ!」
バチンと両手で頬っぺたを叩く。気合いは入ったけど、痛みでやる気が削がれたから二度としないと思った。
あれだけぐだぐた言って逃げてたのに、覚悟が決まると簡単だった。それから昼寝をしたりして時間を潰し、先にリビアが帰ってきたから、「記憶を戻したいから全裸のおっさんに会いに行きたい」と伝えた。
あまり良い顔はしなかったけど、
「お前がいいならいいけどさ。まぁ説明されたからって記憶が戻るわけじゃねぇもんな」
と言われて目からウロコ体験。言われてみればそうだ。話を聞いたからって記憶が戻る保証はないんだ。そう思えると、すっごく心が楽になった。
「でも何でいきなり?嫌がってたじゃん」
「んー……、ジョニーのために頑張ろうって思ったの」
「……ジョニーのため、ね。……そっか」
お兄さんのことは言わなかった。それを言ったら深い事情を話さないといけないような流れになると思って言えなかった。
リビアのこと、ジョニーのこと、知りたくないわけじゃない。でも自然と言ってくれるまで待つのも家族だと思う。……少しモヤモヤするけど。
でも、いいの。リビアはリビアで、ジョニーはジョニーだから、何があったって味方で大事な人。
「リビアさん、リビアさん」
「んだよ」
「リビアもジョニーも大好きだよ」
「結果あいつとワンセットかよ!」
「え?ダメ?」
「……いーや、細菌より進歩したと前向きに考える!」
「いや、リビアの口内細菌は嫌いだよ」
「うああああああ!」
リビアもジョニーも私の大切な家族だ。
なくなって十年、亡くなったってこと?しかも十年前に。ジョニーは幽霊なの?
「いやまぁ確かにゾンビっぽいけど……ほんとだ、ゾンビだ」
言われてみれば、顔色も悪いし、体温だってめちゃくちゃ冷たい。ご飯を食べているところを見たことがないし、眠っているところも見たことがない。心以外、【生】を感じるモノがないように思える。
「……でも、触れるよ?」
幽霊ってもっと半透明じゃないの?ジョニーってばモロに実体があるけど。それとも私とリビアにだけ見えていて、他の人には見えてないの?実は透明なの?
「うーん、基本的に行動が別々だから……別だから怪しいのか!」
言われてみれば、一緒に行動する機会があまりない。あっても図書館に行くときくらいだ。一緒に行こうと誘ったこともあるけど、やんわりと断られた。
「……でも、……デートしたし。……ああもう!わかんない!」
言われてみれば、と、でも、が交差する。二人に聞いた方が早いけど、聞きにくい話題だ。「ジョニーってもう死んでるの?」「ジョニーって本物のゾンビ?」どう聞いても失礼な質問である。
仮にそうであったとして、二人が事情を話してこないなら、私には触れられたくない事情ってことだろう。だったら何かしらのアクションがあるまで知らん顔してるのが一番だけど、知ってしまった以上、普通に出来る自信がない。
「……あっ!【呪い】でそうなったって言ってたね」
初めて会ったときに、呪いでゾンビになったから、それを解くために呪いを調べてるって言ってたのを忘れてた。願い事を叶えるために、私の【呪いの首輪】が欲しいっていう取引だった。失敬、失敬。
「……ほんとに願いが叶うのかな。……自分のことなのに、知らないことだらけだ」
呪いについての手掛かりが何もない今、一番てっとり早いのは記憶を戻すこと。そうすればジョニーが元に戻る。
「悠長なことを言ってられないじゃん!」
記憶を探るのは、やっぱり怖い。知らない私が嫌がっている。でもジョニーの呪いを解くため、ここは度胸でクリアするしかない。踏ん張りどころってやつだ。
私もジョニーを助けたい。そのために私が出来ることは、ただ一つ。記憶を取り戻すこと。
「っし!やんぞ、自分に負けるかよ!」
バチンと両手で頬っぺたを叩く。気合いは入ったけど、痛みでやる気が削がれたから二度としないと思った。
あれだけぐだぐた言って逃げてたのに、覚悟が決まると簡単だった。それから昼寝をしたりして時間を潰し、先にリビアが帰ってきたから、「記憶を戻したいから全裸のおっさんに会いに行きたい」と伝えた。
あまり良い顔はしなかったけど、
「お前がいいならいいけどさ。まぁ説明されたからって記憶が戻るわけじゃねぇもんな」
と言われて目からウロコ体験。言われてみればそうだ。話を聞いたからって記憶が戻る保証はないんだ。そう思えると、すっごく心が楽になった。
「でも何でいきなり?嫌がってたじゃん」
「んー……、ジョニーのために頑張ろうって思ったの」
「……ジョニーのため、ね。……そっか」
お兄さんのことは言わなかった。それを言ったら深い事情を話さないといけないような流れになると思って言えなかった。
リビアのこと、ジョニーのこと、知りたくないわけじゃない。でも自然と言ってくれるまで待つのも家族だと思う。……少しモヤモヤするけど。
でも、いいの。リビアはリビアで、ジョニーはジョニーだから、何があったって味方で大事な人。
「リビアさん、リビアさん」
「んだよ」
「リビアもジョニーも大好きだよ」
「結果あいつとワンセットかよ!」
「え?ダメ?」
「……いーや、細菌より進歩したと前向きに考える!」
「いや、リビアの口内細菌は嫌いだよ」
「うああああああ!」
リビアもジョニーも私の大切な家族だ。
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