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第3部 あの恋の続きを始める
5-7 ※
しおりを挟むそんな、夢物語は反芻出来る程覚えていなかったのだ。愛しい男の体温を直接感じることが出来て、記憶が途切れ途切れだった。人間、強烈な幸せを感じても記憶に留めておくのは困難なのだと知ったくらいだ。
「いや、俺も……ほら。考えていることは一緒だ」
潤滑油とコンドームを最賀は鞄から取り出した。
「これ、は……大丈夫です」
濡れ濡れゼリーと言う商品名であるが卑猥さがゼロの生粋な潤滑油は首を振った。とろりと蕩けた湿潤する膣壁には出番がないのだ。
最賀は確かに、と短くそう呟いた。獣欲を宿した双眸が陽菜の秘所を舐め回す様に見詰めている。ゾクゾクと背筋は鳥肌が立つ。これから歓喜を得られることを、体は既に覚えているのだ。
秘芯を覆う皮が剥かれて、ぷっくりと顔を出す。襞を指で引き、露わにすると陽菜は最賀へ強請る。顔を足の間に埋めて、秘芯を舌で撫でていく。
触れるか触れないかくらいの刺激は、もどかしい。思わず陽菜は腰をくねらせて、身悶えた。早くしゃぶり尽くして欲しいと、はしたないと思っていても最賀の愛撫はそれだけ陽菜を陥落させるものがある。
舌で何度か焦らす様にして行ったり来たりを、ゆっくり交わす。
時折秘芯周りをくるりと逸れて、また戻って来る。陽菜は甘ったるい声で最賀の名前を呼んで、快楽に期待を膨らませるしかなかった。
その焦らしは長く、感じた。
次第に陽菜の秘所は熟れた果実の様にとろっとろに蕩けており、愛液で臀部に敷いたバスタオルに大きな染みを作り始めた。
流石にその頃になれば、最賀は陽菜を飛びっきりの深い愛情で隈無く心も体も溶かしていく。最賀が水音を立てて蜜を啜り秘核を強く舐られると、陽菜は腰を上げて内腿をぶるぶると震わせる。
「忠、さんッ、あ、ぁあ……ッ、来ちゃう、く、る……ッ!」
ビクビクと全身が戦慄いた。喉が張り付いて、息が上手く出来ずに大きく胸郭を拡げる。陽菜の溢れ出た蜜液を、最賀は丹念に舐め取るから、駄目だとツムジを掴むが、制止させられなかった。
それどころか、絶頂へ達したばかりなのに執拗に口唇で挟み横へ揺さぶるから、堪らず涙声で訴えた。
最賀は視線だけ陽菜の顔へ向けた。茹蛸みたいに赤らんで、口端から唾液を垂れさせただらしない顔は見られたく無くて手で覆う。すると、最賀は何度目かの意地悪なのか、陽菜の手首を掴んで邪魔をする。
「かお、見ないで……ッ」
「どうして?」
「だって、はぁ……ッ変だもん……」
「可愛い顔して、俺のこと離したがってないぞ?」
武骨な指が急にぬぷぬぷと狭隘を掻い潜っては戻って来る。きめ細かい陽菜の白い肌に汗が滲む。出たり入ったり繰り返され、腹側を摩られると無意識に腰が揺れる。足を閉じたくても最賀が体を入れ込んでいるせいで、抵抗も虚しい。
「あ、ぁあ……ッい、ッたばかり! だから、っひ、だめ……ッ敏感なの、や、ァア、ッあ、ぁ……っ!」
「連続で達くの、お気に入りだろう?」
「そ、そんな……ことッ」
最賀は陽菜の弱い所を的確に、刺激を与えていく。体温がグッと上がって行くのが分かる。
怖いくらいに強い快楽が差し迫っている。制御出来ない、甘く淫らな声が口端から漏れて行き、段々と大きくなってしまう。
見られたく無いのに、見られたいと言う矛盾に目を見開きながら、陽菜はビリビリと稲妻が体を駆け抜けて行くのを感じた。
「ダメッ、……だ、めぇ、また、ぃく、達きます……ァアッ、あ、ぁ…………ッ!」
絶頂に辿り着くと、陽菜は大きな嬌声を上げて、最賀の掌を沢山濡らしてついに達する。
淫液が大量に分泌され、じっとりと最賀の指に纏わりつく。膣壁を収縮させて、離したがらない。陽菜は浅い呼吸をしながら涙で頬を濡らす。
「俺の手でこんなに乱れて……可愛いな」
見下ろされる視線は情欲を潜ませたもので、堪らず漏れた吐息は熱っぽい。最賀自身も辛そう、と言うよりは窮屈そうだ。
最賀は陽菜の目元を手で覆って、視界を塞ぐ。避妊具を装着するのを見られたく無いらしい。あまり見るもんじゃないと、昔もそうやって陽菜が興味を示しても情報を遮断させる。
ぱち、と微かに音がして陽菜は最賀の掌が退いた瞬間に手を差し込んだ。足の間にある屹立に触れると、かなり太い剛結が中に入りたがっている。陽菜の胎内をこれから蹂躙するものだ。
「────今日は、駄目だぞ」
陽菜の行動に先手を打つのが早い。最賀は陽菜の下唇を甘噛みして制止した。陽菜が最賀のものを咥えるのを阻止するのだけは、とにかく上手い。一度喉奥を刺激してしまい、嘔吐したからだろうか。
そんなことは、とうの昔のことなのに。最賀は逃避行の最後まで、片手で数える程度しかさせてくれなかった。
「……私も、したいです」
「積極的だな?」
「テクニシャンじゃないですが、でも……」
「────分かった、今度な? 今日はうんと俺がアンタを可愛がる番なので」
うんと甘やかされるようになって、陽菜は自尊心を少しずつだが取り戻した。
昔は自分が悪いと最初に責めるのは陽菜自身だった。
しかし、最後に味方になるのは己であることをとうの昔に置き去りにしたことを思い出したのである。
だが、この目の前にいる男の侘しさや痛みは誰もが見て見ぬ振りをしてきたのだろう。このぽっかりと空いた五年と言う溝を、単なる一時的な傷の舐め合いで埋めるには深過ぎる。
陽菜は選択肢を預けて来た自分を改め、此処にいるのだから。
「……忠さん……我儘言っても良いですか」
「どうぞ?」
「──仕事以外で、お会いしたら……お名前で、呼んでも良いでしょうか」
「俺は面接中何度も名前で呼びそうになったけれど?」
「え?」
「小野寺さんが目を光らせてるお陰で堪えたが……なんてな。まあ、分別は図れるから」
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ましてや、知り合いならば尚更心配だったはずだ。小野寺はそう言った面でも、看護師として尊敬する人物である。
大人な対応に、陽菜は仕事とプライベートを分けることの重要さをより認識させられる。
以前は、感情の赴くままに、当直室で逢引してしまったのだから。陽菜は今度こそ、足を踏み外してはならないのだ。
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