魔の巣食う校舎で私は笑う

弥生菊美

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第18話 噂の真相?

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「そういえばさっき生贄がどうとか言ってたけど、それって何?学生の間でそんな噂流れてるの?」

桜井先生がそう問えば、お梅君がすかさず

「言ってるのはオカルト研だけです。」

その言葉に私も頷く、初耳だったし

「20年に一度、その年に立て続けに複数人亡くなるというのは不可解じゃないですか?」

 お松君の言葉を聞いた桜井先生が、ふむーと言いながら缶に入っていたジャムのついたクッキーを手に取り口の中に放り込むとソファーの背もたれに寄りかかる。クッキーをかみ砕きながら、何かを考えている様子の桜井先生に3人が何かあるのかと視線を向ける。

「20年…と言ったけど、だいぶ誤差があると思うんだけど?前回職員が亡くなったのは18年前だったと思うけどね?」

「おおよそ20年です桜井先生」

 知れっと答えるお松君の言葉に、お梅君と私の視線が刺さる。今しがたの言葉で、先ほどまでの生贄云々の信ぴょう性が急激に下がる。先ほどまで自分が生贄代わりにされるんじゃと脅えていたのに!!お松君!!!怒りの眼差しを向けていると、今度はお梅君が溜息を吐く

「まぁでも、20年とは言わず十数年おきに1人自殺者や事故死が出ると立て続けに人が死ぬってのは、馬鹿馬鹿しいとは俺は思うけど…。何かあるって言いだす連中が居るのも理解できます。」

「まぁね……。心霊とかオカルトとかに当てはめるなら、ここは土地…場所がら人の怨念が溜まりやすいのかもね。生きたいと強く願うのに、生きることができない無念、それに…こういった古い組織は政治の縮図みたいなものだから、教授先生やお医者様、野心家の多い場所は恨み嫉みは多い。人の恨みほど恐ろしいものはない。なんせ生者をも殺すからね……。」

 心霊とかそういった類をまるで信じてないと言ったスタンスだった桜井先生の口から、そういった話が出るとは思わず驚いて固まってしまう。

「つまり、20年に一度人間の恨みつらみの瘴気みたいなものが溜まって、生きてる人間がそれに充てられると、自殺や事故などに繋がりやすくなる。なるほど!!凄い!!!」

「んぁ…まぁー、そういう事になるのかなー?」

 罰が悪そうに言う桜井先生に疑問を覚えつつも、確かに悪い空気は溜まりそうだな…。と、思ってしまう。果たしてそれが心霊現象の原因なのか、立て続けに人が亡くなる原因に結び浮くと考えるのは、人として医師を目指すものとして非科学的だとも思うけど。自分が体験してきた事を考えると、そういった曖昧な話もあり得るかもしれないと思ってしまう。

「もう一つ、この大学の作りって不思議な形してますよね?」

 そう言うと、ボロボロのノートの最後のページから黄ばんだ折りたたまれた紙を取り出すと、段ボールの上に広げる。よく見ればこの大学の敷地図だった。お松君の言う通りこの大学の敷地図を見て思うのは、つくづく不思議な建物の建て方をしている。建て増ししていったからと聞いているが、どの建物も必ず1号館に繋がっている。

 中庭と言っても大学の中心部分にあるわけではなく、だいぶ端っこに追いやられている。なので、建物が乱立している外の通路は細く、見通しが悪いため迷路と化している。大学1年生は大抵迷子になるので1号館を通って目的の建物に行くことが多い。

「言われてみるとそうだねー。」

興味なさそうな声を出す桜井先生が身を起こしてクッキーに手を伸ばす。

「てっきり僕は一号館がこの大学の中心にあると思っていたんですけど、この図を見る限り中心はこの建物、というより本当にど真ん中に建っている。」

どれどれと、お梅君と共にのぞき込めばそこは

「教授棟?」と私がお松君を見れば頷く

「教授と理事達の部屋が集まってる建物だよ、僕たち生徒は絶対に入れない場所」

「それが何…まさかそこにこの大学の心霊現象の原因があるとか言いたいわけ?」

桜井先生があからさまに嫌そうな顔をしてお松君をみると「はいっ!」と元気良く返事をする。

「いやまぁー、確かに教授棟はいろいろと吹き溜まってそうだけど、ないない。大学の理事長に教授陣なんて他人の恨み嫉みなんてどこ吹く風、そんな奴ら跡形もなくひねり潰す!みたいな強靭な精神の持ち主達が揃ってるんだから、幽霊も泣いて逃げ出すでしょ」

「いやいや!何か隠しているんじゃないかと!心霊現象の原因を!」

「お松君、さすがにそれは…違う意味で危ないというか…。」

「そうだぞ!おまえ!やめとけって、探ったら幽霊なんかよりよっぽどヤバいもの出てくると思うぞ…」

 私たちの不安げな様子をみても、お松君は「そんなードラマみたいな事ないない」とあっけらかんとしている。

「佐倉さんとお梅少年の言う通りだよ、この大学を追い出される可能性も大いにある。学生が立ち入り禁止エリアに、それこそ先日のようにカメラ持って立ち入ってみなさいな、警備員が駆け付けて親御さんも呼ばれるだろうねー」

「うぐっ…」

お松君の喉が詰まったかのような音が部屋に響くと、桜井先生が溜息をつく。

「大人しく学業に専念しなさい。君たちのすべきことは勉強だ。ただ只管に医学を学び、医師になり、そして人を救えばいい。ただ自分の進むべき道をまっすぐと見据え、他にかまうな、そうすれば悪いものは君たちに近寄らないだろうさ、馬鹿高い学費払ってるんでしょ?」

そう言われるとお松君はますます小さくなっていく、このお松君を大人しくさせられる桜井先生はやはり凄い。

「さて、サボりすぎた。そろそろ戻らないと見つかってしまう。
クッキーご馳走様、残りは君達で食べてもよいし、余ったらここに置いといて、また部屋に来た時に頂くから」

そう言うと、立ち上がり白衣を正して出口へと向かう。

「あぁー、それと!ここに出入りするのは構わないけど、騒ぐな散らかすな検体に障るな!
22時前には帰りなさい!」

そう言ってお松君を指さすと、お松君が首振り人形のようにコクコクと首を縦に振る。

「よろしい!」と、桜井先生が力強く言うと引き戸を開けて、さっさと出て行ってしまった。



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