魔の巣食う校舎で私は笑う

弥生菊美

文字の大きさ
20 / 40

第20話 刑事達の疑念

しおりを挟む


 
 「はぁ?右手首だけ見つからない?なんで?」

 話し声やPCを打つ音でざわついていた署内に三郷の素っ頓狂な声が響いて一瞬静まり返ったが、またすぐに署内のざわつきは戻った。

 自分のデスクの古びた鼠色の椅子にどかりと寄りかかり、器用に片手でPCを操作しながらカップ焼きそばをすすっていた三郷に、コンビニから戻ってきた小林が、頼んでいたコンビニコーヒーを差し出しながら発した言葉に思わず素っ頓狂な声も出ると言うものだ。

「それがわかったら苦労しませんって、そもそも白骨化遺体は俺らの管轄じゃなないですし、担当の曾根の話じゃ2号館の地下の部屋全部探したらしいですけど、出てこなかったって話です。」

 そう言って、三郷の隣の席に座るとコンビニ袋の中から、バジルトマトのパスタに8品目のサラダ、ヨーグルトに豆乳を取り出す。強面な見た目に似合わず意識高い系女子みたいな昼飯の内容を横目に自分はカップ焼きそばに向き直る。

「他に外傷はなかったのか?」

「頭がい骨陥没に、頚椎骨折、他にも骨折箇所があったようで、階段から転落したんじゃないかって話です。」

「当時は無理心中か痴情のもつれの末に…って話だったらしいが、その分だと揉めた末に意図せず転落死させてしまい。自責の念を感じてってところか?そんな単純な話に思えんのだがなー」

「三郷さんずいぶん白骨化遺体にこだわりますね?沼田医師の方も力入れてくださいよ」

「めったなこと言うな、力入れてるだろ沼田医師の方にもな、がっ…こうも周りがだんまりじゃな…状況から見て転倒した際に腹部に包丁が刺さったか、自殺かって見た目だが、自殺する理由もみつからない。それに、直前に言い争っている声を聞いている者がいた。殺人にはならなくとも、揉みあいの末の結果か…どちらにせよ証拠が足りない。参るねーまったく」

「あっ、そうそう。話戻りますけど、白骨化遺体は手首が見つからないんで、1号館の調査の話が上がってるらしいですよ。」

「はぁ?どして1号館?」

「昔から1号館の地下一階には死体が埋まってると言う噂があるとかで」

「おいおい。上も焼きが回ったか?そんな噂話で調査するのか?大体調査はいれるのかよ?」

「理事長はだいぶ渋ってたらしいですけど、沼田医師の件でだんまり決め込んでる代わりのつもりか、許可下りたって話です。」

「そりゃ、何も出ないって言ってるようなもんじゃねーか?」

「だったら渋らないんじゃないですか?」

「渋ったふりだろ。」

「まっ、鬼が出るか蛇が出るかですね。」

「はん、0か100かの間違いだ。」

 そう言いながら再び焼きそばを食べ始める。その頭の片隅で思うのは、この事件が切っても切り離せない何かがあるような気がするという事、感はあながち馬鹿にならない。

がっ、立証するものがなきゃ意味がない。

「まいったねー」

そう呟きながら、小林の買って来たコーヒーに手を伸ばし一口飲めば

「んっぐ!?お前まさかこれカフェラテか!?」

「三郷さん栄養偏ってそうだったんで、カルシウムも必要だろうと後輩からの気遣いです。」

「いらねぇーよそんな気遣い!!通りで釣りが返ってこないわけだよ全く…」

 ブツブツ文句を言いつつもカフェラテを飲む三郷に、小林は「密かに三郷さん健康化計画」の第一歩を踏み出せたことに心の中でガッツポーズをしたのだった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...