ギターと消しゴム

赤たまねぎ

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ギターと消しゴム

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部屋の主がいなくなった部屋でギターと消しゴムが会話する。

「なあ? なんか話さない?」

苛立った様子で話しかけるギターに、消しゴムは怯えながらも返事する。

「え~と、なに話す?」
「俺たちの共通点!」

大きな声を出す。

「消しゴムとギターで? ないでしょ、共通点」
「いや、ある!!」
「ないと思うけど……」

思いつかない消しゴムに、ギターはクイズだと言う。

ギターは消しゴムにどうしても答えて欲しいのだ。

消しゴムは考える。

「う~ん、指で弾くとか?」
「音鳴らないだろう、消しゴムは!」

楽器であるギターは阿呆なことをいう消しゴムにツッコむが「いやいや、」と消しゴムは説明する。

「僕らはお尻を弾かれるんだよ」
「お尻を? なんで?」
「机の上に並べられてね、落ちるか落ちないかの縁ギリギリまで飛ばせるかを子どもたちが競い合うんだ」
「ロックかよ!!」

文房具の消しゴムがチキンレースを行っていたことに衝撃を受けるギター。

「そうじゃねえよ! それも確かに共通点だけどよ、あるだろ他に!」
「え、他に?」
「今の俺の姿を見て、思い付くことあるだろ!」

消しゴムは畳のシワを数えるようにギターを見る。

「中折してるね」
「そうだろ? まず、そこをツッコめよ! 声かけろよ!」
「いや。ロックだから、いいのかなって」
「物は大事にって、お婆ちゃんに教わらなかったか!?」

それから10分ぐらいだろう。立腹したギターの「ものは大事に」と始まった倫理観の大切さを訴える話は、ずっと続いている。

「ーーというわけだ。よく分かったか?」
「うん。よく分かったよ。それで? 結局のところ、僕たちの共通点って、何だったの?」
「中折するところだ!」
「消しゴムは中折れしないよ」
「ロックに扱えば中折するだろう!」

消しゴムのロックとは?

言葉の意味は不明だったけど、消しゴムはギターの言わんとしていることが凡そ理解することが出来た。

ロックなパフォーマンスでギターは折れる。

消しゴムも力の入れ過ぎで中折してしまう。

「もしかして、共通点って折れてしまう、こと?」
「正解だ!」

ギターは嬉しそうに言ったあと、また怒りだす。

「だが! 本当は丁寧に大事に扱ってさえいれば俺も消しゴムも折れることはない!」
「ギターはロックだから」
「ロックで何もかも片付けるな、嫌いだ!」

消しゴムの言葉が気に入らないギター。

「お前は怒らないのか!」
「え、なんで?」
「消しゴムなんて、最後まで使われずに捨てられる存在だろう!」

否定できない消しゴム。

「お前はもう少し怒っていいんだぞ!」
「いや。僕はヌリ消しとして再生出来るから」

それは、使う人による。

たが、ギターはその言葉を信じてくれた。

「嘘だろ! フェニックスかよ! ロックだ!」
「ゴムだよ」

鳥でもロックでもない。

「はっ! 消しゴムとヌリ消しは違うものだった、騙しやがったな!」
「そんなことないよ。どこかの工場でヌリ消しから消しゴム作ってるって言ってたもん」

ニュースは知っててもフェイクニュースは知らない消しゴムはギターの言葉に反論する。

その後も、ヌリ消しは消しゴム論争が続き、部屋の主が帰るまで続いた。

一週間後、中折れしたギターは中古ギターショップで引き取られ、分解された。

使える部品を残し、ギターの修理に転用されるらしい。

元気に「ロック、ロック!」と言っているとのこと。

その話をアイスピック(ギターを弾く道具)から聞いたとき、しぶといギターだと、消しゴムは思った。
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