カムバック・マイゲームズ~私の世界を取り戻すために、私は人を作る~

赤たまねぎ

文字の大きさ
24 / 32
更なるプロデュース

05 アイドルとゲーマー

しおりを挟む
 アイドルになってから、人の視線を気にするようになって――人の目を見ればどのように自分が映っているのか判るようになった。

 才能とかではない。所謂、職業病。

 人に見られる職業に就いた人は、人に見られていることに慣れていく。

 アイドルとして生きていく上で、一生の付き合いになるこの病は治ることはないだろう。


 ◇ ◇ ◇


 
「ミドリちゃん、凄い……」

 膝を付いている円藤さんの呆けた声が聞こえる。

 円藤さんの両腕を切り落とした技――『土蜘蛛』と叫んでいた。その技を私は力が込められる寸で押し殺すことで、鍔上げを防いだ。

 ――どうしてかな? さっきまでとの戦いとは違って、今は謎の高揚感がある。

 ――なんだろう? 気がする。

 不和ミドリは自分に起きている謎の現象に戸惑いながらも、『夜武者』からの剣を避ける。

 さっきまで避けられなかったはずの、人間ではあり得ない筋肉運動による急な切り返しを避ける。

 そして――『歌劇・切り込み』

『…………!!』

 必殺技は『夜武者』の刀で受け止められる。完全に威力を殺された。

 だが、確かな手応えを感じていた。

 こちらが押している――それを不和ミドリは悟っていた。

 不和ミドリは、言葉を発しない『夜武者』から苦悶の声を聴いた。

 耳ではなく、その目から。

「…………」

 相手はのっぺらぼうの鬼。あるはずのない目から声が聞こえたなど、変な頓智みたいだなと、不破ミドリはどこか可笑しく思い――それが顔に出た。

 その表情は少し口が裂けたように錯覚して見え――少し蛇に似ていた。

 そこからは圧倒的だった。

 互いの残り僅かな体力HPが減ってさえいないが、『夜武者』は不和ミドリの応酬を受け止めることで精一杯で足を下げ続けている。反撃や返しの一撃は、当然『夜武者』も繰り出しているのだが、全て完璧に回避されていた。


 ◇ ◇ ◇


 盤上から俯瞰しているはずの黒部フネは、謎の現象に冷や汗を出す。

「……ふざけるなよ」

 黒部フネは自動操縦から手動操縦に切り替える際、最大の敵は円藤桜音だと思っていた。執着心が人の倍ある彼女に勝つには、かなりのゲームセンスが必要となる。

 だから、黒部フネは『全力無双』を80プレイした。必殺技の連続、コマンド入力が難しい小技なども目を瞑って行えるレベルまで持っていった。

 そして、作戦通りに円藤桜音を戦闘不能にした。

 ――なのに。

「……また、避けられた!」

 ――だからこそ、円藤桜音ではなく不和ミドリに押されている現状に納得が出来ない。

「こっちがどれだけゲームしてきたと思ってんのよ、素人の癖に!」

 侮蔑的に言えば、不破ミドリはアイドル馬鹿だ。アイドルにしか脳がない。黒部フネの提案に乗ったのも、所詮アイドルとしてレベルアップするための踏み台としての認識なんだろう。

 黒部フネが最近思ったことだ。それに対して不満はない。こちらも相手を都合よく利用したのだ。不満を言うほうが間違っている。

 だが、ゲーム時間が圧倒的に不足している相手に負けるのは、一人のゲーマーとしてあってはならない。更に、単なるゲーマーではなくゲームそのものを創ったのだ。

 ゲームという舞台で黒部フネゲーマー不和ミドリアイドルに負けるなど、屈辱以外の何でもない。

 負けてはならない――そんな思いで黒部フネはコマンドを押す。
 
「――――あっ」

 『水打ち八つ』――技が発動する直前、不破ミドリの刀と接触し――折れた。

 武器破壊。武器にある一定以上の負荷がかかると発生するシステム。これまでの31回の戦闘で『夜武者』が何度か円藤桜音と不和ミドリに行った妙技の一つだ。

 それが、この土壇場でやり返された。

 不和ミドリは必殺技を繰り出そうとしている。『夜武者』はそれを防ぐ術を失っており、一先ず距離を取ろうとしたが、少し遅かった。

 大きく踏み込んだ不和ミドリの『電演目・核狙い』が『夜武者』の残り体力HPを全損させた。

 『夜武者』黒部フネは不和ミドリに敗北した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...