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09 モンスと相談

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 あの後、モンスと相談した。

「アンコ、それは難しい話だな」
「そうなの?」
「そのレベルまで求めるとなると、お前は宿屋から鍛冶屋になる必要がある」

 モンスは渋い顔で言う。

「そんなのダメだよ」
「だよな~。だが、俺が思い付くのは薄い鉄の板に削るように絵を描くことぐらいだ。しかも、それに色を付けるとなると、これは鍛冶屋の領分を超えちまう」
「色を付けるって言ったかな?」

 言ってないと思う。

「だが、色を付けられるんだったら付けたいだろう」
「付けたい」
「だったが、俺の領分を超えちまうな。他の専門家に話してみたらどうだ」
「うん。分かった」

 取り合えず、木の板により細かく絵を描くための道具を作ってくれるという約束はそのままにしておいた。

 5年後とはいえ、楽しみがなくなるのは嫌だったからだ。

「なあ。アンコ。その木の板に絵を描いたものだったか? 作るのはいいが、作った後はどうするんだ?」
「考えていない」
「……はあ~。どうやらお前は根っからの芸術肌の人間みたいだ」
「どういうこと?」

 俺はカードが創りたいだけだ。

「いいか。普通は儲けが先に来て、それでもの作るというのが当たり前だ。お前の場合、ものが先に来て、儲けが後から来ている。つまり、お金と時間だけ無くなるだけで、旨みがこれっぽっちもない。そんなの、貴族がやる趣味だ」
「つまり、やっちゃダメなの?」
「ダメとは言わねえよ? ただ、せっかくやるなら儲けが出るようにしないと。いつか、お前自身を苦しめることになるぞ」

 モンスは真剣に俺に説明した。

 確かに、村の宿屋の息子が行う趣味にしては、少し異常だ。今のところ、お金はかかっていないが、時間をかけている気はしている。

 せっかくやるなら、儲けを出さないといけない。

 今のは、かなりの名言のような気がする。

「うん。分かった。ちょっと考えてみる」
「おし。偉いぞ」

 モンスは俺を褒めた。

 ガシガシと強めの撫で方だった、痛いぞ。
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