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それから僕たちは、沢山の時間を過ごした。
7月9日、2つ目。
〝放課後デートがしたい〟
学校に通えていない彼女は放課後に行うデートに憧れていたらしい。僕の学校が終わった後、近くの駅で待ち合わせの約束をした。授業中、ずっと彼女の事を考えていた。所謂〝初デート〟というやつに若干15歳の僕は心底舞い上がっていたのだ。学校終了の合図を告げるチャイム。高揚する気持ちを抑え、さも何も無いかのように出来るだけ急いで身支度を整え、学校を後にした。すると、校門の方に数人の生徒が集まっていた。なんの騒ぎだ、もう待ち合わせまでそんなに時間がないのに、と足早に通り過ぎようとすると、そこには彼女がいた。
「来ちゃった」と微笑む彼女に僕の顔はきっと海老のように真っ赤な顔になっていたに違いない。行こう、と手を差し出す彼女の手を恐る恐るとり、僕たちは歩き出した。普段から全く目立たない僕に可愛い彼女が……?!と周囲がどよめいているのをなんとなく感じたが気にしないことにした。その後、その時流行っていたパンケーキを食べた。もちろん彼女の要望だ。生クリームたっぷりのパンケーキをハムスターのように口いっぱいに美味しそうに頬張る彼女はとても可愛らしかった。手を繋いで彼女の家まで送り届け、来週の〝したいこと〟を確認した後、いつものようにまたね、と解散した。この日、僕はアルバイトをする事を決意したのである。
3つ目。
〝瑞希くんのお友達と遊んでみたい〟
これは困った。何を隠そう、僕には友達がいない。そう、一人を除いて。だが、あいつに頼むのは気が引ける。でも、彼女の願いは叶えてあげたかった。悩んだ末、僕は春香に声をかけた。予想に反して嬉しそうな反応を見せた春香はノリノリで着いてくることになった。また、なりゆきで同じクラスの野々宮葵(ののみやあおい)も来ることになった。中性的な名前をしているが彼は男である。いつも本を読んでいて、ほとんど話したことがなかったし、あまり沢山話すイメージもなかったので他クラスの春香と接点がある事に驚いた。委員会が春香と同じで仲良くなったらしい。
春香曰く「人数が多い方が楽しいでしょ!」とのことだった。何を考えているのか、と思ったがまあ春香の事だから何も考えてないんだろうな、と思うことにした。当日、僕たちは高校生らしく地元の中で大きなショッピングモールに向かった。彼女はとても喜んでいた。春香曰く、女子的にはダブルデートにテンションが上がるらしい。最も、野々宮と春香は付き合ってる訳では無いのだからダブルデートが成立するのか疑問だったが、そこは深い問題じゃないの!と、すっかり仲良くなった春香と彼女が口を揃えて言ってきたので僕と野々宮は顔を見合わせて苦笑いした。突然話すことになり正直当時は少々気まずさを感じていた僕と野々宮だが、今ではかけがえのない友人の一人で、あの時話すことになって良かったと思う。春香と綾は連絡先を交換したらしい。 「瑞樹よりいっぱい綾ちゃんと遊ぶもんねー!!」なんて言っていた。解散した後、2人になって、
「綾ちゃんの病気、治ったりしないのかな。」
春香が呟いた。いつにもなく、顔を見なくても伝わるほど真剣な声だった。僕は少し考えた後、難しいんじゃない。と言った。春香は「そっか、」とだけ言って 少し俯いた。暫く沈黙が流れたがやがて、
「だったら沢山想い出作らないとね。」と言った。春香は泣きそうな時拳を握る癖がある。小さい頃から変わらない。少し目をやると春香は案の定拳をぎゅっと握っていた。が、気付かないフリをして、そうだな、とだけ答えた。
それからも僕たちは毎週金曜日に1つずつ、やりたいことを叶えていった。2人で決めたこともあったがほとんどは彼女のやりたいことだった。が、僕はそれでよかった。楽しそうな彼女を見るだけで僕も楽しくなれたし、幸せだった。相手が喜んでいる顔を見るだけで~…なんてドラマの中だけの話だと思っていたし、今まで知らなかった感情だった。ゲームセンターに行ってUFOキャッチャーに沢山のお金をとかしたり、4人でバッティングセンターに行って対決したりした。この頃にはすっかり僕と野々宮も打ち解けていて、2人でもよく話すようになっていた。話してみると共通の趣味がいくつかあり、僕達は気が合う事に気付いた。自然に学校でも野々宮といるようになった。また、4人でグループトークを作り、トークで話したり電話したりするのが日常になっていた。綾は学校に通えていないと以前話したと思うが、正確に言うと通信制の学校に通っているのだが、年に数回の登校ではなかなか友達は出来ないようで。病院で出会って懐かれたらしい子どもたちとよく遊んであげているようだった。なので彼女的には同世代の友達と遊ぶのはとても貴重で楽しいらしい。僕に友達が居たら間違いなく春香は連れて行っていなかったから、こんなに仲良くなるなら友達が居なくてよかったな、と思った。野々宮は苦笑いしていた。
8月13日、7つ目 綾は水鉄砲をしたい、と言った。
2人でやってもつまらないので勿論春香と野々宮も呼んだ。せっかくだから、とおもちゃ屋さんまで出向き、本格的な水鉄砲を買って遊んだ。全力で楽しんだ僕達は勿論びしょびしょになって帰ったので、後日僕と野々宮は風邪を引いた。綾と春香はそんな僕達を情けない、と笑っていた。
7月9日、2つ目。
〝放課後デートがしたい〟
学校に通えていない彼女は放課後に行うデートに憧れていたらしい。僕の学校が終わった後、近くの駅で待ち合わせの約束をした。授業中、ずっと彼女の事を考えていた。所謂〝初デート〟というやつに若干15歳の僕は心底舞い上がっていたのだ。学校終了の合図を告げるチャイム。高揚する気持ちを抑え、さも何も無いかのように出来るだけ急いで身支度を整え、学校を後にした。すると、校門の方に数人の生徒が集まっていた。なんの騒ぎだ、もう待ち合わせまでそんなに時間がないのに、と足早に通り過ぎようとすると、そこには彼女がいた。
「来ちゃった」と微笑む彼女に僕の顔はきっと海老のように真っ赤な顔になっていたに違いない。行こう、と手を差し出す彼女の手を恐る恐るとり、僕たちは歩き出した。普段から全く目立たない僕に可愛い彼女が……?!と周囲がどよめいているのをなんとなく感じたが気にしないことにした。その後、その時流行っていたパンケーキを食べた。もちろん彼女の要望だ。生クリームたっぷりのパンケーキをハムスターのように口いっぱいに美味しそうに頬張る彼女はとても可愛らしかった。手を繋いで彼女の家まで送り届け、来週の〝したいこと〟を確認した後、いつものようにまたね、と解散した。この日、僕はアルバイトをする事を決意したのである。
3つ目。
〝瑞希くんのお友達と遊んでみたい〟
これは困った。何を隠そう、僕には友達がいない。そう、一人を除いて。だが、あいつに頼むのは気が引ける。でも、彼女の願いは叶えてあげたかった。悩んだ末、僕は春香に声をかけた。予想に反して嬉しそうな反応を見せた春香はノリノリで着いてくることになった。また、なりゆきで同じクラスの野々宮葵(ののみやあおい)も来ることになった。中性的な名前をしているが彼は男である。いつも本を読んでいて、ほとんど話したことがなかったし、あまり沢山話すイメージもなかったので他クラスの春香と接点がある事に驚いた。委員会が春香と同じで仲良くなったらしい。
春香曰く「人数が多い方が楽しいでしょ!」とのことだった。何を考えているのか、と思ったがまあ春香の事だから何も考えてないんだろうな、と思うことにした。当日、僕たちは高校生らしく地元の中で大きなショッピングモールに向かった。彼女はとても喜んでいた。春香曰く、女子的にはダブルデートにテンションが上がるらしい。最も、野々宮と春香は付き合ってる訳では無いのだからダブルデートが成立するのか疑問だったが、そこは深い問題じゃないの!と、すっかり仲良くなった春香と彼女が口を揃えて言ってきたので僕と野々宮は顔を見合わせて苦笑いした。突然話すことになり正直当時は少々気まずさを感じていた僕と野々宮だが、今ではかけがえのない友人の一人で、あの時話すことになって良かったと思う。春香と綾は連絡先を交換したらしい。 「瑞樹よりいっぱい綾ちゃんと遊ぶもんねー!!」なんて言っていた。解散した後、2人になって、
「綾ちゃんの病気、治ったりしないのかな。」
春香が呟いた。いつにもなく、顔を見なくても伝わるほど真剣な声だった。僕は少し考えた後、難しいんじゃない。と言った。春香は「そっか、」とだけ言って 少し俯いた。暫く沈黙が流れたがやがて、
「だったら沢山想い出作らないとね。」と言った。春香は泣きそうな時拳を握る癖がある。小さい頃から変わらない。少し目をやると春香は案の定拳をぎゅっと握っていた。が、気付かないフリをして、そうだな、とだけ答えた。
それからも僕たちは毎週金曜日に1つずつ、やりたいことを叶えていった。2人で決めたこともあったがほとんどは彼女のやりたいことだった。が、僕はそれでよかった。楽しそうな彼女を見るだけで僕も楽しくなれたし、幸せだった。相手が喜んでいる顔を見るだけで~…なんてドラマの中だけの話だと思っていたし、今まで知らなかった感情だった。ゲームセンターに行ってUFOキャッチャーに沢山のお金をとかしたり、4人でバッティングセンターに行って対決したりした。この頃にはすっかり僕と野々宮も打ち解けていて、2人でもよく話すようになっていた。話してみると共通の趣味がいくつかあり、僕達は気が合う事に気付いた。自然に学校でも野々宮といるようになった。また、4人でグループトークを作り、トークで話したり電話したりするのが日常になっていた。綾は学校に通えていないと以前話したと思うが、正確に言うと通信制の学校に通っているのだが、年に数回の登校ではなかなか友達は出来ないようで。病院で出会って懐かれたらしい子どもたちとよく遊んであげているようだった。なので彼女的には同世代の友達と遊ぶのはとても貴重で楽しいらしい。僕に友達が居たら間違いなく春香は連れて行っていなかったから、こんなに仲良くなるなら友達が居なくてよかったな、と思った。野々宮は苦笑いしていた。
8月13日、7つ目 綾は水鉄砲をしたい、と言った。
2人でやってもつまらないので勿論春香と野々宮も呼んだ。せっかくだから、とおもちゃ屋さんまで出向き、本格的な水鉄砲を買って遊んだ。全力で楽しんだ僕達は勿論びしょびしょになって帰ったので、後日僕と野々宮は風邪を引いた。綾と春香はそんな僕達を情けない、と笑っていた。
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