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追いかけてくるかもしれないという期待
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「……っ!」
俺は頷くことも首を横に振って否定することもできず、東谷の視線から逃げるように、足元へ置いていたカバンを手に取った。
そして、ノートパソコンとスマホを押し込むように、カバンへと詰めた。
(あっ……)
ふと、ずっと机の上で飾ったままにしていたキーホルダーが目に入り、俺は慌てて机の引き出しに放り込んだ。
「俺、行くから……」
そう言い残して、俺はカバンを抱き抱えながら、走ってエレベーターホールへと向かった。
首から下げていた社員証を慌てて外し終えたころ、窓から差し込む月明りが照らす、薄暗いエレベーターホールに到着する。
(早く……。そうじゃないと、俺は……)
下りるマークのボタンを、俺は何かに追われているかのように何度も押し続けた。
頭の中で先ほど顔を近づけて来た東谷の顔と、三年前の見下ろされた時の顔が重なる。
(ダメだ……今思い出したら……)
俺は無意識に首元へ貼られた大判の絆創膏の存在を、ワイシャツの上から何度も確認するようになぞった。
すると、やっとエレベーターが到着してドアが開いた。
暗い中にいたせいか、少し眩しく感じるエレベーターの中に駆け込むと、俺は息を吐いて壁に背を預けた。
(早く閉じないと……)
そう思っているなら、さっさと閉まるボタンを押せばいいものを、押せない自分がいることに気付く。
走って疲れたせいか、それとも東谷が追いかけてくるかもしれないという期待なのか、自分でも分からなかった。
「……」
自動で閉まっていくエレベーターのドアを、俺はカバンを抱きしめる腕に力を込めながら、黙って見つめ続けた。
俺は頷くことも首を横に振って否定することもできず、東谷の視線から逃げるように、足元へ置いていたカバンを手に取った。
そして、ノートパソコンとスマホを押し込むように、カバンへと詰めた。
(あっ……)
ふと、ずっと机の上で飾ったままにしていたキーホルダーが目に入り、俺は慌てて机の引き出しに放り込んだ。
「俺、行くから……」
そう言い残して、俺はカバンを抱き抱えながら、走ってエレベーターホールへと向かった。
首から下げていた社員証を慌てて外し終えたころ、窓から差し込む月明りが照らす、薄暗いエレベーターホールに到着する。
(早く……。そうじゃないと、俺は……)
下りるマークのボタンを、俺は何かに追われているかのように何度も押し続けた。
頭の中で先ほど顔を近づけて来た東谷の顔と、三年前の見下ろされた時の顔が重なる。
(ダメだ……今思い出したら……)
俺は無意識に首元へ貼られた大判の絆創膏の存在を、ワイシャツの上から何度も確認するようになぞった。
すると、やっとエレベーターが到着してドアが開いた。
暗い中にいたせいか、少し眩しく感じるエレベーターの中に駆け込むと、俺は息を吐いて壁に背を預けた。
(早く閉じないと……)
そう思っているなら、さっさと閉まるボタンを押せばいいものを、押せない自分がいることに気付く。
走って疲れたせいか、それとも東谷が追いかけてくるかもしれないという期待なのか、自分でも分からなかった。
「……」
自動で閉まっていくエレベーターのドアを、俺はカバンを抱きしめる腕に力を込めながら、黙って見つめ続けた。
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