【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~

つきよの

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もう、迷わない……

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「このクソヤロウが! 俺に死んで欲しかったんなら自分でやりやがれ!」

 東谷の血がついた手で叩いたため、くっきりと将人の頬に俺の手形が残った。

 頬を叩かれた将人は、茫然と足元に落ちているナイフを見つめて動かなかったため、俺は構わず将人の胸ぐらを掴んだ。

「お前ができないなら、俺がお前の前から消えてやるよ! ただし、東谷に手を出したり、あの子とお腹の子から責任とらずに逃げだしてみろ。俺が代わりにお前を殺してやるからな! 覚えとけ!」

 人生でこんなにも大声を出したことはないと思えるほど声を張り、俺は将人の胸ぐらから手を離した。

 すると、将人は足元から崩れるように、茫然自失でその場に膝をついた。

「すみません! ただの痴話喧嘩ですので、警察は不要です。ご迷惑をおかけしました」

 俺は息を吸い込んで、大勢のギャラリーへ聞こえるように叫ぶと、今度は世羅の元に向かった。

 肩を震わせ俯く世羅に目線を合わせるように、俺はそっと膝をついて顔を覗き込んだ。

「ごめんな……。俺の存在がこんなにも君を苦しめて、追いつめてしまって……。でも、もうお終いだから……」

「あっ……あっ……」

 世羅は何か言いたそうだったが、震えて声にならず、色素の薄い綺麗な瞳が揺らめくと、また大粒の涙が溢れだした。

(なんて綺麗な涙なんだろう……)

 優しく手を差し伸べて拭ってあげたかったが、俺は何も言わず立ち上がり、東谷の元に向かった。

「大丈夫か?」

「これくらい、問題ないですよ」

 東谷は俺のハンカチで傷口を抑えながら、近くにいた社員へ声をかけた。

「申し訳ないのですが、こんな状態なので、東谷晧と勇利渉は早退すると伝えてください」

 人垣を抜けて、俺たちはゆっくりとエントランスに向かっていき、外へ向かう。

 もう日が落ちかけているはずなのに、外に出た途端、不思議と今までで一番眩しいと俺は感じた。

 目の前の大通りでタクシーを止めて、東谷を支えるようにしながら二人で乗り込むと、ケガをしていない反対の手で、東谷に手を握られた。

(もう、迷わない……)

 そう決めた俺は、東谷の手をしっかりと握り返すと、東谷は同じ力で握り返してくれた。
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