【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~

つきよの

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離れたくない……

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「お前、本当にバカだろう……」

 近くの病院で傷の応急処置を済ませた東谷と俺は、そのまま東谷が滞在するホテルに到着した。

「自分でも大概だなって思ってますよ。でも、勇利先輩を守りたかったので」

「……っ!」

 こっちが恥ずかしくなることをさらりと言われ、俺は二人っきりのエレベーター内で言葉が続かなくなった。

 速まる心臓の音だけが耳に響きながら、湧き立つ思いを抑えるため、ずっと握られたままで離されない手に、俺はそっと力を込めた。

(ああ、もう……)

 それでも収まらない思いを悟られないよう、東谷に握られたままの反対の手を俯きながら胸元に置くと、エレベーターは目的の階に到着した。

 エレベーターの扉が開くと、東谷に手を引かれて、部屋の前に到着する。

 東谷はカードキーを取り出すために、俺から手をそっと離した。

(離れたくない……)

 反射的にそう思った俺は、追いかけるように東谷のスーツの裾をキュッと掴んだ。

 子供じみた行動だったと少し恥ずかしくなるが、俺は俯きながら、掴んだ裾から手を離すことができなかった。

 ドアのロックが外れ、電気が自動で点いた部屋に二人で入ると、重厚な造りのドアがパタリと背後で閉まった。

 そして、オートロックで鍵の閉まる音だけが静かに響いた。
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