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「それじゃあ各自、体調管理に気を付けてください。スタッフのみんなも後片付け終わったら引き上げて大丈夫です」

「お疲れ様でした!」

 ダンサーたちは揃って聖に礼をすると、ダンススタジオを後にして更衣室に向かっていった。

 そのため、スタジオには数人のスタッフと聖、そしてパイプ椅子に座る一樹と伊織だけが残った。

「すごかったね、一樹!」

 聖のダンスパフォーマンスを間近で見た伊織は、目を輝かせて興奮冷めやらない様子だった。

 もちろん今までの一樹なら伊織以上に興奮し、感動していたはずだった。

 しかし、練習開始前に聖に言われた事が一樹は頭から離れず、休憩時間の度に昨日から返信のない璃玖へ何度も電話やメールをしていた。

 だが、一向に璃玖と連絡がつかず、そんな一樹の頭を過ぎるのは制止も聞かず背を向けて走っていってしまった璃玖の姿で、今の一樹には集中して見学する余裕など残されていなかった。

 璃玖が聖に心変わりしてしまったのではないかと、璃玖を信じたいと思う一方で、一樹の心の中は焦りと不安でいっぱいだった。

 そんな複雑な心境で一樹は俯いたまま座っていると、隣に座っていた伊織は急に立ち上がった。

「さーてと、僕はさっそく媚びでも売ってこようかな」

「はっ?」

「さっきの男、練習見ていた感じだと中心的な存在みたいなんだよね。だから、もう少し媚び売っておいて損はないかなーって。ちょっと行ってくるね」

 何をしにいくのかと詳しく聞く前に、伊織はダンサーの集団を追いかけるため、更衣室に向かって行ってしまった。

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