電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~

にゃーにゃ

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閉ざされたシンの真実:1『ギルド嬢の報告』

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「リリム君か、例の件だな」

「はい。大聖女セーラの別邸から〈日記〉を回収してきました」

ギルドマスターの命を受け、大聖女の別邸を調査。邸内にほどこされた異常なまでの数の魔術的な封印を解呪し、その最奥の部屋の書庫から〈アリアの日記〉を回収した。今日は、それを提出するために、ギルドマスターの執務室に訪れている。

「確かに受領した。ご苦労。では、下がりたまへ」

………………。

「墓荒らしのようなマネは本当に必要だったのでしょうか」

「問に答えよう。必要だった。勝利を確実とするために」

シンの討伐作戦にはすでに、歩く黄金の領地〈コンキエスタ・ロール・ゴルド〉、黄金の色位を司る者が当てることになっている。その力は絶大、〈領有権〉を主張するだけで、人、物、領地、全ての財を相手から剥奪することができるゲテモノ。だから色位という特権を与え、監視し、行動を制限しているのだ。

「……、さらなる保険が必要でしょうか」

「必要だ。理不尽な力を持つもの同士の戦い。大番狂わせが起こる可能性を考慮せねばなるまい」

そこまでは理解できる。だけど……。

「だからクロノ先輩に、シンを殺させるんですか。かつての、友を」

「そうだ。〈黄金〉で勝てないのなら、次に勝率が高い駒が、その男だからだ」

迷うことなく、言い切った。

「魔眼、言葉が作られる以前から存在していた物だ。体系化される以前の、原初の魔法。その力は心に根ざしている」

「心、……ですか」

目の前の男は、おおよそ〈心〉という言葉からもっともかけ離れた位置にいる男だ。

「そう、心だ。シンに限らず過去に歴史に名を刻んできた、英雄、悪漢、ソレラが成した偉業の源泉は心にこそある」

「だからこそ心という、パズルを解き明かし、破壊する。そのためには、まずはシンという男をバラバラに解体し、その心の構造を理解しなければならない」

「理解ですか」

心を理解する。それは感情抜きにできることなのか。理屈で理解して良いものか、私には分からない。ギルドマスターは私が渡した資料をペラペラとめくり、口を開く。

「君が言いたいことは、おおむね理解した。故人の尊厳を守るため、この資料から得た一切は、私のところにとどめることにしよう」

熱のこもらない言葉だ。だが、それでも私の言わんとしていることは、理解されてはいるようだ。感情、心を抜きに、尊厳など理解できるのであろうか。だが、それは私が問うべき問いではないだろう。

「お願いします」

一礼。

「では、あわせて、〈黒〉が、シンに接触した際に見たという、記録について報告したまへ」

〈黒〉、シンの殺害に成功した際にクロノ先輩に与えられる予定の色位。だが、私があえてその呼び方をする必要はないだろう。

「承知しました。では、クロノ先輩から聴取した内容について報告します」
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