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第四章 恩返し
悪霊の在りか
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「お前等あの女を知っているんだよな? なら少しは彼女についての情報を持ってないのか?」
「さぁ? 有名なサーカス団の団長としか知りません」
「……一度彼女のサーカスを見に行った事が有るが知っている事はエルと一緒だ」
「つまりは俺と一緒で何も知らないという訳か」
ジョン達がこの洞窟に入って一時間程経つ、洞窟の外はオレンジ色に染まり始める時刻、明日までにこの依頼をクリアしなくてはいけないがナサルに任せていては到底無理だろうと考えるジョンは策を考え始める
交渉? こちらには交渉をする材料が無い
ナサルと一緒に説得? 時間が掛かり過ぎる
暴力に頼る? ジョンがさっき言った様に相手の情報が無い、戦うのはリスクが高すぎるしもし本当にクァイケットが魔法で悪霊を隠したのならどんな魔法でそうしたのか? 知る必要がある知らないで彼女に攻撃し彼女が死んでしまったら二度と悪霊は戻って来ない可能性がある
交渉、説得、暴力が駄目と来たら次は……
うーむと唸るジョン
ナサルはまだ辛抱強く説得を試みている、そんな二人をジッと見つめ始めるジョン
ジョンは落ちている石ころを拾い、ナサルに当てる、勿論ナサルはジョンを睨み、近付いてくる
「何だ」
「説得は順調か?」
「……いや」
「だろうな、そんな頭でっかちなお前に提案がある」
「提案?」
ジョンの言う提案とは恐喝、暴力では無く恐喝、ジョンの十八番である
どうやって恐喝をするか? ジョンは言う、死体を人質に取ると
「何? 遺体をか?」
「奴はさっきから遺体を大事そうに抱えているよな、遺体が消えれば悪霊のコントロールが効かなくなるからだ。だから奴にとってあの遺体は生命線無くなりゃ今までの努力も全てパーになる、お前の頭の様に」
とエルを指差すジョン、苛つくエル
「だからあの遺体を人質に取られたらあの女も迂闊な行動は出来なくなるって話さ」
「……君が前私にやった様にやるという事か?」
ナサルはジェシカを人質に取られた時の事を差す。
「そういう事、これは俺の得意科目でね、どうする? 乗るか反るか、説得じゃ展望は無いぜ、お前もそれは分かってるだろ?」
「……彼女は遺体を抱いている、どうやって引き離す気だ?」
「それは、賛成と受け取って宜しいか?」
ジョンはジョン達に警戒心を高めているクァイケットに近付きこう言う
「これから俺はお前の事を脅す。オーケー?」
と
「どんな脅しにだって私は屈しない」
「こちらには魔法使いが居てな今お前が大事そうに抱えているその遺体をその状態のまま消せる、簡単にな」
そんな方法は無い
「俺の言いたい事は分かるよな? 俺達の言う事を聞かないのならその遺体を消す。消したら調教どころじゃ無いだろ?」
「それが君の脅し? 脅しになってないなぁ、言ったでしょ? 私はゴーストを調教していたのよ? もうこの遺体は要らない」
そう言いクァイケットは遺体を放り投げる
しかしこれはジョンに脅しが効かないと思わせる為のパフォーマンス、遺体が無ければ霊のコントロールは効かず、サーカス団に持ち帰るどころでは無くなる
「嘘だな、なら何故お前は今まで死体を抱いていたんだ? 守る為だろ?」
「遺体を抱いていたのは私の趣味、遺体のコレクションが趣味でね、だから持ち帰る為の許可も貰ったの、でもゴーストが最優先、脅しに使うなら捨てさせて貰うよ」
「俺の知り合いにも遺体コレクターが居た。だから分かるんだ。遺体コレクターはまず遺体を腐敗させる様な事はしない、腐らせたらコレクションにならないからな、お前は遺体コレクターでは無くただ霊の制御の為に遺体が必要なだけだ」
クァイケットの嘘は見破られている
(厄介な男だ。まさか脅しに来るとはなそれも遺体を使って……確かにこの遺体を消されればゴーストの制御は不可能、私の力で今は姿を消しているけれど
どうしようか……攻撃? 無しだ。四対一では分が悪すぎる、なら……あれしかないね)
クァイケットは遺体に瞬時に抱き付き一瞬で消える
その場には最初から何もなかったかの様に
消えたクァイケットを見て身構えるジョン、しかし数秒待てど何も起こらない
「……! 魔法か!? おい、三人共見たよな、何の魔法か推測出来るか?」
「今の消え方、恐らく移動属性の使い手だろう」
「何? 移動だと?」
「だが恐らく遠くには行っていない、遠くに移動するにはそれ相応の魔力を消費するはずだがその様子は無かった」
「近くには気配はしないぜ」
「『空間』移動かもしれないな」
「どういった魔法だ」
「その名の通りだ。此処とは違う別空間を自分の魔法で作り、そこに出入り出来る、移動属性の高等魔法だ」
「別の空間……?」
「私も行った事が無いから分からないが物や大型の動物を数十個数匹入れられる程の大きさらしい」
「……じゃあその空間に入った場合こっちの世界に戻って来る時は何処に出るんだ? 入った所から? それとも全く違う所からか?」
「空間移動は魔力を多く消費する、遠くへ行ける様な魔力は残っていないだから基本出入りは同じ場所で行われるハズだ」
「じゃあ此処で待って居れば良いという訳だな」
「そう長く魔法も維持出来ないだろうしな」
「本当に此処に待って居るだけで良いのか? 奴には何か企みがある様に感じる」
「悪足搔きなんじゃ無いんですか?」
「だったら良いんだがな……俺は一応外を見張る」
そう言ってジョンは洞窟の外に向かう
外は光り輝く騒がしい緋色から静まり返る大人しい黒色へと変わろうとしていた。
夜か、襲われたら厄介だな、なんて事をジョンが考えていると……ジョンは殺気を感じる
(早速かよ……敵の数は二人だな、あの女の仲間と考えるのが此処は普通だろう、アイツが能力で時間稼ぎをしている間に味方に助けて貰う算段だった訳か)
ジョンは敵に気が付いていないフリをしながら考察を続ける
(だが不味いな、二対一は分が悪い、アイツ等を呼んでくるか? いいや待てよ……これはチャンスかもしれない俺はこっちに来てから碌に戦闘もしていない、あの兵士共や盗賊では弱過ぎて話にならなかった。こっちの戦いの空気を知るには絶好のチャンス、死ぬかもしれんがまぁ良し)
そうジョンは結論を出すと
「おい、さっきからバレバレだぜ! 出て来いよ、俺が相手になってやる」
と両手を広げて何者かを挑発する、その挑発に答える二人の女性、二人共クァイケットの様に顔に白い化粧をしている
「その顔から察するに間違い無くお前等はクァイケットの仲間なんだよな?」
答えない二人、二人はクァイケットとは違って仏頂面、石の様に顔を動かさない
「私達の名はクララにシルル、私がクララ以後お見知りおきを早速ですが、こちらの要求を言います師匠を返して下さい、そうすればこちらも手は出しません」
ピンク色の鮮やかな服を着たクララが石の顔でジョンにそう要求を始める
「アンタ達何か勘違いしていないか? 俺は別にあの女を拉致した訳じゃ無い、あの女が遺体を持ち帰りたいと駄々を捏ねたんだ」
「師匠は一度言ったら聞きませんし我々も師匠の願いは叶えたい、貴方達が師匠を邪魔すると言うのなら私達は戦います」
「何だよ、遺体の為にまた遺体を増やそうとしてんのか?」
「殺しはしません、痛い目に遭って貰うだけです」
「へぇ、成程ね、やれると思うならやってみろよ」
二人の道化師はジョンをキッと見据えクララは杖をシルルはステッキを取り出し構える
「ステッキ? そんなので戦うのか?」
反応は帰って来ない、その代わりにクララが杖を振り杖先からジョンに何かを飛ばした。それを避けるジョン
(そんなに速く無いな、あれなら一度に十発撃たれても避けられる、しかし何を飛ばして来たんだ? 確かに目で飛ばしたものを捕えたが姿は見えなかった……風か? それなら目に見えなかったのも納得だ。それに彼女の杖を振る動作を見るに彼女はそれ程速く無い、近付けば簡単に無効化出来るだろう、問題はあのステッキだが……何に使うんだ? あれも杖の一種なのか?)
次はシルル、彼女がジョンに向かって走り出す。シルルが走る姿を見てジョンの顔が曇り始める何故曇ったのか? 相手が遅すぎたからだ。
(こっちを油断させる為の作戦……? いや、それは無い相手は本気でやっている、随分と強気の態度だったがこいつ等戦闘経験が浅いな、訓練も不十分だと見れる、まぁそりゃ当たり前だよなこいつ等はサーカス団、戦闘訓練なんてする訳が無い)
彼女達を降すのにそう時間は掛からなかった。まず向かって来たシルルを捕え、そのシルルを使いクララを脅すというジョンの十八番が発動
その結果、クララはさっきまでの仏頂面とは裏腹に行き成り泣き出しジョンに懇願を始める
「ごめんなさい! ごめんなさい!! 調子に乗ってました! 師匠にああして脅せと言われていたんです!! 私達戦った事なんて殆ど無いんです! 全部はあのバカ師匠がいけないんです!! 許して下さい! なんでもしますから!」
「馬鹿師匠は兎も角、私達は助けて下さい!!」
そんな彼女達を見て唖然とする
「色々とガッカリだぜ……さっきまでの俺のトキメキを返してくれ」
ジョンのトキメキは過ぎ去り、クァイケットもその後観念しナサル達の目の前に姿を現す。
「何だ! 弟子が師匠を売るとは何事か!!」
「うるさい! この馬鹿!!」
「師匠を付けろ! 師匠を!」
「バカ! アホ!!」
「キェェェェ!!」
「おい馬鹿止めろ!! 喧嘩してる場合かよ!」
そんなサーカス団三人組を呆れ顔で見る四人
「これ、どうするんです?」
「……放って置こう」
「う、う~む、これでは子供の喧嘩だぞ……」
「だがこんなのでも調教の腕というのは本物みたいだな」
「そうですね、このグロー襲って来ませんもんね……本当に悪霊を調教しちゃったんですね」
悪霊は不気味にそこで笑いながらもそこに直立不動、ジョン達に何かする様子も無い
「で、こいつは誰なんだ? この馬鹿三人組の御蔭でそれを考える所じゃなかった」
そう言ってジョンは女性の腐敗した死体を探り始める、死体は服を着ていたのでまずその服のポケットを探る
すると何枚かの銀貨と一枚の手紙を見つける
手紙は封筒に入っていたので封筒を開き折られた紙を広げ内容を見る、文字は英語読むのには苦労しなかった。
それをジョンは無表情で読むジョン
「なんて書いてあったんだ?」
「読んでみな」
ナサルに手紙を渡すジョン
それを読みナサルは顔を青くしてアーロックを見る
「どうしたんだ? ナサル? なんて書いてあるんだ?」
「彼女は……シリカ村から来たようです。エーベックに住む者と駆け落ちをする為にこれはエーベックに居る相手から送られた手紙の様です」
「その駆け落ち相手って誰なんですか?」
「手紙の最後には駆け落ち相手の名前であろうものが書いてある……アーロックよりと」
「何!?」
「駆け落ち相手は館様なんですか!?」
「馬鹿な! そんな訳が無い!」
「で、でも手紙には名前が……」
「駆け落ち相手の本名を不用心に手紙に書くと思うか? 普通は偽名を書く、アーロック様とは筆跡も違う、その手紙を書いたのは別人だ」
それを聞いて安堵するエル
「そしてこの女はその駆け落ち相手に殺された」
「え?」
ジョンは死体をひっくり返し背中を露わにする
「この女の背中を見ろ、大きな切り傷が付いている、切り口からして斧か? この女は殺されたんだ」
「それがどうして駆け落ち相手になるんですか?」
「消去法で分かる、こんな村の近くに盗賊は居たのか?」
とジョンはナサルに聞く
「居ないな」
「それにこんな如何にもお金を持っていなさそうな女誰も選ばない、これで盗賊の線は消える、窃盗目的で殺人を起こした訳では無ければ次は私怨? 無いなこの女はこの村の住人じゃない、お前等もこの女を見ても誰だか分かってなかったほぼエーベックとは関係の無い女だったんだろうで次だエーベックの駆け落ち相手が邪魔になったから殺した」
「邪魔になった?」
「相手に配偶者が居たなら浮気相手なんて飽きれば邪魔になるだけだ」
「で、誰にも見つからない場所に呼び出し殺した。という訳か」
とアーロックが頷きながら納得する
「配偶者が殺したという事は無いのか? いや、そもそも考えてみろ今の状況で一番怪しいのは誰だ?」
ナサルがそう反論し、クァイケットを見る
「いや、待て! 私では無いといっているだろう!」
「まぁ確かに彼女は怪しいな、動機も無い事は無い」
「ファントムのクァイケットという証拠も無い、もし本当だったとしてもこの三人が怪しいのは変わりない」
「よくよく考えてみれば確かにその通りかもな偶々人気の無い所で見かけた女性を悪霊欲しさに殺したのかもな」
「そ、そんな訳無いだろう! 私は偶然見つけただけなんだ! それに私が殺したのなら返り血を浴びているはずだろう?」
「そんなの着替えれば良い、そのぐらいの時間は優々にあっただろ?」
「斧だ! 私は凶器なんて持っていない!」
「斧も隠せば良い」
「……」
「実はお前が犯人なんだろ? 灯台下暗しだな、怪しすぎて見逃していた」
「し、師匠は馬鹿だけど人を殺す様な人じゃありません!」
「人殺しは皆同じ事を言う」
ジョンは今にも泣きだしそうな三人の顔を見て言う
「ほ、本当に私達は何も――」
「だったら死体を見つけた時に放置するなり誰か呼ぶなりすれば良かったんだ。それを怠ったお前の責任だ。諦めろ」
「そんなぁ、折角の収穫だったのに……」
「そんな事言っている場合か! この馬鹿!」
「師匠と呼べと言っているだろう!!」
「この五月蠅いのを村まで持って行かなくちゃならないのか?」
「そうなるな」
「マジ?」
「さぁ? 有名なサーカス団の団長としか知りません」
「……一度彼女のサーカスを見に行った事が有るが知っている事はエルと一緒だ」
「つまりは俺と一緒で何も知らないという訳か」
ジョン達がこの洞窟に入って一時間程経つ、洞窟の外はオレンジ色に染まり始める時刻、明日までにこの依頼をクリアしなくてはいけないがナサルに任せていては到底無理だろうと考えるジョンは策を考え始める
交渉? こちらには交渉をする材料が無い
ナサルと一緒に説得? 時間が掛かり過ぎる
暴力に頼る? ジョンがさっき言った様に相手の情報が無い、戦うのはリスクが高すぎるしもし本当にクァイケットが魔法で悪霊を隠したのならどんな魔法でそうしたのか? 知る必要がある知らないで彼女に攻撃し彼女が死んでしまったら二度と悪霊は戻って来ない可能性がある
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「何だ」
「説得は順調か?」
「……いや」
「だろうな、そんな頭でっかちなお前に提案がある」
「提案?」
ジョンの言う提案とは恐喝、暴力では無く恐喝、ジョンの十八番である
どうやって恐喝をするか? ジョンは言う、死体を人質に取ると
「何? 遺体をか?」
「奴はさっきから遺体を大事そうに抱えているよな、遺体が消えれば悪霊のコントロールが効かなくなるからだ。だから奴にとってあの遺体は生命線無くなりゃ今までの努力も全てパーになる、お前の頭の様に」
とエルを指差すジョン、苛つくエル
「だからあの遺体を人質に取られたらあの女も迂闊な行動は出来なくなるって話さ」
「……君が前私にやった様にやるという事か?」
ナサルはジェシカを人質に取られた時の事を差す。
「そういう事、これは俺の得意科目でね、どうする? 乗るか反るか、説得じゃ展望は無いぜ、お前もそれは分かってるだろ?」
「……彼女は遺体を抱いている、どうやって引き離す気だ?」
「それは、賛成と受け取って宜しいか?」
ジョンはジョン達に警戒心を高めているクァイケットに近付きこう言う
「これから俺はお前の事を脅す。オーケー?」
と
「どんな脅しにだって私は屈しない」
「こちらには魔法使いが居てな今お前が大事そうに抱えているその遺体をその状態のまま消せる、簡単にな」
そんな方法は無い
「俺の言いたい事は分かるよな? 俺達の言う事を聞かないのならその遺体を消す。消したら調教どころじゃ無いだろ?」
「それが君の脅し? 脅しになってないなぁ、言ったでしょ? 私はゴーストを調教していたのよ? もうこの遺体は要らない」
そう言いクァイケットは遺体を放り投げる
しかしこれはジョンに脅しが効かないと思わせる為のパフォーマンス、遺体が無ければ霊のコントロールは効かず、サーカス団に持ち帰るどころでは無くなる
「嘘だな、なら何故お前は今まで死体を抱いていたんだ? 守る為だろ?」
「遺体を抱いていたのは私の趣味、遺体のコレクションが趣味でね、だから持ち帰る為の許可も貰ったの、でもゴーストが最優先、脅しに使うなら捨てさせて貰うよ」
「俺の知り合いにも遺体コレクターが居た。だから分かるんだ。遺体コレクターはまず遺体を腐敗させる様な事はしない、腐らせたらコレクションにならないからな、お前は遺体コレクターでは無くただ霊の制御の為に遺体が必要なだけだ」
クァイケットの嘘は見破られている
(厄介な男だ。まさか脅しに来るとはなそれも遺体を使って……確かにこの遺体を消されればゴーストの制御は不可能、私の力で今は姿を消しているけれど
どうしようか……攻撃? 無しだ。四対一では分が悪すぎる、なら……あれしかないね)
クァイケットは遺体に瞬時に抱き付き一瞬で消える
その場には最初から何もなかったかの様に
消えたクァイケットを見て身構えるジョン、しかし数秒待てど何も起こらない
「……! 魔法か!? おい、三人共見たよな、何の魔法か推測出来るか?」
「今の消え方、恐らく移動属性の使い手だろう」
「何? 移動だと?」
「だが恐らく遠くには行っていない、遠くに移動するにはそれ相応の魔力を消費するはずだがその様子は無かった」
「近くには気配はしないぜ」
「『空間』移動かもしれないな」
「どういった魔法だ」
「その名の通りだ。此処とは違う別空間を自分の魔法で作り、そこに出入り出来る、移動属性の高等魔法だ」
「別の空間……?」
「私も行った事が無いから分からないが物や大型の動物を数十個数匹入れられる程の大きさらしい」
「……じゃあその空間に入った場合こっちの世界に戻って来る時は何処に出るんだ? 入った所から? それとも全く違う所からか?」
「空間移動は魔力を多く消費する、遠くへ行ける様な魔力は残っていないだから基本出入りは同じ場所で行われるハズだ」
「じゃあ此処で待って居れば良いという訳だな」
「そう長く魔法も維持出来ないだろうしな」
「本当に此処に待って居るだけで良いのか? 奴には何か企みがある様に感じる」
「悪足搔きなんじゃ無いんですか?」
「だったら良いんだがな……俺は一応外を見張る」
そう言ってジョンは洞窟の外に向かう
外は光り輝く騒がしい緋色から静まり返る大人しい黒色へと変わろうとしていた。
夜か、襲われたら厄介だな、なんて事をジョンが考えていると……ジョンは殺気を感じる
(早速かよ……敵の数は二人だな、あの女の仲間と考えるのが此処は普通だろう、アイツが能力で時間稼ぎをしている間に味方に助けて貰う算段だった訳か)
ジョンは敵に気が付いていないフリをしながら考察を続ける
(だが不味いな、二対一は分が悪い、アイツ等を呼んでくるか? いいや待てよ……これはチャンスかもしれない俺はこっちに来てから碌に戦闘もしていない、あの兵士共や盗賊では弱過ぎて話にならなかった。こっちの戦いの空気を知るには絶好のチャンス、死ぬかもしれんがまぁ良し)
そうジョンは結論を出すと
「おい、さっきからバレバレだぜ! 出て来いよ、俺が相手になってやる」
と両手を広げて何者かを挑発する、その挑発に答える二人の女性、二人共クァイケットの様に顔に白い化粧をしている
「その顔から察するに間違い無くお前等はクァイケットの仲間なんだよな?」
答えない二人、二人はクァイケットとは違って仏頂面、石の様に顔を動かさない
「私達の名はクララにシルル、私がクララ以後お見知りおきを早速ですが、こちらの要求を言います師匠を返して下さい、そうすればこちらも手は出しません」
ピンク色の鮮やかな服を着たクララが石の顔でジョンにそう要求を始める
「アンタ達何か勘違いしていないか? 俺は別にあの女を拉致した訳じゃ無い、あの女が遺体を持ち帰りたいと駄々を捏ねたんだ」
「師匠は一度言ったら聞きませんし我々も師匠の願いは叶えたい、貴方達が師匠を邪魔すると言うのなら私達は戦います」
「何だよ、遺体の為にまた遺体を増やそうとしてんのか?」
「殺しはしません、痛い目に遭って貰うだけです」
「へぇ、成程ね、やれると思うならやってみろよ」
二人の道化師はジョンをキッと見据えクララは杖をシルルはステッキを取り出し構える
「ステッキ? そんなので戦うのか?」
反応は帰って来ない、その代わりにクララが杖を振り杖先からジョンに何かを飛ばした。それを避けるジョン
(そんなに速く無いな、あれなら一度に十発撃たれても避けられる、しかし何を飛ばして来たんだ? 確かに目で飛ばしたものを捕えたが姿は見えなかった……風か? それなら目に見えなかったのも納得だ。それに彼女の杖を振る動作を見るに彼女はそれ程速く無い、近付けば簡単に無効化出来るだろう、問題はあのステッキだが……何に使うんだ? あれも杖の一種なのか?)
次はシルル、彼女がジョンに向かって走り出す。シルルが走る姿を見てジョンの顔が曇り始める何故曇ったのか? 相手が遅すぎたからだ。
(こっちを油断させる為の作戦……? いや、それは無い相手は本気でやっている、随分と強気の態度だったがこいつ等戦闘経験が浅いな、訓練も不十分だと見れる、まぁそりゃ当たり前だよなこいつ等はサーカス団、戦闘訓練なんてする訳が無い)
彼女達を降すのにそう時間は掛からなかった。まず向かって来たシルルを捕え、そのシルルを使いクララを脅すというジョンの十八番が発動
その結果、クララはさっきまでの仏頂面とは裏腹に行き成り泣き出しジョンに懇願を始める
「ごめんなさい! ごめんなさい!! 調子に乗ってました! 師匠にああして脅せと言われていたんです!! 私達戦った事なんて殆ど無いんです! 全部はあのバカ師匠がいけないんです!! 許して下さい! なんでもしますから!」
「馬鹿師匠は兎も角、私達は助けて下さい!!」
そんな彼女達を見て唖然とする
「色々とガッカリだぜ……さっきまでの俺のトキメキを返してくれ」
ジョンのトキメキは過ぎ去り、クァイケットもその後観念しナサル達の目の前に姿を現す。
「何だ! 弟子が師匠を売るとは何事か!!」
「うるさい! この馬鹿!!」
「師匠を付けろ! 師匠を!」
「バカ! アホ!!」
「キェェェェ!!」
「おい馬鹿止めろ!! 喧嘩してる場合かよ!」
そんなサーカス団三人組を呆れ顔で見る四人
「これ、どうするんです?」
「……放って置こう」
「う、う~む、これでは子供の喧嘩だぞ……」
「だがこんなのでも調教の腕というのは本物みたいだな」
「そうですね、このグロー襲って来ませんもんね……本当に悪霊を調教しちゃったんですね」
悪霊は不気味にそこで笑いながらもそこに直立不動、ジョン達に何かする様子も無い
「で、こいつは誰なんだ? この馬鹿三人組の御蔭でそれを考える所じゃなかった」
そう言ってジョンは女性の腐敗した死体を探り始める、死体は服を着ていたのでまずその服のポケットを探る
すると何枚かの銀貨と一枚の手紙を見つける
手紙は封筒に入っていたので封筒を開き折られた紙を広げ内容を見る、文字は英語読むのには苦労しなかった。
それをジョンは無表情で読むジョン
「なんて書いてあったんだ?」
「読んでみな」
ナサルに手紙を渡すジョン
それを読みナサルは顔を青くしてアーロックを見る
「どうしたんだ? ナサル? なんて書いてあるんだ?」
「彼女は……シリカ村から来たようです。エーベックに住む者と駆け落ちをする為にこれはエーベックに居る相手から送られた手紙の様です」
「その駆け落ち相手って誰なんですか?」
「手紙の最後には駆け落ち相手の名前であろうものが書いてある……アーロックよりと」
「何!?」
「駆け落ち相手は館様なんですか!?」
「馬鹿な! そんな訳が無い!」
「で、でも手紙には名前が……」
「駆け落ち相手の本名を不用心に手紙に書くと思うか? 普通は偽名を書く、アーロック様とは筆跡も違う、その手紙を書いたのは別人だ」
それを聞いて安堵するエル
「そしてこの女はその駆け落ち相手に殺された」
「え?」
ジョンは死体をひっくり返し背中を露わにする
「この女の背中を見ろ、大きな切り傷が付いている、切り口からして斧か? この女は殺されたんだ」
「それがどうして駆け落ち相手になるんですか?」
「消去法で分かる、こんな村の近くに盗賊は居たのか?」
とジョンはナサルに聞く
「居ないな」
「それにこんな如何にもお金を持っていなさそうな女誰も選ばない、これで盗賊の線は消える、窃盗目的で殺人を起こした訳では無ければ次は私怨? 無いなこの女はこの村の住人じゃない、お前等もこの女を見ても誰だか分かってなかったほぼエーベックとは関係の無い女だったんだろうで次だエーベックの駆け落ち相手が邪魔になったから殺した」
「邪魔になった?」
「相手に配偶者が居たなら浮気相手なんて飽きれば邪魔になるだけだ」
「で、誰にも見つからない場所に呼び出し殺した。という訳か」
とアーロックが頷きながら納得する
「配偶者が殺したという事は無いのか? いや、そもそも考えてみろ今の状況で一番怪しいのは誰だ?」
ナサルがそう反論し、クァイケットを見る
「いや、待て! 私では無いといっているだろう!」
「まぁ確かに彼女は怪しいな、動機も無い事は無い」
「ファントムのクァイケットという証拠も無い、もし本当だったとしてもこの三人が怪しいのは変わりない」
「よくよく考えてみれば確かにその通りかもな偶々人気の無い所で見かけた女性を悪霊欲しさに殺したのかもな」
「そ、そんな訳無いだろう! 私は偶然見つけただけなんだ! それに私が殺したのなら返り血を浴びているはずだろう?」
「そんなの着替えれば良い、そのぐらいの時間は優々にあっただろ?」
「斧だ! 私は凶器なんて持っていない!」
「斧も隠せば良い」
「……」
「実はお前が犯人なんだろ? 灯台下暗しだな、怪しすぎて見逃していた」
「し、師匠は馬鹿だけど人を殺す様な人じゃありません!」
「人殺しは皆同じ事を言う」
ジョンは今にも泣きだしそうな三人の顔を見て言う
「ほ、本当に私達は何も――」
「だったら死体を見つけた時に放置するなり誰か呼ぶなりすれば良かったんだ。それを怠ったお前の責任だ。諦めろ」
「そんなぁ、折角の収穫だったのに……」
「そんな事言っている場合か! この馬鹿!」
「師匠と呼べと言っているだろう!!」
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「マジ?」
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少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
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