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第五章 神の暇潰し
天国地獄
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日の出が出る瞬間を見る為ジョンは屋敷の庭で座って日を待っている、彼は暇なのだ。
庭は至って平和、ジョンだけが青い草野の上で座っている
たまに風が吹き草や木の葉が揺れ音が鳴るだけで他の音はしない、今ならエーベックが廃村だと言っても誰も疑わないだろう
「お、先生! おはようございます! 何してるんです?」
「おはよう! ジョン」
「よぉ」
静寂は破られる、破ったのはエルとジークそれにファング、門の外からやって来た。
「朝日を拝もうと思ってな、お前等は何してたんだ?」
「ボクは秘密の特訓をしていました!」
「私とファングは夜間パトロールをしていた」
「ふぁ~眠いな……」
三人がジョンの隣に座り始める
「おい! 何してんだ」
「いいじゃないですかぁ、遠慮するなよ~」
「遠慮なんかしてねぇわ、俺は一人が好きなんだよ!」
「まぁまぁそう言わず、いいじゃないか」
「眠い」
勘弁してくれよと髪をムシャムシャと掻き始めるジョン
「聞きましたよ~先生、昨日あんな張り切って仕事をしていたのってマリアちゃんの為なんですって? 先生は優しいですね~」
「おぉ、それは本当かい? 素晴らしいじゃないかジョン」
「眠い」
段々と惨めな気持ちになって来るジョン、そんな隣で勝手に盛り上がるエルとジーク、ファングは座りながら眠ってる
「私なんて昨日は酷いものだったよ、ナサルとローラが私の部屋にやって来たかと思うと行き成りナサルに胸倉を掴まれてお説教を喰らったよ」
「それは自業自得でしょ?」
「まぁね? でも行き成り胸倉を掴むのは勘弁して欲しいね、怖くて年甲斐もなく泣きそうになってしまったよ」
「ナサル先輩怒ると怖いですもんね」
キャッキャウフフと会話が弾む二人、日の出が出るまで会話は続いた……
「では行って来る」
「アーロック様リリ様それにお嬢様、お気を付けて」
屋敷の門前、馬車が止まっており、アーロック、リリ、マリアがその馬車の前でナサル達の見送りを受けている
「そうだ、マリア様これを」
と言いナサルとジェシカは綺麗に包装された赤い小さな箱、青い箱をそれぞれをマリアに差し出す。
「おめでとう、マリア」
「心ばかりのものですが、どうぞ納めください」
「! ありがとう! ナサル! ジェシカ!」
溢れんばかりの笑顔をナサルに向けるマリア、それを見てナサル、ジェシカも笑顔になるそんな幸せな光景を見て回りの人間も笑顔になる
此処は地下、暗く灯りと言えば蝋燭から出る小さな灯りしかない、壁も石壁でジメジメとした空間が広がっている……マリア達が笑顔で過ごしている間、ジョンとジークは地下の清掃を行っていた。
「こっちは終わったぞ、そっちはどうだ?」
ジークは椅子に座り、鼻歌を口ずさみながら箒とダンスを踊っていた。
「終わってなさそうだな……そんな事してるから掃除なんて押し付けられるんだ」
とアルフ家の件で懲罰を喰らい地下の掃除を押し付けられた自分の事は棚に上げるジョン
「君も一緒にやってみればいい、楽しいぞ?」
「まっぴら御免だ。早く終わらせて地上に戻るぞ」
「地下特有の閉鎖空間も私は嫌いじゃ無いんだけどねぇ」
「俺は独房のある部屋に行って来るからアンタは此処を綺麗にして置くんだぞ」
「分かったよ」
「本当かよ……」
ジョンは独房部屋の扉を開き中に入る、中に入った瞬間、独房に閉じ込められている三人の道化師がつぶらな瞳でジョンを見る
「なんて目してやがるんだ。もっと元気出せ」
「元気なんてこんな状況で出ようがありませんよ!」
掃除を始めるジョン
「本当に! ほ! ん! と! う! に!! 私たちは何もしていないんです!!」
「うるさいぞ、掃除に集中出来ないだろ」
「掃除なんてどうでもいいでしょう!!? こっちは自分の人生が掛かってるんですよ!」
「お前の人生なんて知ったこっちゃ無い」
ジョンは三人を冷たくあしらい掃除を続ける
その横でキーキーと喚く三人
その部屋を照らすのは二本の蝋燭、その火が消える、部屋は暗くなり何も見えなくなる
「!? 何だ! どうした!」
クァイケットがまず騒ぐ
「落ち着けよ、蝋燭の火が消えただけだ、何故だか知らんがな」
「悪霊の祟りとか……?」
「もしそうなら俺を巻き込まないで貰いたいもんだな、火種を取って来る、待ってろ」
と言いジョンは明るい時の記憶を辿り扉まで歩き扉を開けようとする……が
ドアのノブが見つからない
そしてジョンの眼は徐々に暗闇に慣れ辺りが見え始める
そして知る
「……お前等俺に何かしたのか?」
「何の話だ、速く火種を持って来てくれ、暗闇は好きじゃない」
「お前らが俺に何かした訳じゃないんなら、緊急事態だ」
「何だ?」
「この部屋から扉が無くなった」
「扉が無くなった!? 何を馬鹿な事を言っている!!」
「自分でもこんな事を言うのはおかしいとは分かってる、だが残念ながら事実だ。この部屋から扉が消えた。全面石壁だ」
「じょ、冗談ですよね?」
「俺が冗談を言って場を和ませようとなんてする奴に見えるのか? いや、今は俺の姿も見えないか……」
三人はそれを聞いて恐れおののく、ジョンの言った事は事実だと確信したからだ。
「どうなっているんだ! この屋敷は!」
「俺に聞くな、俺も此処に来たのはつい最近の話だ」
「ど、どうするんですか! 扉が無いって事は外に出れないって事じゃないですか!」
「分かってる、だが俺もどうすればいいのかサッパリ分からん」
「……一生ここでこのままって事ですか?」
「心配するなよ、居て長くても一週間程さ一週間すれば俺達は餓死する」
「嫌だー! こんな所で死にたくない!!」
シルルは自分を閉じ込めている牢屋の鉄格子を両手で引き千切ろうとするが鉄はびくともしない
「お前らこんな魔法を知らないか? 扉を音もさせず消す魔法を」
「これは誰かの魔法の仕業なのか?」
「こんな事を魔法以外の方法で成す事が出来ると思うのか?」
「確かにな……」
「で? 何か分からないか?」
「……分からん、私の魔法でも扉を移動させる事は出来るだろうが……お前の話を聞いていると扉が無くなってその代わりに石壁がその扉が有った所にあるんだろ? それは私の魔法でも無理だ」
「つまり、相手は移動属性の魔法使いじゃないって事が分かった訳だ、嬉しいね」
「もしかして疑似では無いでしょうか? つまり、扉を石壁に擬態させて分からなくさせちゃったんです」
「それは無い疑似って事は触れば扉だと分かるんだろ? 触っても石壁だ」
「此処って魔法除去の魔法が掛けられているんじゃないんですっけ? なら魔法は使えないはず……」
「魔法除去の魔法を掛けられているのはその檻の中だけだ。この部屋には関係がない」
壁にタックルを試みるジョンだが石壁はびくともしない
「この壁を人間の力でどうにかするのは無理そうだな」
ジョンは壁に様々なアプローチを掛ける、叩いて渡ったり息を吹きかけたり話しかけたり様々だ。
だが全部無駄に終わる
何処かに抜け道は無いか耳を壁に付け外の音を拾おうとするが何も聞こえない
「お前らの魔法でこの壁をどうにか出来ないか?」
「! 私の魔法なら石壁を瞬間移動させる事が出来るぞ! だから此処から出してくれ!」
「やったね」
それを聞いたジョンが牢の扉をピッキングで開けようとしたその時
「どうやって開ける気だ? お前鍵持ってないんだろ?」
ジョンの後ろから少女の様な高い声が聞こえる、急いで後ろを振り向き構えるジョン
だが誰も居ない
「ははっ驚いたか? 若造」
「チビっちまったな、で? 何者だ? 答える気があるなら答えてくれ」
その質問に答える様に目の前の闇から少女が形成され黒髪の少女になる
「我の名はメイヴィス、この屋敷に仕えている吸血鬼さ、よろしく頼むぞ、若造」
少女はそう言うとくだけたおじきをし頭を上げるとジョン達に向かいニヤァ~と笑う
「吸血鬼……?」
「そうさ、吸血鬼に会うのは初めてか?」
「残念ながらアンタが俺の初めてさ」
「そうかそうか、それは嬉しいぞ、どうだ? 初めて出会った感想は?」
「スーパープリティーでウルトラヤング」
そうかそうかとまた頷き、上機嫌になるメイヴィス
「若干馬鹿にされている様な気がしないでもないがまぁ良い、こっちに来てもっと話そう若造そこの三人も呼んで」
「その前に質問させてくれアンタが扉を無くした張本人か?」
「その通りだぞ、我がお前たちを此処へ閉じ込めた」
「アンタと楽しい楽しいお話の前にここから出してくれでなきゃ楽しくも話せない」
「ダメだ」
「……何故?」
「此処から解放したらお前速攻で逃げ出すんだろ? だからダメ、楽しく話そう」
「もしかしてウルトラ星の迷惑大陸出身者のお方かアンタ?」
「何だ、お前が住んでいた所ではそういうのが流行っていたのか? うるとら……すぺしゃる」
「分析しないでくれ」
その後ジョンとクァイケット、クララ、シルルの四人がメイヴィスを囲み彼女の話を聞く
「ほぉ~お前らは曲芸で飯を食べているのだな?」
「まぁ曲芸というか……まぁ曲芸ですかね……?」
「で、その二人がお前の弟子とな?」
「はぁ、まぁそうですね、不出来な弟子ですけど」
クァイケットの足を抓るシルルにクララ、涙目になりながらも声を上げるのを我慢するクァイケット
「吸血鬼か、お前は何が出来るんだ? 闇の中から姿を現したが……」
「色々だな」
「色々ねぇ……俺が見た中で一番すごい魔法を見た気がする」
「そうかぁそれはそうだ。我はすごい魔法使いだからな」
「瞬間移動なら私も出来るぞ」
何故か張り合い出すクァイケット
「何を言っている我の方がすごいぞ、お前は瞬間移動しか出来まい我はそれ以外も出来るぞ」
「瞬間移動しか出来ないお前の負けだなクァイケット」
「わ、私も瞬間移動だけが取り柄って訳じゃないし……」
「馬鹿師匠は基本瞬間移動しかしないじゃないですか、空間移動は魔力を消費し過ぎて余り使えないし」
「五月蠅いぞ!」
「やはり我の方が凄いな」
と得意げになるメイヴィス
「扉を消したのはどういった魔法を使ったんだ?」
「そう簡単に教えては詰まらないだろう? 当ててみろ」
そう言ってメイヴィスは黙ってしまう、楽しそうに四人の顔を見ながらニコニコとしている
四人は観念し話し合う事にする
「メイヴィス、もしこの問題を俺達が解いたらここから出してくれるか?」
メイヴィスの笑顔に曇りが……
「そんなにここから出たいのか?」
「出たい、とても」
「何故だ? 詰まらないのか? ま、待っていろ、何か食べ物でも持ってくる」
何故か慌て始めるメイヴィス
「食べ物が有っても退屈なのは変わらねぇ」
「な!? そうなのか……甘味も有るんだぞ?」
「甘い物も嫌いじゃ無いが、此処には居たくない」
「……そうかそうか、分かった済まなかったな」
そう言いメイヴィスは立ち上がり、闇の様に暗い顔で闇の中に消える
そして次の瞬間、今まで石壁だった場所に扉が生まれる
唖然とする四人だがジョンはその中で一番速く正気を取り戻しこう言う
「お前ら三人共速く牢屋に戻れ、逃げようとするなよ」
そう言いジョンはナイフを取り出し三人を脅す。三人は渋々と牢に戻る
「ちぇ、なんだなんだ、私達はお前に協力してやったというのにこの扱いは」
「何言ってるんだ。協力して”やった”だと? お互い協力せざる終えない状況だっただけだろ、恩着せがましく言うなよ」
そうジョンは言い残し部屋を去って行く……
「おい! 待て! 暗闇は嫌だ! 火種を持って来い!!」
「クールに帰ろうとしたのに台無しだよ、お前の御蔭でな」
ジョンはジークの居る部屋に戻る
「掃除は終わったのか?」
「終わった。どうだい? 綺麗になっただろう? そっちは終わったのかい?」
「掃除どころじゃ無かったぜ、アンタのお仲間の所為でな」
「? 誰の事だい? エル?」
「メイヴィスとか言う、黒髪の吸血鬼の事だ。えらい目にあった」
「……吸血鬼? メイヴィス? 何を言っている?」
「何って黒髪の少女の姿をした奴の事さ知ってるんだろ? 奴は此処に仕えていると言っていたぞ」
「私も長い事この屋敷に仕えて来たがそんな少女の事は知らない」
ジョンはジークの眼を視て冗談や嘘を言っている訳では無いと察する
「じゃあ……アイツは誰だって言うんだ?」
「私も君がそんな冗談を言うとは思えない、本当にその少女と出会ったんだな?」
「非常に残念ながらな、牢に入れられている奴等も見ている」
「うむ……では牢に向かってみるか」
「行きたくないんだがな……」
庭は至って平和、ジョンだけが青い草野の上で座っている
たまに風が吹き草や木の葉が揺れ音が鳴るだけで他の音はしない、今ならエーベックが廃村だと言っても誰も疑わないだろう
「お、先生! おはようございます! 何してるんです?」
「おはよう! ジョン」
「よぉ」
静寂は破られる、破ったのはエルとジークそれにファング、門の外からやって来た。
「朝日を拝もうと思ってな、お前等は何してたんだ?」
「ボクは秘密の特訓をしていました!」
「私とファングは夜間パトロールをしていた」
「ふぁ~眠いな……」
三人がジョンの隣に座り始める
「おい! 何してんだ」
「いいじゃないですかぁ、遠慮するなよ~」
「遠慮なんかしてねぇわ、俺は一人が好きなんだよ!」
「まぁまぁそう言わず、いいじゃないか」
「眠い」
勘弁してくれよと髪をムシャムシャと掻き始めるジョン
「聞きましたよ~先生、昨日あんな張り切って仕事をしていたのってマリアちゃんの為なんですって? 先生は優しいですね~」
「おぉ、それは本当かい? 素晴らしいじゃないかジョン」
「眠い」
段々と惨めな気持ちになって来るジョン、そんな隣で勝手に盛り上がるエルとジーク、ファングは座りながら眠ってる
「私なんて昨日は酷いものだったよ、ナサルとローラが私の部屋にやって来たかと思うと行き成りナサルに胸倉を掴まれてお説教を喰らったよ」
「それは自業自得でしょ?」
「まぁね? でも行き成り胸倉を掴むのは勘弁して欲しいね、怖くて年甲斐もなく泣きそうになってしまったよ」
「ナサル先輩怒ると怖いですもんね」
キャッキャウフフと会話が弾む二人、日の出が出るまで会話は続いた……
「では行って来る」
「アーロック様リリ様それにお嬢様、お気を付けて」
屋敷の門前、馬車が止まっており、アーロック、リリ、マリアがその馬車の前でナサル達の見送りを受けている
「そうだ、マリア様これを」
と言いナサルとジェシカは綺麗に包装された赤い小さな箱、青い箱をそれぞれをマリアに差し出す。
「おめでとう、マリア」
「心ばかりのものですが、どうぞ納めください」
「! ありがとう! ナサル! ジェシカ!」
溢れんばかりの笑顔をナサルに向けるマリア、それを見てナサル、ジェシカも笑顔になるそんな幸せな光景を見て回りの人間も笑顔になる
此処は地下、暗く灯りと言えば蝋燭から出る小さな灯りしかない、壁も石壁でジメジメとした空間が広がっている……マリア達が笑顔で過ごしている間、ジョンとジークは地下の清掃を行っていた。
「こっちは終わったぞ、そっちはどうだ?」
ジークは椅子に座り、鼻歌を口ずさみながら箒とダンスを踊っていた。
「終わってなさそうだな……そんな事してるから掃除なんて押し付けられるんだ」
とアルフ家の件で懲罰を喰らい地下の掃除を押し付けられた自分の事は棚に上げるジョン
「君も一緒にやってみればいい、楽しいぞ?」
「まっぴら御免だ。早く終わらせて地上に戻るぞ」
「地下特有の閉鎖空間も私は嫌いじゃ無いんだけどねぇ」
「俺は独房のある部屋に行って来るからアンタは此処を綺麗にして置くんだぞ」
「分かったよ」
「本当かよ……」
ジョンは独房部屋の扉を開き中に入る、中に入った瞬間、独房に閉じ込められている三人の道化師がつぶらな瞳でジョンを見る
「なんて目してやがるんだ。もっと元気出せ」
「元気なんてこんな状況で出ようがありませんよ!」
掃除を始めるジョン
「本当に! ほ! ん! と! う! に!! 私たちは何もしていないんです!!」
「うるさいぞ、掃除に集中出来ないだろ」
「掃除なんてどうでもいいでしょう!!? こっちは自分の人生が掛かってるんですよ!」
「お前の人生なんて知ったこっちゃ無い」
ジョンは三人を冷たくあしらい掃除を続ける
その横でキーキーと喚く三人
その部屋を照らすのは二本の蝋燭、その火が消える、部屋は暗くなり何も見えなくなる
「!? 何だ! どうした!」
クァイケットがまず騒ぐ
「落ち着けよ、蝋燭の火が消えただけだ、何故だか知らんがな」
「悪霊の祟りとか……?」
「もしそうなら俺を巻き込まないで貰いたいもんだな、火種を取って来る、待ってろ」
と言いジョンは明るい時の記憶を辿り扉まで歩き扉を開けようとする……が
ドアのノブが見つからない
そしてジョンの眼は徐々に暗闇に慣れ辺りが見え始める
そして知る
「……お前等俺に何かしたのか?」
「何の話だ、速く火種を持って来てくれ、暗闇は好きじゃない」
「お前らが俺に何かした訳じゃないんなら、緊急事態だ」
「何だ?」
「この部屋から扉が無くなった」
「扉が無くなった!? 何を馬鹿な事を言っている!!」
「自分でもこんな事を言うのはおかしいとは分かってる、だが残念ながら事実だ。この部屋から扉が消えた。全面石壁だ」
「じょ、冗談ですよね?」
「俺が冗談を言って場を和ませようとなんてする奴に見えるのか? いや、今は俺の姿も見えないか……」
三人はそれを聞いて恐れおののく、ジョンの言った事は事実だと確信したからだ。
「どうなっているんだ! この屋敷は!」
「俺に聞くな、俺も此処に来たのはつい最近の話だ」
「ど、どうするんですか! 扉が無いって事は外に出れないって事じゃないですか!」
「分かってる、だが俺もどうすればいいのかサッパリ分からん」
「……一生ここでこのままって事ですか?」
「心配するなよ、居て長くても一週間程さ一週間すれば俺達は餓死する」
「嫌だー! こんな所で死にたくない!!」
シルルは自分を閉じ込めている牢屋の鉄格子を両手で引き千切ろうとするが鉄はびくともしない
「お前らこんな魔法を知らないか? 扉を音もさせず消す魔法を」
「これは誰かの魔法の仕業なのか?」
「こんな事を魔法以外の方法で成す事が出来ると思うのか?」
「確かにな……」
「で? 何か分からないか?」
「……分からん、私の魔法でも扉を移動させる事は出来るだろうが……お前の話を聞いていると扉が無くなってその代わりに石壁がその扉が有った所にあるんだろ? それは私の魔法でも無理だ」
「つまり、相手は移動属性の魔法使いじゃないって事が分かった訳だ、嬉しいね」
「もしかして疑似では無いでしょうか? つまり、扉を石壁に擬態させて分からなくさせちゃったんです」
「それは無い疑似って事は触れば扉だと分かるんだろ? 触っても石壁だ」
「此処って魔法除去の魔法が掛けられているんじゃないんですっけ? なら魔法は使えないはず……」
「魔法除去の魔法を掛けられているのはその檻の中だけだ。この部屋には関係がない」
壁にタックルを試みるジョンだが石壁はびくともしない
「この壁を人間の力でどうにかするのは無理そうだな」
ジョンは壁に様々なアプローチを掛ける、叩いて渡ったり息を吹きかけたり話しかけたり様々だ。
だが全部無駄に終わる
何処かに抜け道は無いか耳を壁に付け外の音を拾おうとするが何も聞こえない
「お前らの魔法でこの壁をどうにか出来ないか?」
「! 私の魔法なら石壁を瞬間移動させる事が出来るぞ! だから此処から出してくれ!」
「やったね」
それを聞いたジョンが牢の扉をピッキングで開けようとしたその時
「どうやって開ける気だ? お前鍵持ってないんだろ?」
ジョンの後ろから少女の様な高い声が聞こえる、急いで後ろを振り向き構えるジョン
だが誰も居ない
「ははっ驚いたか? 若造」
「チビっちまったな、で? 何者だ? 答える気があるなら答えてくれ」
その質問に答える様に目の前の闇から少女が形成され黒髪の少女になる
「我の名はメイヴィス、この屋敷に仕えている吸血鬼さ、よろしく頼むぞ、若造」
少女はそう言うとくだけたおじきをし頭を上げるとジョン達に向かいニヤァ~と笑う
「吸血鬼……?」
「そうさ、吸血鬼に会うのは初めてか?」
「残念ながらアンタが俺の初めてさ」
「そうかそうか、それは嬉しいぞ、どうだ? 初めて出会った感想は?」
「スーパープリティーでウルトラヤング」
そうかそうかとまた頷き、上機嫌になるメイヴィス
「若干馬鹿にされている様な気がしないでもないがまぁ良い、こっちに来てもっと話そう若造そこの三人も呼んで」
「その前に質問させてくれアンタが扉を無くした張本人か?」
「その通りだぞ、我がお前たちを此処へ閉じ込めた」
「アンタと楽しい楽しいお話の前にここから出してくれでなきゃ楽しくも話せない」
「ダメだ」
「……何故?」
「此処から解放したらお前速攻で逃げ出すんだろ? だからダメ、楽しく話そう」
「もしかしてウルトラ星の迷惑大陸出身者のお方かアンタ?」
「何だ、お前が住んでいた所ではそういうのが流行っていたのか? うるとら……すぺしゃる」
「分析しないでくれ」
その後ジョンとクァイケット、クララ、シルルの四人がメイヴィスを囲み彼女の話を聞く
「ほぉ~お前らは曲芸で飯を食べているのだな?」
「まぁ曲芸というか……まぁ曲芸ですかね……?」
「で、その二人がお前の弟子とな?」
「はぁ、まぁそうですね、不出来な弟子ですけど」
クァイケットの足を抓るシルルにクララ、涙目になりながらも声を上げるのを我慢するクァイケット
「吸血鬼か、お前は何が出来るんだ? 闇の中から姿を現したが……」
「色々だな」
「色々ねぇ……俺が見た中で一番すごい魔法を見た気がする」
「そうかぁそれはそうだ。我はすごい魔法使いだからな」
「瞬間移動なら私も出来るぞ」
何故か張り合い出すクァイケット
「何を言っている我の方がすごいぞ、お前は瞬間移動しか出来まい我はそれ以外も出来るぞ」
「瞬間移動しか出来ないお前の負けだなクァイケット」
「わ、私も瞬間移動だけが取り柄って訳じゃないし……」
「馬鹿師匠は基本瞬間移動しかしないじゃないですか、空間移動は魔力を消費し過ぎて余り使えないし」
「五月蠅いぞ!」
「やはり我の方が凄いな」
と得意げになるメイヴィス
「扉を消したのはどういった魔法を使ったんだ?」
「そう簡単に教えては詰まらないだろう? 当ててみろ」
そう言ってメイヴィスは黙ってしまう、楽しそうに四人の顔を見ながらニコニコとしている
四人は観念し話し合う事にする
「メイヴィス、もしこの問題を俺達が解いたらここから出してくれるか?」
メイヴィスの笑顔に曇りが……
「そんなにここから出たいのか?」
「出たい、とても」
「何故だ? 詰まらないのか? ま、待っていろ、何か食べ物でも持ってくる」
何故か慌て始めるメイヴィス
「食べ物が有っても退屈なのは変わらねぇ」
「な!? そうなのか……甘味も有るんだぞ?」
「甘い物も嫌いじゃ無いが、此処には居たくない」
「……そうかそうか、分かった済まなかったな」
そう言いメイヴィスは立ち上がり、闇の様に暗い顔で闇の中に消える
そして次の瞬間、今まで石壁だった場所に扉が生まれる
唖然とする四人だがジョンはその中で一番速く正気を取り戻しこう言う
「お前ら三人共速く牢屋に戻れ、逃げようとするなよ」
そう言いジョンはナイフを取り出し三人を脅す。三人は渋々と牢に戻る
「ちぇ、なんだなんだ、私達はお前に協力してやったというのにこの扱いは」
「何言ってるんだ。協力して”やった”だと? お互い協力せざる終えない状況だっただけだろ、恩着せがましく言うなよ」
そうジョンは言い残し部屋を去って行く……
「おい! 待て! 暗闇は嫌だ! 火種を持って来い!!」
「クールに帰ろうとしたのに台無しだよ、お前の御蔭でな」
ジョンはジークの居る部屋に戻る
「掃除は終わったのか?」
「終わった。どうだい? 綺麗になっただろう? そっちは終わったのかい?」
「掃除どころじゃ無かったぜ、アンタのお仲間の所為でな」
「? 誰の事だい? エル?」
「メイヴィスとか言う、黒髪の吸血鬼の事だ。えらい目にあった」
「……吸血鬼? メイヴィス? 何を言っている?」
「何って黒髪の少女の姿をした奴の事さ知ってるんだろ? 奴は此処に仕えていると言っていたぞ」
「私も長い事この屋敷に仕えて来たがそんな少女の事は知らない」
ジョンはジークの眼を視て冗談や嘘を言っている訳では無いと察する
「じゃあ……アイツは誰だって言うんだ?」
「私も君がそんな冗談を言うとは思えない、本当にその少女と出会ったんだな?」
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ファンタジー
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スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
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