中年中太り成金アロハシャツおじさんを地獄の底へ叩き落とす所から始まる異世界転移物語

トムボーイ

文字の大きさ
66 / 120
第八章 国家エスカルド

良い奴気に入らない奴

しおりを挟む
「これからどうする気なんだ? 帰るのか?」
「そう言う訳には行かないよ……剣を取り返さなくちゃ」
「剣を盗んだ奴が何処に居るか、分かってるのか?」

 そのジョンの問いにバツが悪そうに

「……いいえ」

 と答える

「だろうな、大人しく帰って置けよ」
「そ、そんな! 出来ません! あの剣は僕の家の家宝なのです!!」
「カーナ、これ以上話しても無駄だ。先を急ごう」

 と言うのはセルフィ

「幾ら急いでもお前等にはその”先”が無いだろ、何言ってるんだ」
「五月蠅い!」
「俺達が手を貸してやろうか?」
「え!? で、でも……迷惑では無いのですか?」
「どう思う? まぁ、そんな事より教えてくれよ、剣は何処で盗られたんだ?」

 その頃ワルクルス邸では

 ジェシカが一階廊下の厨房前の掃除をしている、しかしその様子は何処かおかしい
 その様子のおかしいジェシカを廊下の端っこで盗み見ている二人の若い騎士、エルにファングである

「あの子どうにかしたのか? 凄く怒っている様に見えるが……」
「昨日、ナサル先輩と大喧嘩したみたいですよ、多分それが原因でしょう」
「おぉ~こえぇ……喧嘩の原因は何だよ?」
「ナサル先輩が行き成り都市に行くとか言うものだからジェシカちゃんも一緒に行きたいと言ったみたいなんですけどそれをナサル先輩は拒否、そこから喧嘩が始まったみたいです」
「先輩も酷いよなぁ」
「ですよね~」

 と二人の意見が合致した時

「そこ、掃きますので退いて下さい」

 いつの間にかに近付いて来たジェシカが無表情で二人にそう命令する様に言った。
 一見無表情に見えるがよく見ると何処か怒りという感情が溢れ出ているのが分かる

「ひっ」
「きゃっ!」

 その憤怒の気に驚いてしまい情けの無い声を出す。騎士二人

「? どうかされましたか? 私の顔に何か付いていますか?」
「い、いや、そう言う訳じゃないんだけどな……」
「変な人達」

 言葉使いも荒い
 次にこのジェシカの被害に遭ったのはジークだ。ジークはローラが居ない事を良い事に酒を好きに飲んでいたのをジェシカが発見したのだ。

「これは駄目だと、隊長さんが、言って、居たでしょう!!」

 そう言って箒でジークを叩くジェシカ

「わー!! ごめん! 分かった分かったからその箒を納めておくれ!! やめて! コップを叩き落そうとしないで!!」

 そんな光景を部屋の外から盗み見て居たライラ

 (大丈夫なのかしら? この屋敷?)

「そこ! ライラさん! サボって居ないで仕事して下さい!!」

 彼女の感覚は研ぎ澄まされておりライラが部屋の外からこっそりと盗み見て居た事も察知してしまったのだ。

「!? は、はい!」

 行き成りの事で動揺しとても良い返事をしてしまうライラ

「よろしい」

 まさかジェシカがローラの代わりをしているとは館外出中の人物達は誰も思って居なかった。

 話はジョンに戻る
 ジョンは木に凭れ掛かりララの話を聞いている
 ララ達は此処に来る前の村で宿に泊まった時に護衛に聖剣を盗まれてしまったのだと言う、二日前の出来事である

「財布も盗まれたんだろ? まさか、それから何も口にしてないのか?」
「草を食べて凌いでいたわ」
「それを凌ぐとは言わないぞ、つまりお前等は腹ペコな訳だ」
「……そうなるね」

 ジョンはおもむろに懐から干し肉を取り出し食べ始める
 それを羨ましそうに見つめる四人

「……何食べているんだ」

 メイヴィスがジョンに突っ込む

「飢死しかけの奴を目の前に食べる干し肉は美味いんだ知らないのか?」
「我の気が穏便な内にとっととそれをこの子等に渡してやれ」
「へいへい」

 食料も渡しそれを四人が食べ今までピリピリしていたセルフィも気を穏やかにし始めた。

「さっきは疑ってしまってすいませんでした」

 と謝るまでには落ち着いた。

「さっきの話に戻るがお前等、宿で盗難に遭ったんだよな? なら盗人共を宿屋の奴が見てたりしてなかったのか?」
「宿屋のおじさんは見ていないって言ってました。裏口から出たんじゃないかとも言ってましたね」
「そういえば、宿代はどうしたんだ? 財布は盗まれてオケラだったんだろ?」
「いえ、それがおじさんが優しい人で私達に同情してくれて宿代を無料にしてくれたんです」

 此処最近で一番良かった事を話したので少し気が良くなり笑顔のカーナとは対照的にジョンの顔は曇った。

「怪しいな、その宿屋のオヤジ」
「え!? どういうことですか!?」
「この世の中で信用しちゃならないモノは数多く有るがその中でも”優しい商人”程信用ならねぇ者は無い、その優しさの裏には必ず何か有るそう考えた方が無難だ」
「で、でも……そんな風には見えなかったけどなぁ……」

 ジョンに抵抗するカーナ
 彼は宿屋のおじさんを擁護しているのだ。

「これから人を騙そうとする奴が如何にもな恰好や仕草をする訳が無いだろ? 相手に信用されるであろう行動をするんだよ、笑顔に挨拶それに細心の気遣いとかな、だいたいの奴がその三つで相手を信用までは行かなくても相手を良い人間だと思う、事実は全く逆なのにな、これは人の善意にあまり触れた事の無い人間程、簡単に引っ掛かり毟り取られ気が付けば首を吊っている、冒険をこれからも続けるのならそれくらいの事は知って置けよ」
「そ、そんな事言ってたら誰も信用出来ませんよ!」
「人を信用するって事はそれ程危険な事だという事だ。人を信用したきゃ努力しな、信用したい相手に一年中張り付いて監視し、信用出来るか否かを決めるぐらいの努力はしなきゃお話にならんぜ」
「……それ程の事はしなくても良いだろう」

 とメイヴィス

「ま、兎に角その優しい宿屋のおじさんとやらに会って損は無いだろ、良いな?」
「わかりました……」

 ジョンのその意見に対し不満が有るカーナだったが致し方なくジョンの言う事を聞く事にしたのであった……

 その頃一方マリア達を運んでいる馬車の中ではまた別の問題が起きていた。
 問題と言っても騒がしいモノでは無く実に静かな静か過ぎる問題だった。
 誰も一言も発しないのだ。

 気まずい中馬の蹄鉄の音だけが響く

 ナサルとキュベルに挟まれ顔に汗をかいているマリア

 (なんでみんな黙ってるのよぉ……怒ってるのかな? わ、私がなんとかしなくちゃ……!)

 謎の義務感に駆られるマリア

「ナサル、何かお喋りをしましょうよ」
「えぇ、良いですね、何をお話ししましょうか?」
「そうねぇ……そういえば私ナサルの生まれを聞いた事が無かったわね、都市生まれなの?」

 ナサル、ローラにはこういう時ように用意した嘘が有る

「えぇ、そうですよ、都市の孤児院で育ちました」

 孤児院と言う単語を出してしまえばそれ以上詮索をする無粋者は酔っ払いかジョンぐらいの者なので孤児院出だと言う事にしているのだ。
 ナサルの思惑通りにマリアも悪そうな顔をして

「あ、ご、ごめんなさい、悪い事を聞いてしまったわね……」
「いいえ、良いんですよ、私は別に気にしてませんから」

 空気の悪さが加速する……
 焦りによって墓穴を掘ってしまったマリア
 そんなマリアの横でキュベルがマリアを気遣ってかジェイクに話し掛ける

「そういえば団長、随分とジョンさんの事を眼の仇にしている様ですが、どうかなさったんですか?」

 実はキュベルはその答えを知っている、知っていてこの場で聞いたのだ。これはキュベルの悪戯心が働いた結果である
 皆が居る中ジェイクに言わせたい事があるのだ。それを察したジェイクは苛立ちキュベルを睨みつける

「……うるせぇ」
「それは私も気になるな」

 ローラも乗っかる

「気にすんな聞くな黙ってろ」

 腕を組み不機嫌な顔で馬車の窓を睨む
 こんな不機嫌なジェイクを始めて見るマリアは困惑する
 そんなジェイクを見て気分が良くなるキュベル

「ふふ、ジョンが自分より強いのが気に入らないんですか?」

 それを聞いてビクッとキュベルの方を全員向いた。

「え? 今なんて言ったの?」
「ジョンが団長に勝てるだと……?」
「えぇ、そうらしいわよ、団長がそう言ってたから間違いないんじゃないかしら?」
「……驚いたね」
「ケッ」

 ジェイクも久々に会えた強敵なので実は少し嬉しい半分悔しさも有った。
 そして益々馬車の中の空気は悪くなるのだった。


 そしてそのジョンはと言うと

「嘘を付くとお前の娘の頭を引きちぎりその頭の中身をくり抜き器にしその中にお前の妻の血でよく煮込んだ内臓スープ入れそれを飲ませるからな、よく考えて答えろよ」

 と椅子に括り付けられた中年男性に対しそう言っていた。
 部屋は密室、光は蝋のみ
 そう此処は地下室、カーナ達が聖剣を盗られた時に泊まっていた宿屋の地下室だ。
 中年の男性の瞳には恐怖で涙が溜まっている

「お前が強盗団と手を組みあの四人を嵌めた。間違いないな?」

 中年はゆっくりと頷く

「別に俺はそれだからお前を誰かの前に突き出したり説教をするつもりなんて無い、こんな辺境の地に態々来る旅人なんて居ないだから稼ぎも少ないだがお前にも生活が有り守らなければいけないモノも有っただからやった……仕方のない事さ、此処まで言えば話しやすくなるか? 奴等のアジトは何処だ?」
「……あいつ等はこの村の西にある樹海の中にアジトを持っているらしい……この村からも見えただろ? あの樹海だよ……」
「確かか?」
「お、俺もあいつ等と組んだのは初めてだったんだ。アジトも見た事が無い聞いただけだ」
「無かったら、内臓スープ……忘れるなよ、クククッ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 娘と妻は関係ない――」

 中年の口を左手で顔を掴むようにして塞ぐ

「悪行は悪人を呼ぶもんだ。お前の悪行によってお前は悪人を呼んじまったんだよお前は、悪人に対して道徳が通用すると思うなよ、目的の為なら何でもするぜ、俺は」

 言いたい事を言うとジョンは中年の口から左手を離す。

「悪行の世界とはそういう世界だ。自分や自分の資産を護れるのは自分だけ、まぁだいたいそれに気が付いた頃には手遅れだがね」

 ジョンはそう言いながら中年を縛っていた赤い糸を解き、中年を解放する

「通常勤務に戻れ、もしおかしな事をしたら……言わなくても分かるよな?」

 中年は黙って頷く

「よろしい」

 ジョンはニヤニヤと笑いながら宿の地下室を出て行く
 それを汗だらけの顔で半分放心状態の宿屋の主人が唖然とした表情で床にへたり込みながら見送る

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...