中年中太り成金アロハシャツおじさんを地獄の底へ叩き落とす所から始まる異世界転移物語

第八章 国家エスカルド

ナサルの過去

　 ナサルがカーナと身を温め合って居ると扉がガチャリと開く、扉の向こうから女性が現れた。
　 
　 「あら、全員起きたみたいね、おはようナサルよく眠れたかしら？」
　 
　 　ナサルは女をキッと睨み
　 
　 「お前は誰だ！　何が目的なんだ！」
　 
　 　と強い口調で問う
　 
　 「怒ってるの？　ふぅん、クローン人形の癖に生物と同じ様に怒るなんて生意気ね」
　 
　クローン人形、ナサルは研究所でそう呼ばれていた。研究所の研究員たちはナサル達の事をクローン人形と呼び虐げた。
　彼女がその蔑称を知っているという事は元研究員という事だ。
　カーナは勿論ニカエルは別の研究所出身なのでこの事は知らなかったので話が分からない

「貴方はナサル・パララグちゃんでしたっけ？　生意気に自分の名前なんて付けちゃって……本当に生意気、貴方は十六番という名前が相応しいわよ」

　研究所ではナサルは十六番目に誕生したクローンなのでそう呼ばれていた。ローラは十五番
　しかしクローンはこの名前を気に入っておらずクローン同士で密かに名前を付け合い研究員が居ない間はその名前で呼び合っていた。
　名前を付けその名前で呼び合っている事が研究員に知られたら即刻体罰

「お、お前はあの研究所に居たのか……？」
「あら、驚いた？　それもそうよね、貴方は今まであの研究所の職員は全員殺したのだと思ってたのだから……」

　女の目が怪しく光る

「私はあの時まだ新人でね、あの時丁度休暇を貰っていたのよ、母が倒れてね」
「……復讐か？」
「先輩も同僚も全員殺されちゃったわよ、ま、どうでも良かったけどね、新人だったから思い入れも何も無かったのよねぇ」
「なら今更、私達をどうしようと言うんだ？」

　女はニヤッと笑う

「そんなの決まってるじゃない、”実験”よ」
「実験だと……？」
「クローン人形二体と人間一人を使った実験……ふふふ、公式ではとても出来ないわよね、だからこうして極秘裏でやるのよ」

　ナサルはカーナを見る、この檻の外に居る女性が言った人間一人とは彼女で間違いがないと確信するナサル

「私達は分かる……だがこの子は関係が無い！」
「そんな事ないわよ、その子はローラ・ウルシテッドの子孫なのよ？　遠く離れた遺伝子だけれど十分役に立つわ、それともそんなに彼女の事が心配なら貴方の大好きなお姉さまを連れて来ましょうか？　欠陥品の十五番」

　ローラ・ローレライは”欠陥品”と呼ばれていた。何故なら誕生してから身体が弱く直ぐに病気に掛かってしまうからであった。他のローラのクローンでは見られなかった症状だった為、欠陥品と呼ばれていた。

「……」
「どうしちゃったの？　黙り込んじゃって、その子を護るんじゃないの？　その子よりお姉さんの方が大事？」

　ナサルにそんな事を選択し尚且つそれを言葉に出すなんてとても出来る訳が無い
　沈黙するナサル

「可哀そうに、結局貴方は臆病者のままだったわね、あの時から何も変わらない、何も選べない選ばない、誰かに助けて貰うまで悲劇のヒロイン気取り、私はクローン人形は全員嫌いだったけどその中でも貴方は一番嫌いだったわ」

　ナサルは研究所で一番最後に誕生したクローンなのでクローンのみんなから妹として一番可愛がられ護られた。
　ナサルが体罰を受けそうな時も誰かが庇い体罰を受ける、食事もみんなからよく分けて貰っていた。その研究所のクローン達はナサルを笑わせる為に色んな笑い話を考えたり色んな努力をナサルの為に注ぎ込んだのだ。
　ナサルはそれを見る度に泣いた自分の無力さに
　だから彼女は騎士となった。今度は誰かを護る為に