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第一章
着信
────聴こえない。
近づかなければ、聴こえない。
でも、何故か自分から距離を置く。
走らなければ。しかし、うまく走れない。
──否。走れてはいる。
ただ、全く以って速度が出ないのだ。
早く、もっと早く。止まらない。
涙がずっと止まらない。早く走らねば。
──。
え?
今、何か聴こえ
恐怖と共に目が覚める。
家が揺れていると勘違いしてしまう程に、心臓の鼓動が身体や視界に影響を与えている。
──夢だった。
何の夢を見ていたのだろう。次第に心が落ち着きを取り戻していくのと比例して、見ていた夢の記憶が空中に融けるかの様に消えていく。
もう忘れてしまった。
ただ、とても怖い夢を見たんだ、とだけ覚えている。
今何時だろう。僕はふと、充電しているスマホのスリープ状態を解く。
その瞬間。
「コロロロロッコロロロロッコロロロロッ」
スマホの目覚まし用に設定したアラームが鳴り響く。
くそ、何か損した。
いや、まぁ、もう起きる時間だったんだけども。
変な夢を見た所為で、ギリギリまで寝られなかった。
はぁ、学校行かないと。
僕は、渋々ベッドから起き上がり、部屋のドアを開ける。自室から出ると、リビングの方からテレビの音声と、母が台所で料理をする音と香りがする。
洗面所へと向かうと、丁度トイレから出てきた父が僕に気付く。
「おお、起きたか。お早う」
「・・・おはよう」
既にスーツ姿の父に挨拶を返すと、父はリビングへと向かって行った。
歯を磨く為に洗面台の水を出し、手を洗い、手で水を溜めて口に運ぶ。
水がぬるい。 また一段と、夏が近くなってきた。
歯を磨いていると、僕が起きた事を父から聞いたのか、母が廊下から此方を覗く。
「句路、お早う。朝ご飯はパンで平気?」
僕は歯を磨きながら、コクリと頷いた。
口を濯ぎ、顔を洗ってリビングに向かうと、食卓に僕の朝食が用意されていた。
今朝はオレンジマーマレードトーストと、レタスとツナのサラダ、コーヒーだった。
「・・・氏は、米中首脳会談の日程について、かねてより・・・」
テレビでは、朝のニュース番組が流れている。
僕は手を合わせ、朝食を食べ始めた。
父は朝食を食べ終えて、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。
母は父の食べ終えた食器を洗っている。
「続いて、速報です。◯◯県△△市の山中から、若い女性の遺体が発見されました」
────三人の動きが一瞬止まる。
僕はパンを食べるのを止め、父はコーヒーを口に運んだまま、母は水道の水を止めて、全員テレビを見つめた。
「遺体の身元はまだ判明しておりませんが、△△市では先週より、◇◇高校に通う女子生徒の行方が判らなくなっており・・・」
「ちょっとこれ、アンタの高校じゃないの」
「句路、お前この子知ってる子か?」
僕は、コクリと頷く。
いや、正確には、知らない子だ。
話した事も無い。名前も知らなかった。
そう、先週の下校路。
シロとアヤと話していた、あの子だ。
「A組の・・・山下ゆいなさん・・・」
夏休みまであと二日。
僕のスマホが、着信を知らせている。
近づかなければ、聴こえない。
でも、何故か自分から距離を置く。
走らなければ。しかし、うまく走れない。
──否。走れてはいる。
ただ、全く以って速度が出ないのだ。
早く、もっと早く。止まらない。
涙がずっと止まらない。早く走らねば。
──。
え?
今、何か聴こえ
恐怖と共に目が覚める。
家が揺れていると勘違いしてしまう程に、心臓の鼓動が身体や視界に影響を与えている。
──夢だった。
何の夢を見ていたのだろう。次第に心が落ち着きを取り戻していくのと比例して、見ていた夢の記憶が空中に融けるかの様に消えていく。
もう忘れてしまった。
ただ、とても怖い夢を見たんだ、とだけ覚えている。
今何時だろう。僕はふと、充電しているスマホのスリープ状態を解く。
その瞬間。
「コロロロロッコロロロロッコロロロロッ」
スマホの目覚まし用に設定したアラームが鳴り響く。
くそ、何か損した。
いや、まぁ、もう起きる時間だったんだけども。
変な夢を見た所為で、ギリギリまで寝られなかった。
はぁ、学校行かないと。
僕は、渋々ベッドから起き上がり、部屋のドアを開ける。自室から出ると、リビングの方からテレビの音声と、母が台所で料理をする音と香りがする。
洗面所へと向かうと、丁度トイレから出てきた父が僕に気付く。
「おお、起きたか。お早う」
「・・・おはよう」
既にスーツ姿の父に挨拶を返すと、父はリビングへと向かって行った。
歯を磨く為に洗面台の水を出し、手を洗い、手で水を溜めて口に運ぶ。
水がぬるい。 また一段と、夏が近くなってきた。
歯を磨いていると、僕が起きた事を父から聞いたのか、母が廊下から此方を覗く。
「句路、お早う。朝ご飯はパンで平気?」
僕は歯を磨きながら、コクリと頷いた。
口を濯ぎ、顔を洗ってリビングに向かうと、食卓に僕の朝食が用意されていた。
今朝はオレンジマーマレードトーストと、レタスとツナのサラダ、コーヒーだった。
「・・・氏は、米中首脳会談の日程について、かねてより・・・」
テレビでは、朝のニュース番組が流れている。
僕は手を合わせ、朝食を食べ始めた。
父は朝食を食べ終えて、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。
母は父の食べ終えた食器を洗っている。
「続いて、速報です。◯◯県△△市の山中から、若い女性の遺体が発見されました」
────三人の動きが一瞬止まる。
僕はパンを食べるのを止め、父はコーヒーを口に運んだまま、母は水道の水を止めて、全員テレビを見つめた。
「遺体の身元はまだ判明しておりませんが、△△市では先週より、◇◇高校に通う女子生徒の行方が判らなくなっており・・・」
「ちょっとこれ、アンタの高校じゃないの」
「句路、お前この子知ってる子か?」
僕は、コクリと頷く。
いや、正確には、知らない子だ。
話した事も無い。名前も知らなかった。
そう、先週の下校路。
シロとアヤと話していた、あの子だ。
「A組の・・・山下ゆいなさん・・・」
夏休みまであと二日。
僕のスマホが、着信を知らせている。
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