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第二章
名は体を表す
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──名は体を表すとは、一体誰が言い出したのだろう。
ゴゴンゴゴンという一定のリズムを刻む振動と金属で金属を擦り付ける大きな音が鳴り響く中、僕はアスファルトと土手の境目に倒れ込む。
夏の強烈な陽射しに熱されたアスファルトやコンクリートの粉が頰に付着し、鋭く尖った激痛が脳に伝達する。
「シロ!」
アスファルトに僕の腕の皮膚を削らせながら倒れた反動を利用して立ち上がる。
「シロ!シロ!」
電車は直ぐに過ぎ去り、途端に静寂が訪れる。それを掻き消さんばかりに僕は叫んだ。
僕の背中に柔らかい衝撃が伝わった時、何かが潰れる嫌な音が聴こえた。
──まさか。
そんな、まさか。
線路に目を向けると、中身が入っていたであろうジュースのペットボトルだったものが、潰されていた。
「クロ、平気か?」
土手の方から、心配そうに言葉を投げるシロの声。
僕はほっとしながら、土手の方に向く。
「シロ、良かっ」
────僕は言葉を失った。
誰だ。そこにいるのは。
誰だって、シロ本人じゃないか。
いや、違う。僕は混乱した。
確かに顔も声もシロだ。だが違う。
さっきまでのシロじゃない。
──名は体を表すとは、一体誰が言い出したのだろう。
シロは僕とは何もかも正反対で、まるで子供の様に外で遊ぶ所為か、健康的な日焼けした肌と黒々とした髪をしていた。
「クロ・・・?どうした?」
だが、今、僕の目の前に立つ彼は。
シロの声と顔を持つ彼は。
ただの一つも濁りのない、まるで雪の如き白い肌と。
ただの一つも汚れのない、まるで霧の如き銀色の髪をしていた。
「シ・・・ロ?」
「おい何だ、どうした?何処か怪我したのか?」
彼は僕をとても心配している。
本当に、シロなのだろうか。
「頭・・・白い・・・」
僕は彼を指差して言った。
彼は、えっ、と少し驚き、踏切警報機の電光文字表示板に自分を映す。
「うわわ、なんじゃこりゃ!」
彼はそう言いながら、髪を手でパタパタと叩く。
埃か何かとでも思ったのだろうか。
ああ、そうか。文字表示板は黒いアクリル板のような物だから、髪が白い事は解っても肌まで白くなってる事までは解らないのか。
「シロ・・・大丈夫?」
僕は恐る恐る聞いた。
もしかして、僕の眼がおかしくなったのだろうか。僕の頭がおかしくなったのだろうか。もしそうだとしたら、その方が良い。断然良い。
「俺?俺は別に何処も怪我してないけど・・・クロ、お前こそ平気かよ」
「え?」
シロに指摘されて、初めて自分の腕の怪我に気付く。
踏切脇の砂利の所為で、小指側の手首から肘にかけて擦り傷というか、無数の切り傷状の怪我を負っている。
気付く前は何ともなかった筈が、気付いてしまえば痛みが次第に増して行く。
「うーん・・・まぁ、大丈夫・・・かな?」
「うそつけ」
シロに怒られた。
やはり、この感じは紛れも無くシロだ。良かった。
「ナオミさんトコで水道借りるか?」
「いや、変に心配させたくないし、家で洗うよ」
僕は苦笑いをしながらシロに答えた。
「そうだな。ふざけて電車にジュースを投げたとか噂されてもアレだし、すぐ帰るか」
シロはそういいながら、潰れたペットボトルを拾い鞄に仕舞った。
「ごめんね、ジュース台無しにしちゃって」
歩きながら僕はシロに謝る。
「いや、アレはクロの分で買ったヤツ。まぁ、無事で良かったよ」
ハハッと笑うシロの肌が、銀色の髪が、夏の陽射しを反射して輝いていた。
──名は体を表すとは
一体誰が
言い出したのだろう。
ゴゴンゴゴンという一定のリズムを刻む振動と金属で金属を擦り付ける大きな音が鳴り響く中、僕はアスファルトと土手の境目に倒れ込む。
夏の強烈な陽射しに熱されたアスファルトやコンクリートの粉が頰に付着し、鋭く尖った激痛が脳に伝達する。
「シロ!」
アスファルトに僕の腕の皮膚を削らせながら倒れた反動を利用して立ち上がる。
「シロ!シロ!」
電車は直ぐに過ぎ去り、途端に静寂が訪れる。それを掻き消さんばかりに僕は叫んだ。
僕の背中に柔らかい衝撃が伝わった時、何かが潰れる嫌な音が聴こえた。
──まさか。
そんな、まさか。
線路に目を向けると、中身が入っていたであろうジュースのペットボトルだったものが、潰されていた。
「クロ、平気か?」
土手の方から、心配そうに言葉を投げるシロの声。
僕はほっとしながら、土手の方に向く。
「シロ、良かっ」
────僕は言葉を失った。
誰だ。そこにいるのは。
誰だって、シロ本人じゃないか。
いや、違う。僕は混乱した。
確かに顔も声もシロだ。だが違う。
さっきまでのシロじゃない。
──名は体を表すとは、一体誰が言い出したのだろう。
シロは僕とは何もかも正反対で、まるで子供の様に外で遊ぶ所為か、健康的な日焼けした肌と黒々とした髪をしていた。
「クロ・・・?どうした?」
だが、今、僕の目の前に立つ彼は。
シロの声と顔を持つ彼は。
ただの一つも濁りのない、まるで雪の如き白い肌と。
ただの一つも汚れのない、まるで霧の如き銀色の髪をしていた。
「シ・・・ロ?」
「おい何だ、どうした?何処か怪我したのか?」
彼は僕をとても心配している。
本当に、シロなのだろうか。
「頭・・・白い・・・」
僕は彼を指差して言った。
彼は、えっ、と少し驚き、踏切警報機の電光文字表示板に自分を映す。
「うわわ、なんじゃこりゃ!」
彼はそう言いながら、髪を手でパタパタと叩く。
埃か何かとでも思ったのだろうか。
ああ、そうか。文字表示板は黒いアクリル板のような物だから、髪が白い事は解っても肌まで白くなってる事までは解らないのか。
「シロ・・・大丈夫?」
僕は恐る恐る聞いた。
もしかして、僕の眼がおかしくなったのだろうか。僕の頭がおかしくなったのだろうか。もしそうだとしたら、その方が良い。断然良い。
「俺?俺は別に何処も怪我してないけど・・・クロ、お前こそ平気かよ」
「え?」
シロに指摘されて、初めて自分の腕の怪我に気付く。
踏切脇の砂利の所為で、小指側の手首から肘にかけて擦り傷というか、無数の切り傷状の怪我を負っている。
気付く前は何ともなかった筈が、気付いてしまえば痛みが次第に増して行く。
「うーん・・・まぁ、大丈夫・・・かな?」
「うそつけ」
シロに怒られた。
やはり、この感じは紛れも無くシロだ。良かった。
「ナオミさんトコで水道借りるか?」
「いや、変に心配させたくないし、家で洗うよ」
僕は苦笑いをしながらシロに答えた。
「そうだな。ふざけて電車にジュースを投げたとか噂されてもアレだし、すぐ帰るか」
シロはそういいながら、潰れたペットボトルを拾い鞄に仕舞った。
「ごめんね、ジュース台無しにしちゃって」
歩きながら僕はシロに謝る。
「いや、アレはクロの分で買ったヤツ。まぁ、無事で良かったよ」
ハハッと笑うシロの肌が、銀色の髪が、夏の陽射しを反射して輝いていた。
──名は体を表すとは
一体誰が
言い出したのだろう。
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