そして、燻む。美しく。

頭痛

文字の大きさ
12 / 14
第三章

明確な不明瞭

しおりを挟む
──静寂。
 まるで静止してしまった時間が、更に引き延ばされている様な奇妙な錯覚。


 今、アヤは何て言った?
夏の夜の暑さとは関係なく、違う機能によるじっとりとした汗が滲み出る。
 シロは力のない笑みを浮かべ、アヤの目を見つめている。
アヤは少し強張った表情で、シロの斜め後ろの何も無い場所を見つめている。
いや。正確には、を探して目が泳いでいる。
 シロが目の前で見つめているにも拘らず、アヤは目を合わさない。目を合わせられていない。
二人を見つめ、僕は何も言葉が出てこない。

 アヤは、シロが

 「ふざけては・・・ないよな」
シロが恐る恐る聞いた。
その声の予想外の位置に驚く様に、アヤはシロのいる方角へ向き直す。
 「どういう事・・・?何でここからシロの声がするの・・・」

二人共、ふざけてる様子は全くない。
一体、今、目の前で、何が起きているのだろう。
「アヤは、シロが全然視えてないの?」
僕も、やっと言葉を絞り出す。
 「うん・・・」
アヤは弱々しく答えた。
 「てか、クロにはシロが視えてるの?」
僕は、コクリと頷く。

──重苦しい空気が漂う。
アヤは今にも泣き出しそうだった。

 すると、シロが突然僕に顔を向け、笑いながら自分の口元に人差し指を当て、「静かに」という意味のジェスチャーをとった。
唐突なシロの行動を見て呆気にとられていると、シロは忍び足でアヤの背後に回る。

 シロ、何をする気だ。そう思ったその時。
 「とりゃ!」
突然シロはアヤの両耳を背後から両手で引っ張った。
 「うあああっ!」
目に映らない人間からの急な不意打ちを喰らったアヤは大きな悲鳴をあげ、仰け反る形でシロの顔面に強烈な頭突きをお見舞いした。
 「いっっってええええ!」
シロは顔面を手で押さえ、うずくまる。
「えええ・・・」
僕は一連の行動が意味不明過ぎて、思わず声が漏れた。
 「おま・・・鼻は急所だぞ!ヘッドバットはねぇだろ!」
シロはぼろぼろと涙を流しながらアヤに訴えた。
 「アンタが急に耳引っ張るからでしょ!」
アヤはかんかんに怒りながら振り向き、シロを見下ろした。
「あれ?」
 「あれ?」
僕とアヤの声が被る。
今アヤは、確かにシロを見下ろした。
 「・・・シロ、視えた」
 「え?」
顔を押さえて俯いていたシロが、顔を上げた。
 「やっと視えた・・・何よこれぇ・・・もぅ~!」
アヤの瞳から、遂に大粒の涙が溢れた。
「良かったね、アヤ」
僕は思わず口にする。
 「いや、俺の鼻は現在すこぶる悪いんスけど・・・」と、シロはヘラヘラ笑いながら立ち上がった。

しかし、先刻さっきの現象は何だったのだろう。何故、先刻さっきまでアヤはシロを視認出来なかったのだろう。
もしかしてシロが話していた、シロの母親や薬局の店員の一件にも、何か関係しているのではないか。
 そう考えていると、「あー、君達」という声と共に、此方を懐中電灯で照らしながら歩み寄る人影が現れた。
 「何やってんの、君達こんな時間に。高校生?」
そう言ってきた人物は、ここから少し離れた場所にある交番のお巡りさんだった。
 「あ、すみません、ちょっと友達と話してたら盛り上がっちゃって」
アヤは咄嗟に言い訳をした。
 「今、女の子の叫び声が聴こえたから見廻りに来たんだけど、君かな?」
まずい。そう思った時、シロが口を開いた。
 「あー、すんません、俺がふざけてイタズラしちゃったもんで」
 「すみません、私もちょっと大袈裟にはしゃいじゃって」
二人は申し訳なさそうにお巡りさんに謝った。

 「まぁ、何事も無ければ良いんだけど。君らも女子高生の一件知ってるだろ?あまりウロウロしてると危険だから、早くお家に帰りなさいね」


 そう言ってお巡りさんは、僕達の元から去って行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...