夢のつづきを見にいこう

羽藏ナキ

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第二章 家族

三日間

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 それから三日間、十一日から十三日は毎日夢を見た。
 十一日には遊園地に言った夢、十二日は臨海部にある水族館に行った夢、十三日は美央のピアノの演奏を聴きに行った夢。
 たった三日間の、ただ毎日眠って夢を見るという体験が俺の生活に変化をもたらしていた。

 まず、毎日浴びるように飲んでいた酒の量が減った。
 睡眠を妨げないようにと意識することで、自然と酒の量を制限できるようになっている。それに、飲み方も変わった。これまではとにかく酔うことが目的で勢いよく呷っていたが、ここ数日は味わうように飲んでいる。少ない量を長く楽しめるようにという想いが無意識に働いたのだろう。酒を楽しむなんて発想は、里美と晩酌していたあの頃以来ずっと忘れていたものだった。

 変わったのは酒の飲み方だけじゃない。
 いままで食事はカップ麺やコンビニ弁当で済ませていたが、夕飯の自炊をするようになったのだ。キッチンに立ち包丁を握るなんて、里美と結婚する前に一人暮らしをしていた時以来、十数年ぶりのことだった。
 思いつきでやってみたことだが、拙いながら自分で作った料理というのは、それだけで愛着が湧いて美味しく感じられた。ただ酒のアテにして腹を満たすだけだった夕飯が楽しい時間へと変わっていた。

 それもこれも、あの紙のおかげだ。
 あの紙の効果だろうが、ここ数日は夢を見てからの目覚めがとてもいい。それに、毎回紙に書いた時間きっかりに起きることができるため、必然的に一日の活動時間が長くなった。
 自炊をしようと思い立ったのもそれが理由だったし、おかげで自炊以外にも部屋の掃除に手がつけられるようになった。

 もともと家事のほとんどを里美に任せていたこともあって、二人が出て行ってからの家は荒れ放題だった。床には埃が積り、洗濯物は乾いても畳んでタンスに仕舞うのが面倒で、干したままにしたり床やソファに放ったりしていた。
 燃えるゴミ以外はゴミ出しの日を把握していないから、テーブルや台所には空の缶や瓶が散乱していた。

 改めて見ると、恥ずかしいくらいに汚かった。
 夢で見る我が家とはまったくの正反対で、よくいままでこんな空間で生活していたなと思う。

 俺はいたたまれなくなって、自分の不甲斐なさの象徴であるその部屋を片さずにはいられなくなった。
 洗濯物を畳んでタンスに仕舞い、床に放って汚れていたものは洗濯し直した。ゴミは分別して袋にまとめ、床には掃除機をかけた。
 三人暮らしのそこそこ広い家だったが、生活スペースが限られていることもあって、掃除や片付けは一日で済ませることができた。

 整理整頓された部屋は俺に確かな達成感を覚えさせた。
 何度も夢に見た光景が現実として目の前に広がり。自分の中で失ってしまったものを取り戻せたような気がした。

 だが、湧いてきた高揚感はしだいに寂寥感《せきりょうかん》へと変わっていった。
 もう戻らないものの存在を、俺はより強く意識してしまっていた。
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