作ろう『新・信長公記』〜信長と目指す天下統一物語〜

篠崎優

文字の大きさ
4 / 7
序章 タイムスリップ

4話:メンバー

しおりを挟む
 その日はそのまま、寝かせてもらっていた部屋に泊まらせてもらった。夜になると気温が下がり、締め切っている空間でも少し寒かった。驚いたのが、この時代ではあまり布団のようなものを使わないらしい。着ていた着物を誘導されるまま脱いで、それを布団のように自分にかけられて、その状態で寝た。どうやらこれが普通らしい。なるほどな、と思いつつも違和感はある。こういう風俗に慣れていくのもタイムスリップという物なのだろう。
 朝起きると、何時かは分からなかったが着物を軽く羽織った。着付け方なんか知る由もないので後で朝ごはんでも持ってきてもらった時についでに頼んでおこう、と決める。家でないところで一夜を明かすのは久々だった。それがまさか時代すら異なる所になるなんて、思いもしない。
 「朝餉をお持ちしました」
 「あ、ありがとうございます」
 
 どうやらここは城の中でも客室に値する部屋らしい。だから何かやって来る人の、俺への対応も丁寧だ。さり気なく着物の着付けをお願いして、その様子を舐めるように見ていたら少し気味悪がられた。これから覚えていかないといけないんだから、これくらいは許して欲しい。
 飯はそんなにイメージと離れていない。米が白くないことと、薄めであること以外は『和食!』と言った感じのメニューだ。こういうのを玄米というのか、名前は忘れたが赤みがかった米。味は現代の品種改良が重ねられたコシヒカリだとかなんとかの白米と比べれば数段落ちるものの、全然食べられる。言うならば、栄養がありそうな味。それに汁物なんかも着いて、いいな。食事は結構鬼門な気がしていたけど、これはいい。うん。

 この時代を生きていくのは、大河ドラマを見るのとは訳が違う。文字通り命懸けの戦いに身を投じなければならない。ひとまず信長のところで今後の方向性を相談するしかないか。そう思って昨日行った部屋への道程を辿る。
 信長がいるとは限らないが、まあ誰かは来るだろう。それから信長に取り次いで貰えば良い。
 「……ん?」
 部屋の中にいた人数は六人。一人、奥に構えていたのは信長だった。ちょうど話そうと思っていたので都合が良い。もう一人は昨日俺を案内してくれた男の人、林秀貞だ。あとの4人は、知らない。視線が一気に俺に注目を集める。
 「見ない顔だな」

 最初に俺に声をかけてきたのは四人の中でも一番若い男だ。威圧的な声だ。
 「恒興つねおき、やめろ、私の知り合いだ」
 それを制止したのは信長だった。恒興と呼ばれた男……池田恒興はそれを聞いておずおずと引き下がった。信長は俺を手招きして近くに呼んでくる。目線を感じながら俺はその座っている5人の間を通る。
 「彼は磯貝拓海という。縁あって当家の家臣となる男だ」
 「え?」
 今日しようと思った話の結論を先に決められていたので困惑する。いや、昨日そう言えば『これから安心』みたいなこと言ってたな。あれは俺が家臣になること込みで考えていたのか。
 「よろしくお願いします?」
 「それで、今後は彼を含めて織田の中心を構成していきたいと思ってる」
 「そもそも誰なのですか、こいつは!」
 恒興の、さっきよりも増した威圧感のある声が部屋に響いた。やけに婉曲的な表現ではあったが、信長が言わんとしていることは俺を織田家の中心的なメンバーに含めるということだ。何処の馬の骨ともしれない俺をそんな好待遇に置くことを良しとしていないのだろう。

 「確かにあまり良いものとは言えませんな」
 そう言って愛想笑いしていたのはこの中でも最も歳を重ねていそうな感じのおじさん。いや、この時代の平均寿命を考えると老臣か。
 「詳しい事情はそのうち話す。取り敢えず決定ね」
 「……また勝手なことを」
 もう一人は信長の行動に呆れている様子だ。

   信長は一人一人を俺に紹介していく。俺に高圧的な感じで接してきた若者が池田恒興、一番年長の平手政秀ひらてまさひで、落ち着いた感じでさっき俺の加入に呆れたのが内藤勝介ないとうかつすけ、一人無骨な感じで何も言ってなかったのが佐久間信盛さくまのぶもり。そして林秀貞。今の織田家を盛り立てようとしているメンバーだ。
 「じゃあ……恒興は拓海に色々教えるように。宜しくね」
 「え」
 恒興の年齢は俺より二つ下。あれ?まだ小学生? と思ったら13歳らしい。なら、中学一年生か……なるほど。
 恒興は嫌がっていたが、最終的には渋々受け入れてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

影武者の天下盗り

井上シオ
歴史・時代
「影武者が、本物を超えてしまった——」 百姓の男が“信長”を演じ続けた。 やがて彼は、歴史さえ書き換える“もう一人の信長”になる。 貧しい百姓・十兵衛は、織田信長の影武者として拾われた。 戦場で命を賭け、演じ続けた先に待っていたのは――本能寺の変。 炎の中、信長は死に、十兵衛だけが生き残った。 家臣たちは彼を“信長”と信じ、十兵衛もまた“信長として生きる”ことを選ぶ。 偽物だった男が、やがて本物を凌ぐ采配で天下を動かしていく。 「俺が、信長だ」 虚構と真実が交差するとき、“天下を盗る”のは誰か。 時は戦国。 貧しい百姓の青年・十兵衛は、戦火に焼かれた村で家も家族も失い、彷徨っていた。 そんな彼を拾ったのは、天下人・織田信長の家臣団だった。 その驚くべき理由は——「あまりにも、信長様に似ている」から。 歴史そのものを塗り替える——“影武者が本物を超える”成り上がり戦国譚。 (このドラマは史実を基にしたフィクションです)

処理中です...